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権限転生  作者: 純銀
エルフ少女リェリュス・ルクシェリ
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28/39

リェリュスとエルフ論文と私

あれから、ベアトリーチェが王立図書館の本を何か1冊借りてきた。

「え~、また緊急迎賓行事を開いてきたの?」

「妾《わらわ》が王立図書館に行ったらそうなりますけど、そうならないように子供図書館のほうに取り寄せてもらったから大丈夫。」

「子供図書館……まあ、私たちの特権ね。何の本を借りてきたのかな。」

「エルフ種族についての研究の記録よ、ミレフィア。」

そのまとめ部分を私に見せてくれる。


========================================

*

『人間とエルフ、それぞれの大きく異なる系譜。』

*

人間とエルフは、とても似ているように見える生物である。二本の脚で歩き、二本の腕で物を扱い、目で世界を見て、耳で音を聞く。言葉を話し、道具を使い、集団をつくり、知識を相手に伝える。食事をし、眠り、傷を負えば治療を必要とし、病気にかかれば死ぬこともある。たとえ人間とエルフが並んでいたり過ごしていても、遠目には見分けられない。わずかに長い耳や仕草の印象などに特徴はあるものの、人間とエルフの違いの理解はもっと生物学的なところにある。

生物が高度に進化してきた道筋には、大まかに「動物」の進化と「植物」の進化がある。

人間は動物の系統にある。祖先から受け継いだ運動能力と神経系を発達させ、複雑な社会を形成するに至っている。

エルフもその身体性や社会性はよく似ている。それなのに動物ではなく、植物の系統に属している。

*

エルフの祖先は、植物の生活環における配偶体だったと考えられる。進化の過程で配偶体の世代が生活能力を獲得した系統である。身体は大型化し、摂食行動の性質を持ち、運動と感覚に適した筋肉と神経系を発達させていく。人間と同じ遥か長い進化の末に、生物史上の最近では人間型の形態に収斂していき、現在に至っている。

この過程で、彼らは祖先の植物らしい形態をほとんど失ったかのようにも見える。配偶体であるエルフは葉緑素を持たない。皮膚は人間に近く、心臓が血液を循環させている。消化器官による栄養摂取を行う。ただし体液循環となる血液は白色を呈しており、ヘモグロビンによって赤色を呈する動物系の人間とは大きく異なる点を感じさせる。それでも光合成を行わない循環器構造は二酸化炭素ではなく酸素を消費するなどの共通点が多く、生命活動を維持する構造は大まかに同等と見做すことができる。

そのようにしてエルフと人間は、異なる系譜からの進化をしながら、よく似た知的な社会生活を営むよく似た身体を成しているのである。

*

エルフと人間の両者の明確な違いの一つは、生涯の時間についての尺度である。人間が一生をかけて経験する年月数は数十年。エルフは数百年である。よく似た種族に見えるエルフと人間は時として共存の社会を過ごしもするにも関わらず、人間の文化では何代もの祖先の歴史となっている出来事が、エルフのしてみれば個人の若い頃の思い出だったりする。エルフにとってはもしかしたら、人間社会で世代継承の長かった家系の盛衰興亡が丸々と、一人の知人の人生のように思われているかもしれない。それでも、一日や一時間がエルフにとって瞬間であるという比喩は正しくない。同じ時間の中を同じ体験の価値観で過ごせるからこそ、人間とエルフは時として共に暮らせるのである。

お互いを活動個体として見た場合、このようにして人間のおおよそ十倍の人生をエルフは生きる。だがさらに社会の時間の尺度を考えた場合には、その時間的尺度の違いは驚くべき百倍とも千倍とも呼ぶべき違いがあることが分かってくる。

*

我々人間側は、エルフという生物種のうち、生活環における配偶体の事を便宜上、エルフ個人として呼称する。

人間であれば、一人の個体ごとに出生から死亡までの活動がその一生を意味する。だがエルフ個人とは、胞子体を親として出生し、独身活動を過ごしている状態の期間だ。数百年を生きたエルフ個人は、伴侶となる配偶体と出会い、そして心が結ばれると、森の中で二人の永遠の場所と決めた地で繁殖の段階を始める。二個体の身体から始まった胞子体の世代が二人の身体を融合させ、神経系の結合によってお互いそれぞれの人生の記憶までもが一つになり、新たな一つの知性を持つ固着性つまり樹木様《じゅぼくよう》で光合成を行う植物体となる。そうして二人だった一つの大樹となりその森に数千年に渡って成長を続け、自然環境の大きな一部となりながら、次世代となる新たな配偶体を産んでいく。

エルフの寿命は時として「数千年」とも、さらには「永遠」とさえも言われる事がある。それは決して誇張ではないのである。

*

エルフという種族が、人間社会からは「神聖な森の種族」「半分精霊のような人種」「寿命が長い亜人」などと思われている事については、人間の個体寿命も文化寿命も、エルフには遠く及ばない事から生まれる認識であると言える。

生活環の根本が「動物と植物」という大きく異なる同士であるにもかかわらず、多くの場合の人間とエルフは互いに理解し合い、友好関係を育み、お互いが望めば共同生活を営む例もある。言葉を交わし、食卓を囲み、仕事を分担し、同じ目的のために協力する。互いの寿命の違いや身体の仕組みについては理解するべきかもしれないが、それは異なる文化や習慣を持つ者同士が暮らす際に必ず生じる問題の範囲に留まる親和性の高さだ。喜びや悲しみを互いに理解し合えるのだから、自然の中に社会を築きうる仲間である。

*

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私は召喚転生者なので、耳か脳のどこかに働く異世界語自動翻訳はこれを日本語だと判定はできる。

でも私の地頭は、内容を理解できない。

「えっと。ベアトリーチェ、つまりどういうこと? ふんふん。」

「人間だって最初の頃の先祖は原始的な細胞だったでしょ。同じくらい原始的な頃に、植物にもそういう進化があったっていう理論《おはなし》ね。」

「エルフの人って……本当に植物!」

作品外参考用(作中エルフ設定をChatGPTにより一般向け論文化)


『植物性人類 エルフ』解説論文


□ エルフの起源――植物から進化した知的生命体

エルフは、外見こそ人間に近いが、生物学的には人間とは異なる系統に属する生命体である。彼らは肌色の皮膚を持ち、心臓を備え、血液を循環させる。感覚器官や神経系も発達しており、歩き、走り、食物を摂取し、独立した人格を持って生活する。植物らしい葉や枝を身体に備えているわけではなく、葉緑素による光合成も行わない。それにもかかわらず、彼らの祖先は植物の系統に属していたと考えられている。その理由は、エルフの身体よりも、彼らが持つ独特の生活環にある。


□ 植物の二つの世代

植物の多くは、動物とは異なる世代交代の仕組みを持つ。被子植物を例にすると、花や葉、根を備えた植物本体は胞子体と呼ばれる。一方、受精に関わる配偶体は、花粉や胚嚢などの小さな構造へと縮小している。通常、この二つの世代は形態も役割も大きく異なる。私たちが目にする大きな植物体と、その内部に形成される小さな配偶体は、同じ生物の生活環を構成する別々の世代なのである。エルフの祖先もまた、このような世代交代を持つ生物だったと考えられる。ただし、その進化は通常の植物とは大きく異なる方向へ進んだ。


□ 配偶体の独立と動物的な身体の獲得

エルフの祖先にあたる配偶体は、長い進化の過程で、胞子体への依存を弱めていった。独立して栄養を得て、環境を認識し、移動し、繁殖相手を探す能力が発達したのである。この変化を支えた重要な要因の一つが、ミトコンドリアによるエネルギー代謝だったと考えられる。ミトコンドリアは、酸素を利用した細胞呼吸によって、細胞活動に必要なエネルギーを効率よく供給する細胞内小器官である。現実の植物にも存在するが、エルフの祖先では、こうしたエネルギー代謝を基盤として、活動的な運動や大型の身体を維持するための生理機構が進化したと考えられる。これに伴い、細胞間の情報伝達、物質輸送、運動制御などの仕組みも高度化した。やがて神経系と循環系が形成され、配偶体は植物的な祖先からは想像しにくい、人型の身体を獲得するに至った。こうして成立したエルフは、植物の子孫でありながら、外見上は植物らしさをほとんど残していない。彼らの血液はヘモグロビンを主な酸素運搬分子とせず、赤色を呈さない。身体の形態や皮膚の色も、植物としての祖先を直接示すものではない。彼らを植物の系統に位置づける根拠は、外見ではなく、細胞の系譜と世代交代の仕組みにある。


□ 二個体から一つの植物体へ

エルフの生活環をさらに特徴づけるのが、繁殖後の変化である。エルフは数百年にわたり、独立した個体として生活する。その間、知識を蓄え、社会を形成し、他の個体と関係を築く。しかし、伴侶を得て繁殖の段階に入ると、彼らの生涯は大きく転換する。二個体は結合し、身体の再構成を始める。この過程では、単に生殖細胞が融合するだけではない。両者の神経系までが統合され、それぞれが生涯を通じて獲得した記憶や知識、経験が、一つの知性へと組み込まれていく。その結果、二人は一つの固着性の植物体へと移行する。この植物体は、一般に子実体と呼ばれる。もっとも、厳密な植物学でいう子実体とは異なる、エルフ独自の生殖世代である。子実体は移動能力を失う代わりに、長大な時間を生きる能力を獲得する。数千年にわたり成長し、周囲の環境と関わりながら、次世代となる新たな配偶体を生み出す。こうして、エルフの生活環は再び始まる。


□ 数千年を生きる知性

子実体となったエルフは、単なる繁殖器官ではない。そこには、かつて二人の個体が蓄積した経験と記憶が統合されている。融合後の知性は、過去の二人をそのまま並べたものではなく、二人の人生を基盤として成立した新しい人格である。この知性は、数千年にわたって存在し続ける。その間、次世代のエルフが生まれ、成長し、やがて新たな伴侶と結ばれる。彼らもまた植物体へと移行し、別の場所で新たな知性を形成していく。人間から見れば、エルフは数百年を生きた後、巨大な樹木へと姿を変える、不思議な長命種族である。その樹木は数千年を生き、次の世代を生み出すため、外部からは永遠に存続する生命のように映る。しかし、エルフ自身の生物学から見れば、これは不死ではない。独立した個体としての生涯と、固着した植物体としての生涯。その二つが一つの生活環を構成しているのである。


□ 森とともに存続する種族

この生活環は、エルフの自然観にも深い影響を与えている。彼らにとって森は、単なる居住地でも、信仰の対象でもない。自分たちの生涯が次の世代へとつながるための、生物学的な環境である。森には、かつて独立した人格を持っていた存在が、植物体として生き続けている。そこには長い経験が蓄積され、新しい世代が育つための基盤が存在する。したがって、エルフが森を大切にするのは、必ずしも自然を神聖視しているからではない。彼らは、自分たちが自然の外側に立つ存在ではないことを、生活環そのものによって知っているのである。エルフとは、植物から生まれた動物的な知的生命体であり、同時に、植物としての世代を経ることで次の生命へとつながる存在でもある。その長い生涯と独特の繁殖様式こそが、彼らを人間とは異なる種族たらしめている。

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