境目 伊坂貯水池の辻神 岸涯蛇候(がんぎじゃこう)④
勝ち誇った顔で岸涯蛇候は笑った。
「呪禁師なんぞ敵ではないわ。この程度か。ヒヒヒッ」
「…ほう、俺たちの事知ってる?」
驚いて後ろを見ると、光が立っていた。
濡れてもいない。どういうことだ?
「その人間に結界を緩める手引きをさせたんだな」
渉も出てきた。こちらも濡れてもいない。
「どういうことだ?」
初めて岸涯蛇候は冷たい汗をかいた。
「忍法身代わりの術さ」
またしても光と紙の式神が入れ替わったのだ。
瞬時に入れ替われるので、光に攻撃を当てるのは不可能に近い。
今回は渉まで式神と入れ替えてあげるほど余裕があったようだ。
分が悪いと悟った岸涯蛇候は逃げの態勢に入った。
人間とは思えないジャンプ力で森の中に入っていった。
「逃がさない!」
渉が右腕を前にのばし、掌を上に向けた。
その瞬間、苦しむ声が聞こえてきた。
声の方に歩いて行くと、フードをかぶった小柄な男が苦しんでのたうち回っていた。
「お前かっ…何をしたっ……」
「肉体を持っていると面倒な事が多いのさ。霊体の時よりずっとリスクが高いんだよ。」
渉の能力のようだ。
「渉、その辺にしとけ。そいつこないだ見に行った期待の新入生だぞ。」
「…まじ?」
その男は泡をふいて白目をむいて気を失っていた。
フードを取ってみると、確かにこの前授業をサボって見に行った1年生の短髪の少年だった。
「なんで?」
「さあ…?」
とにかく後方支援部隊を呼ぶことにした。
人が一人死んでいる。責任の所在を確かめたい。
「そいつ生きてる?」
「生きてるよ。気道をふさいだだけだからね。」
とにかくお祓いを済ませ治療を開始して事情聴取しなければならなかった。




