まだ時間前だから、厨房へ入らなくても良いんですが?
何にせよ、直ぐに充填器が来る訳ではない。
泥抜きにも、数日は掛かるだろう。
なので、マスターの手伝いを。
「いやいや。
何時もの時間からで良いんだぞ?」
マスターが淳少年へと。
それに対し。
「いやいや。
何かするには中途半端な時間だしなぁ。
後一時間ほどあるんだったら別だけど」
それへ苦笑いしながら。
「流石に二時間近くだと、常連が来てしまうな。
淳が居ないと煩いからなぁ、アイツら。
俺の料理は食いやがらねぇし」
思わず肩を竦める。
いや、マスターの料理が不味い訳ではない。
むしろ美味いと言えよう。
だが、魔素分量の配分が行える訳ではない。
そんな真似が行えるのは、淳少年だけである。
そして、身体に合った魔素量を含む料理は美味い。
正に絶品と言えよう。
ハッキリ言う。
料理としての味と質は、マスターが作る料理の方が上なのだ。
だが、それを覆す力が、魔素を含む料理にはある。
ゆえに皆は、淳少年が作る料理を所望するのだった。
「ドリンクは普通に頼むんだがなぁ。
なんでか、料理は拒まれるんだよ。
まぁ、魔素量が多い隣接地域産と、外部食材を絶妙に合わせるなんて、俺には出来ないんだがな」
いや、それが出来るのは、淳少年だけである。
その料理に追い付こうと研鑽するマスターは、ミシュランが三つ星を与えるシェフクラスの腕に。
本人は、まったく気付いてないが。
それに隣接地域の喫茶店である。
ミシュランなどの調査員が潜入できる場所ではない。
立ち入っただけで、身体に致命的なダメージを受ける場所なのだから、当然である。
そのため、喫茶店へ来るのは、隣接地域の者達だけ。
そんな隣接地域の者達は、当然かながら、ある程度は魔素に適合している。
まぁ、当然か。
そうでないと、隣接地域へ住む以前に立ち入れないのだから。
そんな魔素適合者達は、純粋な料理の味よりも、魔素が身体に適する含有量の料理を好む。
いや、好む以前に絶大たる旨みを感じ、多福感を覚えるようなのだ。
つまり、料理の味云々以前の問題なのだ。
マスターが勝てるハズがない。
なのに、調理の技術に問題があると考え、ネットや書籍。
昔に修行した店やアルバイトした店を訪ねたりと。
知り合い経由にて、ミシュランから星を貰った店を訪ねて、教わったり。
教わりに行って、スカウトされたりは、多々あるのだが、自分の腕前に自信が持てないマスターである。
正直、彼らよりも腕は上であるし、教わりに行った時に助っ人して厨房へ入ると、マスターのファンが出来たり。
そのため、時々ヘルプが。
時間が合えば、行っており、さらにファンが増えているのだが、本人は気付いてなかったりする。




