ルネアンと獣人街と私
冒険者ギルドで先日受注したのは、Cランクというガルーグル掃討依頼だった。それなのにサブパーティーメンバーのうち臨時編成した獣人チームのお陰で、見事に済ませられた。
「あなたたちは良いサブパーティーよ。」
「すごい初仕事だったにゃ。」
「そんみゃ~、先輩の皆さんのお陰ですみゃ。本当に楽しいパーティーだったみゃね、みんな。」
「そうですみゃ。美味しいパーティーみゃした。」
「みゃた行こうよね、焼き串パーティー。」
「行こう行こう、きっとみゃ。」
「楽しみゃね~。」
確かに、2時間ほど「パーティー」の種類が切り替わった気もする。でも新人さんたちは歩き疲れもなく、当日の夜のうちに無事帰還できました。
彼女たち5人を一人一人見てみると、元の戻れるお家がこの城下町にある子は、1人もいない事が分かった。
1人は人間街の出身だけど、このセレントルー王国での居場所を畳んで国外への旅路の途中だった。
2人はその逆で、それぞれの隣国からこの王国へ用事があった旅人だ。
残りの2人は、それぞれの時の討伐地点の近辺で野性生活をしていた子たちだったわね。
そんなこの女子たちは、私ミレフィアと勇者ダルクルト率いる予定の順番と出番待ちになってるサブメンバー、そこのうちの獣人のみんなだ。
他の15人の中に戻って、今日も総勢20人で屋外訓練生活をしている。
「報酬を9人で頭割にした5人分があの子たちの取り分。サブメンバー全員が宿屋生活を始めるには、まだ採算が合わないわ。」
「でもそれぞれ新しい武具と、お祝いにゃお食事会ですっかり機嫌がいいし士気も上がってるにゃ~。」
「にゃあミレフィア。今回戦ったあの5人は、私と違って……この城下町には帰れるお家があのテントだけにゃのにゃ。」
「ルネアンは、獣人街に生まれ育ったお家があるんだものね。」
「それでにゃ、私の生まれた街だと恥ずかしいんにゃけど。付き合いのあった別の獣人街のほうににゃらあの5人を紹介しても良いかにゃって。」
セレントルー王国に獣人街は幾つも点在している。獣人街以外の街を人間街と呼ぶこともあるけど、人間街生まれの獣人も大勢いるので、完全に区分されているというのとも違う。
人間街は、人間が多数派で獣人も混ざって生活する場所。
獣人街は、獣人の集団性で形成されて共存してきた場所。
例えばルネアンみたいに「獣人街育ちでも人間街を選んで暮らし始める獣人」も普通にいる、という事らしい。
そう考えると「どこかの獣人街を第2の故郷にしたい獣人」も、きっといるわよね。
獣人街の1つを訪れたのは、私とルネアンと、サブメンバー中獣人女子たち5人全員。
獣人といっても人間のうちの一種なので、その街並は人間街と大きくは違わない。……と言いたいけど、
「お久しぶりですにゃ。私の仲間を連れて遊びに来たにゃ。」
「大きくなったね~ルネアン。その子たちも若いのに強そうだねえ。」
のんびりしていた小父さんがそう言いながら尻尾を振って大きくあくびをする。
もっと小さい子たちが何人かで追いかけっこをしていて通り過ぎる。二足歩行したり四足歩行したり。
大通りにはお店もたくさん開いてるけど、大半みんな日光浴してる。
そんな人たちの何人かに声を掛けられながら、ルネアンがけっこうな人数から顔を覚えられてる事も分かる。あ~。他所の獣人街でこうだとすると、お生まれの街なら見かける全員が知り合いかもしれないわね。
まずは観光気分で、獣人街名物らしい物をいくつか食べ歩きする7人の女子たち。街のみんなはのんびりしてる。私なんかは彼らの秘めた戦闘力の事も忘れてしまう。可愛いなぁ。
そうして歩いてると、一つのお店の所でルネアンが私を見て立ち止まる。そして私を連れて入る。
「ここのご主人にゃら、きっと5人たちに案内をしてくれるにゃ。」
「いらっしゃい、人間の娘さんと……おや、グラウさんとこの、何番目の誰だったかな?」
「元気ですかにゃ。たまにゃはと思って人間の子を連れて観光中だにゃ。それと、にゃんだけど……。」
「ふむ。お外の見かけない女の子たちもお連れさんだね?」
「あの子たちは人間街生まれだったり、隣国の子たちだったりにゃ。まだ収入は少にゃいんにゃけど、私と仲が良いんにゃ。」
「ああ、私らと同属だもの、部屋とかならいつでも用意できるさ。」
「獣人街のほうが居心地がいい子は多いと思うんだにゃ。」
「そうよね……私もそう思います。」
「ルネアン、だったよね。なあ、あんたはグラウさんのとこには戻らないのかい?」
「にゃ~、私はにゃ。いつまでもは子供じゃにゃいんにゃ。」
その後、私とルネアンは2人で普通に観光の続きをしながら色々と話し込んで時間を過ごした。
ご主人にお任せしていた5人とは、夕方より前に合流。
「残りたい子はここに残るのにゃ。さ、私とミレフィアは人間街に帰って、みんにゃにちゃんと報告するから安心するにゃ。」
私たちは歩き出す。まあいつでも会えるし。
屋根なしのキャンプ生活に戻りたい子なんていないよね。いい第2の故郷になるといいな……。と思って少しは手を振ろうと、私はちらっと振り向く。
あれ、5人ともすぐ後ろに付いてきている。
「ルネアン先輩~、こんみゃ、いつでも遊びに来れる街ができた事が凄く嬉しいみゃ~。」




