表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生?いえ、元世界転生です!  作者: 剣原 龍介
青年の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/161

第八十八話・野外行軍演習の悪魔②

 広場の中央に鎮座する魔族デーモンに向けて走り始めたアレックスは、目の前の魔族が身を震わせ始めたと同時に地面が振動する様な微かな揺れを感じていた。

 駆け出した一行が広場の中程まで進み出た所で、異変に気付いたガーンズバック先生がハッとした表情で立ち止まり足元の地面に目を落とす。

 それを見た一行もその足を止める。


「!?いかん!全員避けろ!」


 ガーンズバック先生が警告の叫びをあげる。

 次の瞬間、地面を突き破って漆黒の何かが飛び出してきた。

 アレックスは、その場をとっさに横っ飛びに飛びのいてそれを避けると、反射的に手にした細剣レイピアを振るう。


「クッ、重い……」


 アレックスが地面から飛び出してきたそれを切った瞬間、ガツンッと手に伝わる重い手応えに刀身が止まりかけるが力を込めて細剣を振り抜く。

 地面から飛び出してきたそれは、漆黒の触手の様にクネクネと蠢く木の根の様なものだった。

 実際、目の前の細長く伸びる樹木の様に見える魔族の姿から言えば、それは地に張り巡らされた根っこなのだろう。

 アレックスの切り飛ばした魔族の木の根が、地に落ちてビタンビタンッとのた打ち回ってその動きを止める。

 瞬時にアレックスは周囲の状況を確認する。

 警告を発したガーンズバック先生は、もちろんその魔族の不意打ちの攻撃を避けている。

 ガーンズバック先生の警告に即座に反応したランペイジ先生も、地面を転がる様にして難を逃れていた。

 こういった対応の良さは、二人共が元冒険者として幾多の死線を潜り抜けてきたおかげだろう。

 しかし、ガーンズバック先生の警告の意味を考えようとして動きの止まってしまった他の先生達は、とっさの出来事に反応が遅れてしまい、地面から飛び出した木の根の一撃を避けきれずに痛撃を受けて吹き飛ばされていた。

 次々と地面を突き破ってくる魔族の触手の様な木の根の攻撃を、アレックスはステップを踏む様に軽快に回避していく。


「ガーンズバック先生、ランペイジ先生!」


 続く魔族の攻撃を、的確に斧で叩き落としていくガーンズバック先生。

 ランペイジ先生も地面を転がって魔族の攻撃を避けながら、瞬時に体勢を立て直して立ち上がる。

 細長い樹木の様な魔族がその幹を揺らし、茂った枝葉を震わせてサワサワと葉擦れの音を鳴らす。

 その動きに合わせるかのように次々と地面を割って現れる木の根が暴れまわり、初撃の不意打ちを避け損ねていた先生達に襲い掛かる。

 それを見たアレックスは、腰鎧スカートアーマーに加工した魔道具の布に手を添えると瞬時に魔力を流す。

 魔道具に込めたアレックスの魔力に反応して、アレックスの腰回りに四つの輝く十字の文様が浮かび上がる。

 アレックスは腰に浮かび上がった十字の文様に更に魔力を流し込んで掴むと、クルリと身をひねって勢いをつけるとそれを投じた。


「行け!切裂十字クロスリッパー!」


 大量の木の根が、不意打ちで体勢を崩された先生達に襲い掛かろうとする。

 そこに、アレックスの魔力で出来た十字状の疑似物質――切裂十字――が投げ込まれる。

 アレックスの投じた切裂十字が、高速回転しながら木の根を次々と切り裂いていく。

 アレックスの介入で危機を脱した先生達は、各々体勢を立て直して暴れまわる木の根に対処していった。

 しかし、複数の木の根が暴れる様子に苦戦を強いられ、広場の中央に鎮座する魔族に手出しをする事は出来ないでいた。


「ランペイジ先生、大丈夫ですか?」


 アレックスは自分のすぐ後ろを走っていたランペイジ先生に呼びかける。

 そのランペイジ先生は、地面を突き破って現れる木の根を転がる様にして避けると、頭上から叩き付けてくる一撃を魔術で作り出した盾で受け止めていた。

 魔法の盾は木の根の一撃で粉々に打ち砕かれるが、魔法の盾が一撃を受け止めたその隙を突いてランペイジ先生は駆け出す。

 ランペイジ先生の駆けるその後ろを、魔法の盾を打ち砕いた木の根が遅れて地面を叩き割る。

 襲い掛かる木の根を避けつつ状況を見ていたアレックスの下に、ランペイジ先生が駆けてくる。


「私は大丈夫!これでも、学園に来る前は冒険者として鳴らしてたんだから!それより、他の先生達は?」


 ランペイジ先生が周囲を見渡すと、アレックスが状況を簡潔に言い放った。


「ガーンズバック先生は前に出て魔族と交戦中、他の先生達は魔族の攻撃に対応するので手一杯のようです」


 そうして、アレックスがランペイジ先生に現状を話していると、周囲の地面が割れて木の根が槍の様に飛び出してくる。


「ランペイジ先生、危ない!」


 アレックスは、ランペイジ先生の手を取ると自身の下に引き寄せてランペイジ先生を庇う。


剣技ソードアーツ聖光装刃セイントブレード


 襲い掛かる木の根を一瞥し、アレックスは細剣を一振りにして薙ぎ払った。

 アレックスの握る細剣の刀身が仄かに煌めきを放ち、フォンッと空気を切り裂いて音を立てる。

 そして、その鋭い太刀筋が木の根を数本まとめて切り飛ばした。


「あっ、ありがとう、スプリングフィールド君。そっ、そうしたら急いでガーンズバック先生と合流しましょう」


 アレックスとランペイジ先生の目の前の少し離れた所では、ガーンズバック先生が魔族の猛攻撃を跳ね返して奮闘しているのが見える。

 広場の中央では、魔族がその細長い幹を震わせ四方に伸びた枝葉をこれ見よがしにサワサワと振るわせている。

 その様子に、アレックスは小さな違和感を覚えていた。

 すると魔族の鳴らす葉擦れの音に合わせるかのように、地中からさらに数本の木の根が現れてアレックス達に襲い掛かる。


魔技マジックスキル魔法盾マジックシールド!」


 ランペイジ先生が頭上に魔法の盾を生み出し、木の根が魔法の盾に弾かれた瞬間を狙って二人はガーンズバック先生の下へと駆け出す。

 木の根の攻撃を受けた魔法の盾が一撃で砕け散り、駆け出すアレックス達の頭上から降り注ぐ。

 しかし、その少しの時間でアレックス達がガーンズバック先生の下へたどり着くには十分だった。

 駆け付けたアレックス達を一瞥したガーンズバック先生が、その顔に獰猛な笑顔を浮かべる。


「さすがにやるな、スプリングフィールド君。ランペイジ先生も無事な様で何よりです」


 そう言いながら、ガーンズバック先生は打ち下ろされる木の根の一撃をその手の斧ではじき返した。

 木の根の一撃を防がれた魔族が、その幹を揺らし枝葉を震わせて葉擦れの音を鳴らす。


「スプリングフィールド君、ランペイジ先生、どうやらあれは植物に擬態するタイプの魔族のようですな。まぁ、あの幹の細さでは大樹の悪魔ヒュージツリーデーモンと言うよりは精々が小木の悪魔リトルツリーデーモンと言った所でしょうが……」


 ガーンズバック先生が話している間にも、魔族はその幹を揺らし枝葉を震わせてサワサワと葉擦れの音を鳴らし、周囲でのた打ち回る木の根は容赦なく三人に襲い掛かってくる。

 その都度、ガーンズバック先生が木の根を弾き返し、ランペイジ先生が魔法の盾で防ぎ、アレックスが細剣を振るって切り飛ばす。


「さてはて、木を切り倒すならば、やはり斧の出番でしょうな。……スプリングフィールド君、ランペイジ先生、援護を頼みますぞ!」


 打ちかかってきた木の根を叩き返したガーンズバック先生が、広場の中央に鎮座する魔族へ向かって駆け出していく。

 アレックスとランペイジ先生がその後を追いかける。


「任せてください、ガーンズバック先生!魔技、風刃ウィンドカッター火炎弾ファイアショット!」


 ランペイジ先生が、次々と詠唱短縮した魔術を放ってガーンズバック先生の進む道を切り開いていく。

 アレックスは、ガーンズバック先生とランペイジ先生の中間に位置取っていた。

 そうして、ガーンズバック先生が背後から攻撃されない様に木の根を叩き切り、後に続くランペイジ先生の守りに回る。

 目の前の魔族は相変わらずその幹を揺らし枝葉を震わせ、サワサワと葉擦れの音を鳴らし続けている。

 その様子に、アレックスは再び小さな違和感を覚えた。

 その時、突き進むガーンズバック先生の眼前で、多数の木の根がその行く手を塞ぐ様に地面を突き破って現れた。

 ガーンズバック先生は木の根に衝突せんばかりの勢いで突き進み、その手の斧を振りかぶる。


「邪魔だぁ!斧技アックスアーツ火炎装刃フレイムブレード横断裂斬ホリゾンタルスラッシュ!」


 ガーンズバック先生の斧が炎を噴き上げ、振り抜かれた刃が木の根を切り飛ばし消し炭に変える。

 そしてガーンズバック先生が更に踏み込もうとした瞬間、その足元が崩れて木の根が地面から噴き出す様に現れるとガーンズバック先生の姿を覆いつくす。


「ガーンズバック先生!」


 ランペイジ先生が悲鳴じみた声でガーンズバック先生の名を叫ぶ。

 広場の中央に鎮座する魔族が、歓喜するかの様にその幹を揺らし枝葉を震わせてサワサワと音を立てる。


「奥義、竜血解放ドラゴンブラッド!斧技、霊気爆閃エネルギースマッシュ!」


 ガーンズバック先生の声が響き渡り、爆音とともに木の根が吹き飛ぶ。

 爆発の中心から姿を現したガーンズバック先生の姿は、人の姿をしていない。

 張り詰めた逞しい筋肉を竜鱗に包み、頭部は竜のそれそのまま、広げた竜の翼が空気を打ち震わせ竜の尾が力強く大地を打ち据える。

 竜人族ドラグニュートであるガーンズバック先生が、その身に宿る竜の力を開放した姿だった。


「さすがに今のは少し効いたぞ!しかし、十分に距離は詰めた!」


 広場の中央に鎮座する魔族までの距離は十数メートル。

 幹を揺らし枝葉を震わせて葉擦れの音をたてる魔族を睨み据え、ガーンズバック先生が吠える。


「サワサワと煩わしい魔族が!これ以上好きにはさせん!お前の命運もここまでだ!この一撃で葬り去ってくれる!」


 大地を踏みしめたガーンズバック先生が竜の顎をガバッと開き、そこに大量の気が収束していく。

 眼前の魔族は、そのガーンズバック先生を挑発するかの様に幹を揺らし枝葉を震わせてサワサワと葉擦れの音をたてる。


「!?……いけません、ガーンズバック先生!」


 その瞬間、違和感の正体に気が付いたアレックスが、一撃を放とうとするガーンズバック先生に警告の言葉をかける。

 しかし、ガーンズバック先生の準備は既に完了しており、アレックスがガーンズバック先生を止めるのは間に合わなかった。


「これでも喰らえ!爆裂竜哮破ドラゴンバースト!」


 その瞬間、ガーンズバック先生の放った一撃が眩い閃光と共に大地を震わせたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ