【05】 丹沢の絶対的な根拠
丹沢「君本さん、ありがとう。
でも、やっぱり絶対に住んでいますね」
早苗「ほら、丹沢さんが
『絶対に住んでいる』って言ってるわよ」
戸部考一が君本早苗から電話を取り上げ、
電話口を代わった。
戸部「丹沢さん、
速水爽香に会えたのかい?」
丹沢「いいえ」
戸部「『絶対に住んでいる』って
どうして言えるんだい?」
丹沢「私の経験上、
窓口であれだけ揉めたのだから、
絶対に虚偽ではありません!」
力強い言葉だった。
戸部「それ、どういう意味だい?」
丹沢「私、これまでに
3年間窓口業務をやって来ました。
虚偽の届け出も何度か受けました」
戸部「そうなんだ」
丹沢「虚偽の届け出人に共通した特徴は、
顔を覚えられないように
職員との会話を最低限に済ませること。
それと届け書を出したら、
市役所の出入口に
最も近い所で待つことです。
それは、いつでも逃げられる態勢を
整えておくために」
戸部「それはすごい情報だなぁ。
まったく知らなかったよ」
丹沢「そして『絶対に住んでいる』理由の
二つ目がお風呂2、3回分の水です」
戸部「たったそれだけだぞ」
丹沢「それだけでも、
使用量があれば
部屋の中へ入った立派な証拠です」
戸部「そんなものなのかい?」
丹沢「はい。
ついでに言えば、
電力メーターの
アルミニウムの円盤も、
かすかではありますが、
回っていました」
戸部「そこも見るんだ」
丹沢「冷蔵庫を使っている証拠です。
だから絶対に住んでいます」
戸部「でも、その部屋の住人が、
速水爽香かどうかは、
わからないだろう?」
丹沢「そうなんです。
問題はそこなんです」
戸部「すまん、課長が戻って来た」
戸部が電話を切った。




