エルゼと魔法少女サブチームと私
いろいろな出来事もあるし、何事もない平凡な一日も過ごす事もある生活。
そこまでは平和な社会と同じなんだけど。私たち冒険者パーティーにとっては、魔物討伐依頼をギルドで物色する物騒な一日のほうが平凡な一日だ。
小さい家族もいるし、野原の一角にはサブメンバーたちもいるので私たちがお仕事をするのは当たり前なんだけど、討伐依頼というものにはランク付けがあって、私たちが受注できる依頼は実質E~Fランクだ。なのでできれば同じ地域で3~4件はこなしてきたいところ。
「にゃんだろう、このDランクの仕事…… ※魔法使いが複数ならランク不問 、だにゃ。」
「それだと、妾たちのパーティーに全然向いてないです。」
「そうだな。」
「私たちには魔法使いクラスのメンバーはいないから。でも、なんで魔法使いがいないんだっけ?」
この世界の超常現象能力には、真力と魔力がある。
真力は神聖なる加護の導き。
それに対し魔力は、世界の歪みから生じる魔神、魔族、魔物たちの根源となる暴走。
魔法使いは、その魔力を技に転用する。
「ミレフィアの魔剣士クラスのの魔力は、物質作用型の魔力だけなのにゃ。」
「剣技への混用ですから、そのはずですね、ミレフィア。」
「そんなところだよ。これ……Dランク報酬ががランク不問になるのは美味しいよね……よし。せっかくだから受注しちゃおう。」
「えっ、妾たちに魔法使いメンバーなんてどこにも。どうするの?」
私はみんなと別行動になって、城下町の外れに向かった。
市壁の内側に何か所かある公用地の草むら。そんな1拠点に、私のパーティーの勇者さんと顔見知りの国王から口頭でゆるく認可をされてテントで合同訓練生活をする若い女子たちがいる。
走り込みをする子たち、柔軟体操や素振りをする子たち、組手をする子たち、そして炊き出し組。……そして何だか、以前より人数が少ない。
「ミレフィアさ~ん。またサボり組がいるんですよ~、きっと向こうのテントの裏です。」
「ほんとほんと。叱ってやってくださ~い。」
「あ~、抜き打ちで来るとこうだよね……。叱りはしないけど、分かった。」
ピンクの子。「あたしをリーダーにするんなら分からないでもないけどさ。」
青い子。「あんたが人に指示を出せるの? 笑っちゃうかな。」
緑の子。「誰がどうだろうと知らないわ。あたしはあたしだから。」
水色の子。「でもさぁ、あんたたちそんなに賢くないじゃんよ。」
黄色の子。「おっかし~。テキトーにやってるのが一番楽だって。……あっ、やばい。あはは。」
「あなたたち、一致団結が好きの嫌いなのどっちなの? こんなテント裏で集まっちゃってて。用事があるの、みんなの前に集まってよ。」
「うんどーすっか。」
「やろやろ。」
「へ~い。」
「うっしょ。」
「だる~い。」
みんな黒いローブ着こなしていて、合わせ目から見える制服風の自前服がカラーリング的に分かれてて、薄い化粧も似合ってて超可愛いんだけどな。まあ私たちの年頃の一定割合の人数はこういう子たちです。
彼女たちの職業が、魔法使いという将来がある女子たちなのか、それとも魔法少女なのか、その見極め方は、彼女たちが振り回す魔法具だ。
木の枝による「杖」だったら魔法使い。
金属や樹脂製の「ステッキ」なら魔法少女である可能性が高い。
なんだろう、この子たち。「杖」のほうだと思うんだけど色々デコしちゃってるから……けっこう魔法少女寄りかなぁ。
「みんなは冒険者です。冒険というのは愛と勇気と剣術と魔法ですね。そう、魔法使いさんはこの世界では大切な役目なんです。」
「こーちょーかよ。」
「うっざ。」
「はい、はい。」
「ひんけつでたおれていーすかー。」
「おひるまだ?」
「ですので、明日のクエストでは魔法使いチームを組んでもらいます。 フィオルネ、セランツァ、オルディセーヌ、ファルネ、デクラマール。全員いいわね? みんなの魔法、それも連携力が必要なの。」
「あたしらかよ~。」
「こいつらとれんけい?」
「あたしがひとりいればいいわ。」
「いきなりだなぁ。」
「ちょっといやかなあなんて。」
「お~いミレフィア、みんなの調子はどうだにゃ?」
「おさんぽ~。」
「あ、ルネアン。うんみんな頑張ってる。それにしてもエルゼが合宿場に来るのは珍しいよね。お姉ちゃんたちがいっぱいでしょ。」
買物袋をぶら下げてるので、散歩がてらで外出のご様子だ。
「(がくがく、ぶるぶる。)」
……うん? さっきまで独特な姿勢だった5人の魔法使いたちが、気が付いたら背筋を伸ばして震えながら整列してる。ルネアンをそんなに怖いの?
「にゃんか5人とも怯えて泣きそうな顔をし出してるにゃ。ミレフィア何か、しごいたんかにゃ?」
「してない、よ。ルネアンは私たち女子にとっては癒やし系だよね。何をそんなに怯えだしたんだろう?」
「このにんげんのこむすめどもはわれのわざをまねごとできるとおもっているのかおこがましいにもこっけいのきわみよ。」
「今日も長いお喋りがかっこいいわね~。」
あ、そうか。魔法使いさんって、偽装した魔力を何か別の形で感じ取れちゃう場合があるんだっけ。
私はエルゼを抱っこして、5人に優しくもう一度お願いしてみる。
「魔法使いのみんなで連携して、明日のクエストを頑張ろう?」
「っは、はい! こうえいです。」
「と、とうぜんです、ぜんりょくです。」
「このいのちおしくありませんっ、ひ~。」
「がんばりますからたすけて~ぇ。」
「なんでもします~。うえ~~~ん。」
他の15人の子たちは声援を上げる。
「お仕事い~な~。」
「がんばってきて~。」
「ファイト~。」
全員が私と同じくらいの女子なんだけど、ここはレギュラーメンバーらしくさせてもらっちゃう。
「みんな~、屋根付きの宿屋に住みたいか~!」
「んだよ。」「え~?」「くぁ。」「はぁあ。」「ったる~。」
という反応だったので、私はエルゼを抱っこしてもう一度お願いをすると、5人とも土下座をしながらまた怖がる。
「おお~~~っ!」
まるで怯えた泣き声のような決意表明になった。
明日のクエストには本当に魔法の連携が必要なので、宿屋のレギュラーにちょっと相談かな。
「ねえねえエルゼ、明日は私から背負われてさ。一緒に冒険に参加しようっか?」
「わ~い。」




