古武道部 新入部員②
岩梨が来て挨拶が終わるとジャージに着替えて道場で準備運動をしていた。
ここにいる皆が岩梨の身体能力を図りたがっていた。
すると摩耶が得意の脇差しで対戦しようとやってきた。
もちろん真剣ではないが、ゴム製の模造刀でも摩耶の剣の技術では体は切れてしまうだろう。
危険極まりないが、岩梨は短めの木刀一つで相対することとなった。
「さて、依り代体質の身体能力見せてもらおうかね」
「おてやわらかにお願いしまっす」
緊張感がピーンと張りつめてその場が静まり返った。
摩耶が先に仕掛けた。脇差しは小指側に刃が来るように両手で持つ。摩耶は二当流だった。
瞬時に距離を詰め、右で頸動脈を狙うと、岩梨は木刀で薙ぎ払った。
すかさず左で頸動脈を狙うとすっとよけた。
ものすごいスピードで摩耶の脇差しは繰り出され、そのたびに岩梨は後ずさりしながらも全て木刀で受けていった。
普通の人間なら摩耶の脇差しの剣筋は見えないだろう。
そのくらい早く、しかも繰り出す方向と流れが多彩で攻撃と守りが一体となっている。
防ぎようが無いように思えた。
しかし岩梨はその攻撃の全てを木刀で受け止めていた。
摩耶は膠着状態を破ろうと足を薙ぎ払う低い蹴りを繰り出した。
岩梨はそれをよけ、バク中で後ろに飛んだ。
岩梨は武道を習った事は無い。それ故、動きの自由さがあった。
武道には何事も型というものが存在する。
より攻守を合理化するための動きの流れの様な型をあらかじめ覚えるのだ。
しかし岩梨の動きは自由奔放だった。
掌で木刀を一回転して方向を変えたり、左右投げて持ち替えたりとめちゃくちゃな動きだ。
しかしその動きが手に吸い付くような正確さと速さで新しい攻撃の形となっていた。
摩耶はそのトリッキーな動きにやりにくさを覚えていた。
距離が開き、再び超近接に持ち込もうと摩耶は一歩踏み込んだ。
その時、岩梨は自身の体の後ろ側から木刀を振り、遠心力で摩耶に木刀を当てにいった。
摩耶は防御の為、脇差しを自身の前に出した。
その瞬間、岩梨は下から木刀を振り上げ脇差しを上に飛ばしてしまった。
宙を舞う脇差しを片手で2本つかむと木刀と脇差しをもって言った。
「はい、終わりっす!」
その場にいた皆は息を飲んだ。
これが依り代体質。人の理の外側にいるようだった。




