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不死身の王子 ~死を拒まれた少年の旅路~  作者: ミミ
第三章『大きな狼』
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45.思い出の場所

「いいですよ。」


ティシアはノアを連れて街を出る。

しばらく歩くと、二人は見覚えのある平原へたどり着いた。


ノアは周囲を見渡す。

「ここは……。」


ティシアが頷く。

「うん。影狼と戦った場所だよ。」


「どうしてここに?」


「ここは、カーナさんに教えてもらった場所なんだ。」


ティシアは少し黙ってから続ける。

「……偽物の方だけどね。」


「ここ、多分カーナさんのお気に入りの場所なんだ。静かだし、街も一望できる。」


ティシアが指差した先には、街の明かりが星のように広がっていた。

「確かに、綺麗ですね。」


「最近、いろんなことがありすぎて渡せなかったんだけど……。」

ティシアは懐から小さな首飾りを取り出す。


そして、それをノアの首にかけた。

「これは……カーネーションの首飾りですか?」


「うん。ノアに似合うかなって思って買ったんだ。」


ノアは首飾りをじっと見つめる。そして、胸元でぎゅっと握りしめた。

「ありがとうです。絶対、大切にするです。」


ティシアとノアが話していると、背後から物音が聞こえた。


「……誰だ?」

ティシアは警戒し、買ったばかりの短刀を握る。


誰かがこちらへ近づいてくる。


ノアは咄嗟にティシアの背後へ隠れた。


やがて、暗闇から二人の姿が現れる。


「あれ、ティシアとノアじゃん。」

そこにいたのは、ロートとスロンだった。


ティシアは短剣をしまう。

「ロートさん、スロンさん。何でここに?」


「何でって、ここはカーナが気に入ってた場所だからな。ここに墓を建てるんだよ。」

ロートの手には、墓を作るための木材が抱えられていた。


スロンが聞く。

「君たちは何でここに?」


「ここはカーナさんのお気に入りの場所なので、最後にノアと一緒に行きたかったんです。」


「そうか。」

そう言って、ロートとスロンは墓を建て始める。


ロートは何度も口を開こうとした。

だが、何も言えない。


やがて、木材を置いたところで小さく息を吐いた。

「二人とも、すまなかった。お前らに八つ当たりしてしまって……。」


「別にいいですよ。僕がもっと強ければ、何も起こらなかったのは事実ですから。」


「私も、もっと早く影狼の弱点に気づいていれば……」

ノアは拳を強く握る。


「いや。」


ロートが二人を見る。

「結局、遺跡に入るって選択をしたのは俺だ。それに、俺たちの方がカーナと一緒にいたのに、偽物と入れ替わったことにも気づけなかった。」


ロートは視線を落とす。

「俺が二人に文句を言う筋合いはないよ。」


スロンが思い出したように口を開く。

「そういえば、最後にって言ってたけど……どっか行くのか?」


「はい。ここから北のヴォルガルドに行こうかなって。」


「ドワーフの国か。いつ出発するんだ?」


「明日の朝には出ようかなと。」


「ギルドには寄るだろ。俺たちも見送りに行くよ。」


「ありがとうございます。」


その後、ティシアとノアは先に宿へ戻り、そのまま眠りについた。


────────


翌朝。


ティシアとノアは冒険者ギルドへ向かった。


ティシアは受付嬢に一通の手紙を渡す。

「これ、ベルン村のアストさんにお願いします。」


「かしこまりました。」

受付嬢は手紙を受け取る。


「ノアさんは何かありますか?」


ノアは少し考えてから答える。

「じゃあ、カバンが欲しいです。貴重品以外は、ほとんどティシアの魔法収納袋に預けっぱなしなので。」


「それでしたら、すぐに用意できます。少々お待ちください。」

受付嬢はそう言って、ギルドの奥へ向かった。


そのとき、ロートとスロンが二人に話しかける。

「短い間だったけど、ありがとう。打ち上げも楽しかったよ。」


ロートは長剣をティシアに差し出した。

「これ、俺が使ってたものだ。魔法がかかっていて壊れにくくなってる。お前が持ってたものより、たぶんいいはずだ。」


「こういうのって高いですよね。受け取れませんよ。」

ティシアは首を横に振る。


「俺はしばらく戦い方を考えるつもりだ。一人減っちまったからな。」


ロートは自分の剣を見る。

「それで、今の武器も変えることにした。だから……ティシアに使ってほしい。」


「ですが……。」


スロンがロートの肩を叩く。

「こいつなりの謝罪だ。受け取ってくれ。」


「……じゃあ、ありがたくいただきます。」

ティシアが剣をしまったところで、受付嬢が戻ってきた。


「お待たせしました。こちらがカバンです。」


ノアはカバンを受け取ると、目を丸くする。

「このカバン、私たちが持ってる収納袋よりも容量が大きいです。いいんですか?」


「はい。本来、ギルドからお渡しする予定だったものは、これよりも高価な品でしたから。」


「さらに、皆さんには新しい冒険者証を渡しておきます。」

受付嬢は四人に、それぞれ新しい冒険者証を手渡す。


ロートとスロンの冒険者証には――B。


そして、ティシアとノアの冒険者証には――Dと書かれていた。


「……Dランク。」

ティシアは自分の冒険者証を見つめる。


「ティシアさん、ノアさんのランクは以前言ってたとおりFからDに、」


「ロートさん、スロンさんのランクはCからBに上げさせてもらいました。」


ロートが首をかしげながら聞く。

「俺らのも上げていいのか? 影狼の討伐は、実際には失敗したわけだが……。」


受付嬢は頷く。

「はい。ですが、ギルドが評価しているのは討伐の結果だけではありません。」


「……?」


「遺跡の調査、討伐隊への参加、そして影狼との戦闘で得られた情報。皆さんが命を懸けて行動したことも含めて判断しています。」


「なるほどな。」


スロンが冒険者証を眺める。

「カーナのこともあったし……俺たちだけ何もないってわけにもいかないか。」


「ギルド一同、これからの皆さんの活躍をお祈りしております。」

受付嬢はお辞儀をすると、元の持ち場へ戻っていった。


「私たちも、そろそろ出発するです。」


「ああ。じゃあな。」

スロンが手を振る。


「またここに来るときは、連絡しろよ。」

ロートがティシアの背中を軽く叩く。


「うん。またね。」


ティシアとノアは街を出た。

「ティシア、次は何もないといいですね。」


「そうだね。」


ティシアは少しだけ振り返る。

「……僕の問題が終わったら、ロートとスロンに僕のことを話しに行くよ。」


「私も、あれだけ仲良くなったのに、秘密を抱えたままなのは寂しいですから。」


二人は北へ向かって歩き始めた。

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