境目 伊坂貯水池の辻神 岸涯蛇候(がんぎじゃこう)⑤
朝になり後方支援部隊が到着し、顧問の興水と学長の小鳥遊もやってきた。
警察にも呪禁師関連事案を捜査する部署があり、担当者が来ていた。
要石で頭を潰されて死んだ被害者はこの辺りの結界を見回っている呪禁師だった。
血の穢れで封印を解きやすくするために狙われたようだ。
岸涯蛇候が肉体に宿った少年は興水によって強力な封印が施され、横たわったまま意識が無い。
「一旦場所を変えて祭壇を組んで祓わねばならんな。学長、できますか?」
小鳥遊は首を横にふった。
「伊神神宮の祭主に来てもらった方がいいね。」
「わかりました。私の方から頼様に連絡しておきます。」
頼様というのは伊神神宮の現在の祭主である。
最近大宮司から祭主に昇進した。
祭主というのは伊神神宮のトップだ。
まだ若干17歳だが誰からも異論は出ないほど、強力な霊力を持つと噂されていた。
歴代最高の資質を持った祭主らしい。
「学長、そいつ伊神神宮に持ってった方が早くないっすか?ここ三重県だし」
話を聞いていた光が割って入ってきた。
「そうしたいのはやまやまなんだけどねぇ。伊神神宮は結界が強すぎて辻神は入れないと思うよ。」
「じゃ部室で祭壇組むわけですか?」
渉も話に入ってきた。
「そうなるね。それか一条君の家の庭だねぇ。」
「ちょ我が家は勘弁して下さい。めんどくさい。」
一行は車で京都まで帰る事になった。
呪禁で光だけは瞬時に帰れるが、距離があると光以外の人間を入れ替えるのが難しかった。
ここに来る時は渉も入れ替えて瞬時に移動したが、それは渉を陣の中で寝かせて式神と入れ替える準備をあらかじめしていたからだった。
深夜からずっと任務だったので、二人とも車の中でウトウトしながら帰った。




