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権限転生  作者: 純銀
獣人ルネアン・グラウ
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18/39

ルネアンと獣人サブチームと私

石畳にまだ朝露が残る頃に私たち9人は城下町を出発した。辺境領の峡谷まで歩いての行程だ。

人間も徒歩という能力においては侮れないもので、子供のうちから遠足や運動会はするし毎日通学と体育の時間をこなすものね。学生や社会人にもなると1時間半とかの通勤通学組は電車通勤経路の徒歩行程が数キロなのも珍しくない。多少鍛えられれば競歩やマラソンで大勢が延々と歩ける、それが人間の徒歩の実力。

ただし獣人たちは進み方が違う。彼女たちは四足歩行でスタスタと駆けていき、徒歩組の私たちが追いつくまで休憩して、またスタスタと次の休憩所まで進むわね。私たちは休憩地点に寄り集まってる可愛い猫耳たちを見て脚の疲れが癒される。そんな風にしてそれぞれできるだけ疲れない方法で目的地を目指した。


お昼も近くなって、見えてきたのは峡谷らしい険しい地形だ。

依頼によると、少し前からこの辺りの断崖の中腹にガルーグルが営巣をしているのが目撃されている。そのため数羽の群れがこの辺りの街道で荷馬車や旅人を襲ったり、放牧されている家畜にも被害が出ている。これ以上広がらないように、繁殖する巣から掃討しないといけない。

「来たぞ。」

人間の背丈の倍くらいの羽ばたく音が、近付いてくる。


こちらを獲物だと思って襲い掛かってくるガルーグルの数羽に、ダルクルトの双剣は1羽ずつ確実に斬り付けていく。まだ距離のある数羽には私が魔力攻撃を飛ばし、それで向かってきたガルーグルは私の長剣の前で翼を広げている大きな的になる。

その空撃が手薄になったところを、私の仲間たち6人が足取り軽く進んでいく。頼もしい。

こちら側に結界を張らないといけないような魔物ではないし、私たちも大きな負傷はないので、ベアトリーチェはその貯めた神力の使いどころが無くてやっぱり持て余している。だけどこの足場の悪さではいつ誰が大怪我になるか分からないので、その力は貯めておいてね。


風化した岩棚。崩れかけた斜面。人間が足を乗せるには狭い突起。古い岩塊が積み重なったり、深い亀裂が走ったりしていて、一歩踏み外せば数十メートル下まで転落してしまいそうだ。

そんな荒れた岩場を、獣人の女子たちは岩から岩へ跳び続ける。着地した瞬間に次の足場を探して、尻尾でバランスを取り、耳が風の向きを聞き分けて、みんなのしなやかさが岩肌を駆け進む。

ここからは……人間の訓練されてないロッククライミングでは進めないので、誘き寄せと遠距離攻撃の態勢になる。

「ダルクルトって、その弓の練習してたの?」

「ああ。」

「妾《わらわ》も戦闘中の2人を浮かばせることは難しいですから、ここからあの子たちを支援しましょう。」


親鳥と思われるガルーグルの凶暴に振りかざす脚爪と嘴が、仲間たちに襲い掛かってくる。しかし彼女たちの俊敏さは常にそれを上回り、1羽に対して2~3人ずつで襲い返しながらも、自分の次の着地地点を確かめながら飛び跳ねて、岩に叩きつけられているのはガルーグルだ。2羽が仕留められて、1羽が谷底に落ちていった。

「鮮やかですね。さすが獣人さんたち。」

「そうそう! アルヴェニ、その卵も全部崖下に落としてちょうだい。その勢いであと何か所かの巣も片付けましょ!」

そんなアルヴェニの肩を、フェルネシアが とんとん と叩いて卵をキャルファナに渡させる。うん? エルディは火を起こしていて、ルミエルダがガルーグルの1羽を捌き始めている。

「……あそこであの子たちは何を始めているの?」

「命への儀式か何かでしょうか……?」


時折襲ってくる続きのガルーグルには対処しつつ、しばらくするとルネアンが私たちの地点に降りてきた。

「あの子たちのうち2人がにゃ、『御馳走みゃよ食べよう?』『そうするみゃ。』って言い出したのにゃ。」

「うん。」

「ほら、私たちってにゃ。そういう連帯感が大切にゃので、みんな。『そうみゃね。』『お腹空いたみゃ。』『御馳走みゃ御馳走。』……って。」

「ルネアン。あのね、私たち今、討伐の戦闘最中で。」

「にゃあにゃあ、にゃあ。みんにゃの分もあるにゃ。焼けたらまた1本ずつ持ってくるからにゃ。」

美味しそうに焼けた大きな串焼きを私たちに渡して、ルネアンは巣のほうに戻っていった。

「そうだぁ。獣人が討伐受注者に選ばれないギルド側の都合って、そういうところかぁ……。」

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