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権限転生  作者: 純銀
聖女ベアトリーチェ・ディヴァニス
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ベアトリーチェと聖樹と私

冒険者パーティーの移動と言えば。鍛えられた徒歩か、乗り合わせの馬車があれば運がいい、という事になる。

だけれど今回はだいぶ特別扱いの依頼になっているらしい。ギルド側が案内人を兼ねて私たちのため馬車を1台用意してくれた。

西方辺境の村への案内目印が見えてきた。この辺りにはまだ魔物や疫病の気配がないので、案内係の2人にはここで待機をしてもらう事にする。終えてきたらまた乗せてくださいね、と。私たちはいつもよりへとへとになる可能性が大きそうだから。


シフィラルの聖樹村に踏み込む私たち8人の先頭はダルクルト。肉眼で見える異変を察知する。

そのすぐ後ろが祈祷師と巫女。それぞれ呪いの念波と魂の念波を察知する。

4人目が神官候補で、生存者や、漂う霊魂を捉える。続いて司祭候補は複数の弔いに備える。

6人目の修道女は、その場その状況でのヘルプ要員として柔軟待機。

最後尾に私とベアトリーチェが付いて、後方側の安全を守り、パーティー全員を見守る。ついでにこの2人の世間話でみんなの緊張をほぐすのも役目だ。


最初に私たちを出迎えたのは、ガーゴイルやトロールだ。だけど……どこか勢いがない。いつもの荒れ狂う凶暴さが途中までだ。魔物のボスが斃された残兵たちにも、主《あるじ》の喪失感などというものがあるのだろうか。

聖職者に加護された双剣がそれらの魔物を斬り進み、ときどき左右や後方に回る小賢しい残件には私の魔剣が対応をする。

そうすると、村の外れの家々には、呪いが掛けられた村民たちが何人かずつ見つかる。その都度、聖職チームが手分けして治癒と除呪を施して休ませていく。

「ギルド副長からミレフィアが聞いたお話と、この村の状況は一致している?」

「そうだねベアトリーチェ。これだとさ、除霊係が1人2人のパーティでは最後は逃げるしかなくなったんじゃないかな。」

「今ね……この地域には、亡くなった村人たちの魂と、呪いの増幅が混ざっている。これはけっこう厄介です。」

「うん、帰還した調査パーティーは、まるで疫病患者みたいに隔離されてるって言ってた。」

「魂と、呪いが、こんがらがっちゃってるんです。あ、もしかすると……。」

私たちは剣使いが残兵を斬り片付けて、聖職チームが土地と村人と霊魂を沈めて浄化して、村の中心へと進む。

朽ち掛けているかのような葉や枝から見えてきたのは、祀られていたはずの聖樹シフィラルだ。


「聖女さま、このシフィラルはただ攻撃を受けただけではないです。」

「力は失っていないので何かを吐き出し続けています。これは……病?」

「そのようです、皆さん。おそらく魔物の主から掛けられた呪いによって、聖樹シフィラルは死者の魂と魔物を区別できなくなっています。」

「うわぁ、シフィラルが魔物に活力を蘇らせちゃっているんですね。」

「弔われない死者の魂もそのまま、生存者や私たちに向かってきています。」

「それでは結界を張ります。」

「暴れないでシフィラル。今助けてあげるから!」

「鎮魂術式に除呪駆動を2組拡張して配置します! 皆さん、いい? 呪術反動が続いても妾《わらわ》の言う通りに!」

「ええ、治癒はあとでもできます!」

「準備よしですっ!」


「ベルトルト、聖樹の呪いが暴れて魔物が一斉に来るわ。体力は持ちそう?」

「ああ。」

ベルトルトの2本の長剣は威嚇を省き、確実にそれぞれが魔物の急所を突いていく。

私は魔力の減衰と回復に細心の注意を払いながら、魔物との間合いと斬り合いを繰り返す。

聖樹の術はまだまだ終えられそうにない。


ふと山林の丘を見ると、誰かと誰かが激しく闘い出した? ……そんなような気配がした。

すると、斃されたかのように何匹もの魔物が転がり落ちてくるのも見える。

その影響もあってか、私たちの周りの魔物も減ってきた。これなら聖職チームを余裕で守り切れる。


「ここからは再生術式に強化循環拡張を措置します! 負傷が大きい子がいたら一緒に再生しますから幹に触れてください。」

「あ、私で~す。」

「私も……助かります。」

「妾《わらわ》はここまでです。あとは皆さん、術力の維持をお願いしますね。」

「は~い。お疲れさまです!」

「お疲れさまでした!」

「ミレフィア、できる事は全部済ませられそうよ。聖樹の力が戻れば、この村も再建されていくでしょう。」

へとへとになっている私とダルクルトに、へとへとになってる3人目が加わった。


「皆さんご無事ですね、さすがです。馬の準備もよし、城下町まで帰りましょう。」

男装のそんな案内係2人に、私は小声で話しかける。

「(丘の上のほうで闘い出したのってレネトとメネトよね? あなたたち何をやってたの? )」

「(ええ、まさかこの村に来て不審者を目撃するとは、私たちも予想外でした。)」

「(ちょっと邪魔でした湧いてきた魔物も、勝手ながら片付けさせて頂きましたけど。)」

「(それにしても不審人物は何者……。迂闊にも逃してしまいました。)」


「みんな馬車に乗りましたか~? 点呼。8人いるわね。お家に帰るまでがクエストですよ~。」

そして私が最後に乗る時に、馬車の……底面かな? あ、後部のそんなところに。

「(あなたもお疲れさま、クロエ。)」

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