古武道部 新入部員①
岸涯蛇候と対峙して1か月ほど過ぎた。
いつも通り、登校して授業を受けて光と渉は部室に来た。
摩耶も来ている。今度はショッキングピンクのジャージを着ていた。
「摩耶先輩、今日も派手ですねー」
渉が言うと、光もぼそっと言った。
「忍べよ。」
「ああ⁉」
摩耶に怒られそうになった所で顧問の興水と学長の小鳥遊が入ってきた。
「今日は新入部員を紹介する。1年生の岩梨修二くんだ。」
岸涯蛇候が肉体に入っていた噂の新入生だった。
「お祓いはうまくいったんですか?」
渉が聞いた。
「ああ、伊神神宮の祭主に来てもらってちゃんと除霊してもらったよ。1週間ほどかかるかと思ったが3日ですんだよ。今の祭主は腕がいいからね。さ、岩梨くん、挨拶して。」
学長が答えた。
「岩梨修二です!なんかご迷惑をお掛けしたみたいですいませんっした!よろしくお願いしやす!」
元気で明るい声だった。性格が根明のようだ。
「ちょ、あれどういうことだったのか説明聞いてないんだけど?」
光に言われ、興水が話し始めた。
「岩梨は端的に言うと、強い依り代体質だ。あの辺りをうろうろしていた時に辻に入ってしまったようだ。辻は分かるな?境目と通じることがある十字の道だ。そこを通りかかった時に憑依されてしまったらしい。」
「いや~、俺なんも覚えてないんすよ。気づいたら祭壇の上で寝かされてた感じっすね。」
へへへと岩梨は笑っていた。自分が何をしたのか聞かされていないようだ。
「でも依り代体質って全員把握して監視してるはずっすよ?今回みたいなことが起こらないように。」
「依り代体質の者は天満家の血筋からしか生まれないから監視をすり抜けることは無いと思うのだがな…。まあ調べてみないと分からんな。」
渉が岩梨に話しかけた。
「君はなんであの時あそこにいたの?」
「実は俺の両親が3か月前からから行方不明なんす。だから手がかりを家で探してたんですよ。
なんか手がかりないかと思って家でアルバム見てたら、伊坂ダムで撮ったっぽい写真があったんでその辺をさがしてたんすよ。コレ赤ちゃんの頃の俺っす。」
そういうと岩梨は写真を見せた。
確かに伊坂ダムで撮ったと思われる風景と、若い父親が抱いている赤ん坊の頃の岩梨が写っていた。
「両親行方不明の心当たりはな無いの?」
「よくわかんないっすね。でもウチは結構引っ越しが多くて急で。借金取りに追われてんのかと心配した時期もあるっすね。」
「この学校にはなんで入ったの?」
「両親がいなくなって警察に相談してたらたまたま来ていたここの学長さんに誘ってもらえたんで。寮あるし都合良かったんで。」
光は思った。たまたまではない。岩梨とは出会うべくして出会っている。
「学長~。知ってたんすね?」
「依り代体質を放っておく訳にもいかないからね。」
小鳥遊はせめても近くに置いておこうと自分が学長を務める京都洛中高校に誘ったようだ。
「それに彼の様な依り代体質の者は身体能力が人間離れしているからね。あっという間に上位の呪禁師になれると思うよ。」
依り代体質とは自然エネルギー霊体が憑依しやすい体質の者の事だ。
強い霊体が入っても壊れる事無く、耐えられる特異体質である。
そのため非常に人間離れした強靭な体躯と身体能力をしている。
この依り代体質が強いと、霊体をその身に落とし、自分の手足のようにその霊体の力を操れる者もいる。
そのように霊体をその身に憑依させ霊体の能力を自在に操る者を「神落とし」という。
今、神落としの能力があるのは伊神神宮の祭主ただ一人だけだ。
「彼にも神落としの才能があると?」
渉が聞くと小鳥遊は言った。
「霊体を体に落とすのは至難の業らしいからね。どうかな?でも身体能力は使えると思うよ。」
なるほど。呪禁師にしてしまえば、戦力アップと監視が同時に叶う訳だ。と渉は思った。




