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権限転生  作者: 純銀
聖女ベアトリーチェ・ディヴァニス
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ベアトリーチェとみんなと私

この宿屋の3階部屋は1人用としてはやや広い。2人でちょうどいいけど3人でもなんとか。

でもそれ以上の人数となっても平気かどうかは、お互いに平民らしい節約感があればの話。

今この部屋の住人は5人。

私ミレフィア、ルネアン、ベアトリーチェ、リェリュス、エルゼ、以上5人の女子だ。召喚冒険者が1人、獣人が1人、人間社会を勉強中のエルフが1人、私たちに懐いた幼い子が1人。この4人までなら慎ましやかな共同生活かな。

でもそこにもう1人いるのは、平民でも庶民でもない。


普段そんなに意識してなかったことを改めて考えると、隣国からいらっしゃっていて、その辺にいる貴族よりもずっと偉い。国王様が直々に玄関先で丁重にお迎えしないといけないくらいの要人。本当なら世界の冒険者たちがこの人のために戦っていてもおかしくない。そのはずの聖女様、それがベアトリーチェだ。

一緒に城下町を歩いているだけで、ほうぼうで我がセレントルー王国の公式来賓行事になりかけるくらいだったのは当然。

今では衣服も髪飾りもうんと平民らしくしている。まだまだ少女なそのお顔までは一部の偉い人の間でしか知られていないので、大聖堂みたいな場所にさえ立ち寄らなければ普通の女子でいられている。

とは言っても、一緒にこうして庶民の生活で当たり前に距離0センチの接し方をしていても、全然打ち消せてない特別な気品はそこにある。まあ私も他の子たちも、しょっちゅうそのお手々やほっぺを私物化するけれど。


それにしても、私たちは冒険者だ。

「ベアトリーチェ、本当にまだこうして私たちのパーティーメンバーでいたりしてて、いいの?」

さっきも言ったけど、本来なら私たちはこういう聖人様をお守りするために命を捧げてるような立場関係のはず。

「全然? だって妾《わらわ》はみんなと同じくらいの子供ですし、あの時の行事だって挨拶と儀式だけで、妾《わらわ》がいなくても別になんでもなかったんですから。」


そんな事言ってるけど、ステータス・ホログラムを見せ合うと彼女の冒険者レベルはBランク。その強力で十分な防御真法(まほう)と治癒真法(まほう)は、Eランクくらいの私たちを、いつも安全性完備な冒険者パーティーでいさせてくれる。

「なによりここは隣国。こんな小娘がお忍びでいるところに、聖老院が十数人も妾《わらわ》に護衛を付けるなんて事はできないです。」

わぁ、やっぱりいいのかな本当に。


5人で3人部屋にいる時の密着度は、お外を歩く時にもそんなに変わらない。

今日のお散歩はレフィアとリェリュスがこの町で流行りの合図遊びをしているし、私とベアトリーチェは恋人手つなぎして、エルゼはどっちかから抱っこされたりおんぶされたり駆け回って注意されたりだ。

ちょっと私は、エルゼの秘密とベアトリーチェの関係が気になってたりしたんだけど……至って仲が良い。

「このまちのにんげんどもよわれのきげんがよいこのいちにちにおそれをわすれるがいい。」

「あはは、エルゼちゃん沢山お喋りできてすご~い。」

おんぶされてあんな感じだ。たぶん、とっても大丈夫でしょう。


まばらな人混みで、ごくありきたりで何も気にならない女の子と擦れ違った時、私のスマホが着信で出現する。ステータス・マネージャ・ホログラムの略。

「……うん? なんだろう。」

私がスマホを見るために横を向いた瞬間だった。擦れ違ったばかりの女の子が身構えたかのように見えて、顔を向けた時に、私の視界から音もなく消えた。

私の仲間たちは特に気が付いてない。

着信した通知内容を見ると……[大幅な偽装体力を検出]。

そこに取得された偽装者の情報は見知らぬ相手だった。とっくに通知を除外してるエルゼのだったら偽装魔力だし。


う~ん、これどうしよう。

私たちは普通に散歩して、みんなのドリンクとエルゼのおやつ以外は市場を見るショッピングをして、そして帰宅しただけ。その間に4回も私のスマホに通知が入った。それぞれ擦れ違った時の女の子は衣服も雰囲気もぜんぶ違うのに、4回とも同じ人物情報だ。

「壊れちゃったのかな、私のスマホ。」

ホットラインで一応確認してみる。

「あの~女神さま、私は何にもしてないのにこのスマホ、こわれました。」

「カスタマーサポートじゃないよ私は。」

何だか機嫌が悪そうだったのでしばらく経ってからまた相談してみる事にする。


みんなはもう宿屋《おうち》に入っていった。私もお部屋で落ち着こう……と思ったその時、今消したばかりのスマホが通知で出現する。

折り返しだと思って「はいはい、」とスマホをつかみ直した時、

通行人の女の子が私の背後を取り、

喉元に、尖った何かを押し当てた。

「わっ、ちょっと。何……!?」

「どこの手練れの者だ貴様……なぜ拙者の気配に気が付く。」

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