リェリュスとエルフサブチームと私
おおよそどの辺りの山林かは薬師ギルドの人から聞いていて、私ミレフィアがみんなを連れてこれたけど。言われた種類の薬草がどこにどんな風に自生しているのかは、総勢6人のエルフ女子たちの出番だ。
「オウレンという薬草は、きっとこのサフィルの事だよ。根が胃腸に効くの。」
「ヒマラヤイチイは……形と毒の種類でいくとベルシェンだと思う。」
「イルヴェン・オルミがあった。ジャタマンシの亜種ってこれでしょ。」
まるで言葉合わせと宝探しのように、でもほとんど迷わずに。根っこから掘り起こして保管方法を施しながら、分けた篭に溜めていく。
山菜くらいなら私も……と思ったけど採取経験が無いので、6人のうち誰かが遠くに行きすぎないかの見張り係だ。
そんな遠くからは、大人の2人連れが見えて、歩いて近付いてきた。
ここには魔物が現れにくいし、山菜取りですか? という気分で声を掛けたんだけど。でもよく見ると、その男女は旅姿のエルフだ。
「みんなこんにちは、良い薬草が取れていそうね。」
「風に匂いが乗っていたから。エルフの子供たち……どこの里の子たちだい?」
「お兄さんとお姉さん、こんにちは。」
「私たちは今セレントルー王国で暮らしているよ。」
「生まれた里はみんな違うよね。」
「人間の冒険者さんたちにそれぞれ助けられたの。」
そうなの、みんな生まれのエルフの里は別々なのよね。山脈の向こう側にはエルフの里が点在してるというんだけど。大きな里が幾つかあるというよりは、小さな里がうんと沢山あるみたいだ。
私と旅人2人は、自己紹介を交わした。シェンディルと名乗った男性は一緒に子供たちの薬草探しを眺めて、テミオルネと名乗ったお姉さんは子供たちに混ざっている。
「ミレフィア、そこの城下町は人間と獣人の町なんだね?」
「はいシェンディルさん。でも普段から、町民のエルフさんも見かけますよ。」
「僕たちは2人の里となる場所を探す旅に出たのだけど、山脈を超えた時に、ここの城壁が見えたんだ。」
エルフの「お2人の里となる場所」……それは確か、え~と。
「僕もテミオルネも、隣り里くらいまでの事しか知らなくて。一緒になる前に、人間社会の事も知りたくなったんだよ。」
あっ、これは素敵なお2人だ。
「ご婚約されてるんですね? お似合いだと思います。」
でも、え~と。エルフさん同士の恋愛というのは確か。よく分かってないので後でベアトリーチェに聞く事にする。
「あれ、リェリュスどうしたの?」
顔を赤らめて、何か言いたそうにもじもじしている。
「かっこいいな……って思って。お兄さん、その、」
あら。だいぶお兄さんだけどエルフの男性だものね。でも婚約者さんがすぐそこに、と私は言おうとしてしまった。
「本物のエルフの弓だ~。持たせてもらっていいですか?」
「……あ、ああ~そうね綺麗で立派な弓矢ですよね~。このリェリュスは弓矢が得意で。」
リェリュスは背丈に合わない弓矢を引くまでさせてもらって、ご機嫌だ。
「僕は冒険者パーティーを経験したい。テミオルネと一緒になる前に知っておきたいんだよ。」
「私はそうじゃなかったのだけど。今こうして薬草のお仕事があるなら、町で生活もできるのかな? って思ってるの。」
お2人とも恋愛ドラマに適齢期なくらいの大人の男女。(実年齢は聞いてないです。)会話にも人生を感じちゃう。
「薬草も集められたのでこれから城下町に帰ります。あの……私はあまり会いに行かないんだけど。国王さまに融通が利く仲間が1人いるので門くらいは楽々通れますよ?」
「本当? シェンディル、もちろんそうしたいわよね。」
「うん、お言葉にぜひ甘えたい。」
お泊りはどうするのか、ちょっと私たちの男子部屋と女子部屋の人口密度がよぎった。でも、そこはさすが大人だ。
「生活費は持ち合わせているよ。金貨や銀貨が先々代頃の王の時代の通貨かもしれないけど。」
「……古銭商か骨董品屋が先かもですね。それからお2人向けのお宿を。」
いったい何百年前の金貨だろう。
「私たちの子が生まれて、もし人間社会と関わる時があった場合の貯えなんだから、今は節約よシェンディル。」
「いい仕事の見つかり次第だね、テミオルネ。」
私はティアグとレイヴェルで3人手つなぎをして先頭を歩き、最後尾には大人の2人が付いてくれて、一行は城下町へと戻った。
「合宿地に着くまでが遠足ですよ~。」
「ミレフィアちゃん、これはお仕事だよ~う。」
「合宿地……。」




