ベアトリーチェと密偵と私
「ミレフィア、全員先に食べちゃってるわよ~。」
「うんうん。おばちゃん、まだ私の分ある~?」
「待ってたわ、ほい。熱いままだから気を付けて。」
あっちち。え~と大人用4人テーブルだから、私の席は、リェリュスとエルゼが詰めてくれて空けようとしてくれる。
「そうだ、いいのよ2人とも、ゆったりと座ってて。……だって、」
2つ隣のテーブルに、さっきのメイド2人が座っている。
「え~と、レネトさんとメネトさん、でしたっけ。どうしたの?」
「あなた様がここのごはんをお勧めしてくださいましたのです。」
「(そうしましたら、先ほどの不審人物の謎が半分、解けたのですよ。隣国の聖女様がお命を狙われいらっしゃるようです。)」
「あ、あ~~。それは大変だぁ~。そうそう、私はちょっと今お部屋でしなくちゃいけない事があって。」
「どうしたにゃ、ミレフィア?」
「さっきからお忙しそうね、ミレフィア。あらご飯も上で食べるのです?」
「うん、あのね、剣に特殊な魔術を掛けなくちゃいけないんだけど、ちょっと危険なの~。いい? リェリュスとエルゼも。私がいいというまでお部屋に勝手に入っちゃダメよ。火傷しちゃうよ。」
「一緒に食べようよ~。でも分かった。」
「おばちゃん、上で食べるんだけど、お腹空いちゃったから1人前半、ちょうだい! あはは。」
「おやそうかい、魔剣士さんは大変だわね。」
「メイドさんたちも、ゆっくりしてらしてね。ごめんなさ~い。」
「(私です……心配しないでそこにいて。)」
私は3階の女子部屋の前に戻り、ドアを開ける前に小声で言う。そして普通にドアを開けて階下に聞こえるようにも言う。
「さ~てこれから危険な魔術を使っちゃうぞ~。」
ふう。天井に張り付くでもなしに、さっきの正座のまままだぐずっていた。ずいぶん私を信用している不審者だ。
私はちょっと騒音が伴う系の魔法をアイドリングさせて、会話が外に聞こえないようにする。
「ここのセーブルおばさんのごはん美味しいんだから。半分まで食べていいわよ。」
「う~、うっ。いただきます。美味しい……。」
「不審人物さん……じゃないわよね、もう。ベアトリーチェの隠密警護さん、お名前は名乗れるの?」
「クロエ・ブランシュ、です。」
なんであっさり答えちゃうんだろ、隠密ですよね?
でもステイタス・ホログラムの通りの名前だ。私のスマホで確認しても、偽装になってるのは体力だけ。あ、ステイタス・マネージャ・ホログラムの略です。
「一見普通の女子なのに、その10倍の体力を分からないように鍛え上げているんだ……クロエ、凄いね。なんて特殊な訓練を……。」
「何年も何年もすごくつらい訓練をしたんだよ~う。」
あ~また泣く。
「ここにいていいのか?」
「いい……というか、1階のバーに通いのお客さんになりそうなのよね、あの2人が。ただし監視対象が違うというか。」
「それなら助かる。聖女様をこうしてお守りするのにこれ以上の場所はない。」
「でもベアトリーチェから存在を気が付かれては失格なのよね?」
「私を誰だと思っているんだ。同室にいて気付かれるようで隠密は務まらないの。」
そうか、さっき天井に張り付いていて私に気付かれたのは、私にだけは見えるように合図していたのね。
「でもここ2人部屋だよ? クロエを含めたら6人だよね。」
「多ければ多いで隠れ方というものはある、大丈夫だ。」
「女の子たちだから、大掃除日も多いよ?」
「移動中の家具というものはその後ろに隠れるためにあるものだからな。」
食べ終えて空になった食器を1階に持っていく途中、2階の廊下でダルクルトと鉢合わせになった。そうだ、さっき1階にいたもんね。
ただ、2人のメイドを連れている。
「あ、ダメですよ3階はまだ私の魔法の最中で……。」
というか、お招きしてないし。
「いえ、あの私共はお話した通り密偵でございまして、」
密偵の人が自分を密偵ってこうも簡単に言うものだろうか? についてはどうも気になる。
「ということはこれは国王様の命の一環なのです。」
「こちらのお方は勇者様でございます。つまり、私共は国王に忠誠を誓う同士。」
「はあ、顔は利きますね。」
「ちょっと勇者様にはご協力いただいて、3階でお暮らしの聖女様の様子を陰ながら見守らせて頂きたいのです。」
「同室の3階とは申しませんので、階下の2階からですからお邪魔にはならないかと。」
「何しろ、あの不審人物がこの地点で目撃されたという事が、聖女様の身の危険を意味しておりますので、ご理解をお願い致しますわ。」
「ダルクルト、……勇者さまのダルクルトさん? 何も言わなかったんです?」
「メイド服には興味ない。」




