リェリュスと恋ドラ後編と私
「ふうん、エルフのカップルか。」
「そうなんです女神さま、私どうしたらいいか。」
「あなたと仲がいいんだからステータス・ホログラムを出してくれるでしょ。スマホで恋愛状態を見た? どうなってる感じよ。」
そういう管理者機能もあるスマホというのは、ステータス・マネージャ・ホログラムの略。
「か、管理閲覧権限なんか、つっ使わなくたって。……分かるじゃないですか。」
「(閲覧したところで分からないという自覚が、剥き出しだな。)」
「私の3つ目のお願い。シェンディルさんとテミオルネさんの2人を、仲直りさせてくださいっ。」
「あなたの願いの2つ目は却下されてるから、改めて2つ目だろう。それにな? 恋愛は出雲のあいつの担当だから簡単にはできない。っていうかあのさ『9つの願い』の使いどころは、あなたね……。」
「だってあの2人、人間と違ってずっと何百年も、恋をしてきてたんです。それぞれの事を嫌いになって良いわけがない……。」
私はもう一度テミオルネさんに笑顔で挨拶して、宿屋に帰宅する。
すると通りすがるはずだった1階の食堂では、私の仲間たちが会議をしていた。
「ミレフィア、こっちだにゃ。」
「待ってた。」
「すっごいクエストを受注しておきましたよ。」
3人だけではなかった。
「どうしてそこに……いらっしゃるんですか、シェンディルさん?」
なるほど、私が冒険者ギルドで置き去りにした3人に「ミレフィアのパーティーだね?」と声を掛けたのがシェンディルさん。
3人は緊張しながら憧れを語り合い、それから一緒に討伐依頼を探して、臨時パーティーを組む話になったと。
受注した依頼はというと、呪鎧型ミノタウロス数体の討伐。うわ、Cランクのクエストって。
「ギルド規約で、これEランクの私たちが受けていいの?」
「私は不適ランクだったにゃ。でもミレフィアとダルクルトは召喚冒険者特約があるにゃ。」
「妾は、特例試験を受けたエルフさんと組む場合は、招待冒険者扱いらしくて自国ルーヴァでのBランクが有効なんですって。」
Cランクのエルフさんを中心に、それぞれの特約で編成が許された臨時パーティー、という事ね。
そして隣のテーブルでは、シェンディルさんの大きな弓を触らせてもらってるリェリュスがご満悦だ。
「ミレフィアちゃん。私もクエストに連れていってもらえるんだよ。」
あらあら。エルフさんの家族枠かな、みんなそれで納得している。
「私はたまにはエルゼとお留守番だにゃ。」
たとえ家族枠だとしても、エルフ式で子供サイズの弓をシェンディルさんが作り上げて調整も済ませたため、リェリュスにとって今回はしっかり討伐クエストに初参戦となった。
前衛と接近敵はダルクルトと私が担当する。
ベアトリーチェは防御結界と治癒の担当だけど、今回は真力の半分を、リェリュスへの加護に集中するらしい。
呪鎧型ミノタウロス。動きが速いし突進もある。鎧はすぐに復元する、そのわずかな隙間を正確に射貫くのがエルフの超正確な弓矢だ。
リェリュスの放った矢は、突進中の鎧の隙間に突き刺さっていく。
「魔物勢の分散誘導には合格だね。あとは急所の見極めと、矢の威力だ。見てごらん。」
シェンディルさんの矢も同じような正確さで突き刺さる。だけど1体1体を確実に葬っていった。
そのままリェリュスはシェンディルさんに親子のように甘えるのかな……と思ったら、弓以外の事は意外にも照れて拒み通した。なので、帰路では私の荷物と長剣をシェンディルさんに担いでもらって、リェリュスを私がおんぶしている。レギュラー討伐メンバーになるには、歩いて帰れる体力が付いてからだね。
それにしてもシェンディルさんの戦力は凄い。ああいう様子なら、上級者パーティーとも信頼関係が築けていて充実しているんだろうな。大人の正義感も、大人の責任感も友情も。そしてたぶん大人の恋愛感情も。
私には冒険者ランクよりももっとはるか遠くの事なのかもしれない。
テミオルネさんだってすごく優しい。ご自身の事も周りの事もすごく理解できる人なのが分かる。
どう見ても申し分なくお似合いなお2人なのに、上手くいかない事があるのって何なんだろう。そんなに難しいのかな、恋愛って。
「男の人ってそういうものなんですか?」
「エルフ女性もビキニアーマーを着ないんだな……。」
こちらの勇者さまに聞いた私が愚かでした。
こうして私たちのパーティーには、条件がよっぽど合う場合にはだけど頼もしい上級エルフ戦士の仲間ができた。
その一方、お薬を買いに行くのは私の役目になって、薬師ギルドに行くたびに、薬茶仲間のお姉さんもできた。
「お2人とも、もっとこう定期的なデートとか、イベントとかでご一緒したほうが良いと思うんですよ。」
あなた方は、私の憧れなんです。
「今まで沢山してきたわ。ここでの人間さんの社会は確かにいろいろ面白そうだけどね。そこは自由かな。」
「あんなに魅力ばかりのエルフ男性だから、他の女性に取られちゃいますよう~。」
テミオルネさんは少し遠くを見るようにした後、すぐ穏やかな様子に戻る。
「あの人ってそうでしょ。でも100年もしたら人間社会に飽きて私の所に戻ってくるから。」
そんな、まるで100日もすれば……みたいな。




