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53.遺跡攻略開始

ティシアとノアは、武器が完成するまでの間、冒険者ギルドで依頼をこなすことにした。


討伐系の依頼。


採掘の依頼。


荷物の運搬など。


二人は様々な依頼をこなした。

そうしているうちに、あっという間に五日が経った。


────────────


ティシアは老齢の男に荷物を渡す。

「こちら、ギルドからの配達です。」


「ここ五日間、毎日来てくれてありがとう。」


「いいですよ。」


後ろからノアが歩いてくる。

「向こうの配達、終わったです。」


「ありがと。」


ノアはティシアを見る。

「もうそろそろ、グルムさんのところに行きませんか?」


「そうだね。」


二人はグルムの工房へ向かった。


工房に入ると、グルムが仁王立ちで待っていた。

「よう。武器はできてるぞ。」


グルムはティシアに一本の剣を差し出す。


ティシアが受け取り、刃を見る。


白銀の刀身には、うっすらと紫色が混じっていた。

「……綺麗ですね。」


「魔鉄は、元になった魔物の性質を受け継ぐ。」


グルムは剣を見ながら説明する。

「ゴブリンキングの魔石を使ったなら、より重く、そして頑丈になるだろう。」


「そして──」


グルムは少し間を置いた。

「危険が迫ったとき、その危険を持ち主に伝える。」


ティシアは剣を見る。

「伝える? どうやって?」


「そのときになれば分かるだろう。」


ティシアは少し首を傾げた。


「……あと、炎耐性も付けた。」


「サービスだ。」


ティシアは剣を腰に掛ける。

「ありがとうございます。」


「気にするな。」


今度は、グルムが手のひらサイズの丸い水晶をノアへ差し出した。

「これは、熱トカゲの魔石を加工したものだ。」


「質はそれほど良くない。だが、少なくとも割れた水晶よりはマシだ。」


ノアは水晶を受け取る。


そして、杖に取り付けられていた神翼の羽の水晶と交換した。

「……確かに、魔力の通りが良くなったです。」


ノアは満足そうに杖を眺める。


しかし、すぐに少し残念そうな表情を浮かべた。

「でも、光魔法の魔法陣は割れた水晶の中にあったので。」


「光魔法が使いづらくなったのは、残念です。」


「それは場合によって使い分けだな。」

グルムは割れた水晶を見る。


「新しい水晶は魔力を通しやすい。」


「だが、古い方には光魔法用の魔法陣が刻まれている。」


「どちらにも利点があるってことだ。」


ノアは二つの水晶を見比べた。

「……なるほどです。」


ティシアは何か思いついたように手を叩く。

「そうだ。」


「神翼の羽に、別の名前を付けたら?」


ノアが顔を上げる。


「もう中に羽はないわけだし。」


「そうですね。」


ノアは杖を見つめる。

「ちょっと考えてみます。」


ノアが名前を考えている間、ティシアが口を開いた。

「神翼の杖とか。」


「いいですけど、直球ですね。」


すると、グルムも口を挟む。

「神翼太郎はどうだ。」


ノアは無言でグルムを見る。

「……よくそのネーミングセンスで、国一の鍛冶師やってるですね。」


「鍛冶の腕と名前を付ける才能は関係ないだろ。」


そんなやり取りをしていると、ノアが突然顔を上げた。

「決めたです。」


ティシアとグルムがノアを見る。

「名前は、『天照』にするです。」


ノアは杖を見つめる。

「もとは、みんなを照らす杖だったので。」


「いいね。」


ティシアは笑う。

「ノアらしい名前だ。」


「間を取って、天太ろ──」

グルムが何か言いかける。


しかし、ノアは完全に無視した。

「行きましょう、ティシア。」


「え、ああ。」


ノアはティシアの腕を引っ張り、そのまま工房の外へ向かう。


「おい、無視するな!」

後ろからグルムの声が聞こえる。


工房を出ようとした二人に、グルムが声をかけた。

「遺跡の攻略が終わったら連絡しろ。」


「すぐに調査隊を向かわせる。」


ティシアは腰に下げた剣へ目を向ける。

「……サーナトスについて、何か分かるかもしれない。」


ティシアはノアを見る。

「行こうか。」


ノアは頷く。

「はいです。」


ティシアはグルムに手を振った。

「行ってきます。」


「おう。死ぬんじゃねえぞ。」


こうして二人は、ヴォルガルドの火山へと向かった。


火口に着くと、ティシアは辺りを見渡す。

「おじさんが言うには、火口の壁沿いに入り口があるって聞いたけど……。」


ノアが一点を指差した。

「あれじゃないですか?」


ティシアがそちらを見る。


火口の壁に、一つの洞穴があることに気づいた。


その下では、溶岩が波打っていた。

「落ちたらひとたまりもない。慎重に行こう。」


ノアは風魔法を使い、ゆっくりと火口の壁沿いを降りていく。


ティシアもその後に続いた。

「もともとは階段があったのかな?」


「ですね。ほとんどのドワーフは魔法が使えないわけですし。」


二人は洞穴へ入り、暗い洞窟の中を進んでいく。


息をするだけで、肺が焼けるようだった。


しばらく歩くと、黒曜石のように黒く光る岩壁が目に入った。


その壁の中央には、三角形の穴がある。

「ここで、鍵を使うのかな。」


ティシアは遺跡の鍵を取り出し、穴にはめ込んだ。


すると──。


壁が縦に割れ、ゆっくりと横へ開いていく。


開いた隙間から、熱い蒸気が勢いよく噴き出した。


蒸気が収まるのを待ち、二人は遺跡の中へ足を踏み入れる。


そこには、多くの壁画が描かれていた。


ティシアはその一つを見つめる。

「これ……アルジャとサーナトスが降り立ったときの壁画じゃない?」


「ということは……ここには、アルジャとサーナトスに関する何かが残されているんですかね。」


「多分そうだね。」


ティシアが壁画をよく見ると、その周囲に文字が刻まれていることに気づいた。

「ノア、この文字読める?」


ノアは文字をじっと見つめる。

「無理ですね。」


「恐らく古代文字です。こういうのは専門家に見せるしかないです。」


二人が壁画を見ていると──。


ゴゴゴゴ……。


奥から、何か重いものを引きずるような音が聞こえてきた。


ノアが天照を構える。


「何かいるです。」


「……調査隊を呼ぶ前に、遺跡の安全を確認しないと。」


ティシアも剣に手をかけた。


「行こう。」


二人は音のする方へ進んでいく。


そして、暗闇の奥に動く人影を見つけた。


(人?)


ティシアは目を細める。


(いや……多分、遺跡のゴーレムだろう。)

二人は静かにゴーレムへ近づいた。


「アクアショット。」

ノアがゴーレムに向かって水を放つ。


水が高温の体表に当たった瞬間、急激な温度差によって表面がピキピキと音を立ててひび割れた。


「今です!」


その隙に、ティシアがゴーレムへ駆け寄る。


剣を振り抜くと、ゴーレムの上半身が切り離され、ゴトリと地面に落ちた。


しかし、ゴーレムはまだ動いていた。


ティシアは足でゴーレムの頭を踏みつける。


「ッ!」


力を込めると、頭部が砕けた。


パリン、と何かが割れる音が響く。


その瞬間、ゴーレムの動きが完全に止まった。

「ゴーレムは大抵、心臓か頭に動力源がある。ヴァレンが作ってるのもそうだった。」


「大昔のものでも、その辺は一緒で助かった。」


ノアは動かなくなったゴーレムを見下ろす。


「それに、大昔に作られたものなら、もうかなり古いですし。」


「本来の性能は出せてないのかもしれないですね。」


ティシアはゴーレムの破片を見る。


「……だとしたら、奥にもっと新しいのがいたら厄介かもね。」

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