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不死身の王子 ~死を拒まれた少年の旅路~  作者: ミミ
第三章『大きな狼』
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44.血の味が消えない

ティシアとノアは水路の掃除を行っていた。


ティシアは暗い水路を見て言う。

「ノア、ここ照らして。」


「わかったです。」

ノアは手をかざし暗い水路を照らす。


「そういえば、どんな依頼を受けたですか。」


「えっと、木材に石材、それから薪の運搬だね。」


「運搬だらけですね。」


「体を鍛えられるのを選んだんだ。」

「影狼との戦いで、まだまだ自分の力が足りないって思ったから。」


「無理しすぎはよくないですよ。」


「気を付けるよ。」


しばらくしてから、ティシアが口を開く。

「そろそろ、この街を出ようかなって思うんだけど、どう?」


「そうですね。街に長くいると、アルカディアから追手が来るかもです。」


「必要なものは買ってあるから、明後日出発にしよう。」


「了解です。」


ティシアとノアは、その日の依頼をすべて終えた。

気づけば、すっかり日が暮れていた。


────────


二人は宿に戻り、魔法の練習をする。


ティシアが魔力を身体の中で循環させていると――


ふと、違和感を覚えた。

「ノア……僕の身体の中に、何か変なものを感じるんだけど。」


ノアはティシアの身体に触れる。

「これは……刻印だと思うです。」


「刻印?」


「身体に刻まれた魔法陣のことです。魔力を操れるなら、そこに魔力を流すことで、刻印に込められた魔法を使えるです。」


「不死身の効果かな?」


「不死身とは別の効果だと思うです。不死身なら、私が最初にティシアに触れたときに気づいていたはずです。」


「……そうか。」


ティシアは自分の身体の中に意識を集中させる。

「魔力を流せばいいんだよね。」


「はいです。でも、何の魔法か分からないので、気をつけてくださいです。」

ノアは一歩下がる。


「分かった。」

ティシアは刻印に魔力を流そうとする、だがうまく流れない。


「ダメみたい、弾かれた。」


ノアは刻印に意識を集中させる。

「……まだ使えないみたいです。」


「どういうこと?」


「刻印が身体に馴染んでいないのかもしれないです。時間が経てば、使えるようになると思うです。」


ティシアは少し肩を落とす。

「そうなんだ……。」


「じゃあ、そろそろ魔法の使い方を教えるです。」


ティシアは顔を上げる。

「いいの?」


「はいです。ティシアは成長が早いので、大丈夫です。」


「じゃあ、お願いしようかな。」


────────


「今日はここまでですね。続きはまた明日で。」

ノアは手を叩いて立ち上がる。


「ありがとう、ノア。おやすみ。」

ティシアは明日の準備を済ませ、ベッドに入ろうとする。


「……ノア?」


ノアは部屋を出ようとせず、その場に立っていた。

「ノアの部屋は隣だよ。」


「……まだ、ちょっと怖くて。一緒に寝てもいいですか?」


ティシアは少し驚いた。

「……影狼のこと?」


ノアは小さく頷く。

「……はいです。」


「そっか。」


ティシアは少し笑う。

「じゃあ、今日は一緒に寝ようか。」


ノアがベットに入る。気まずい空気の中ノアが口を開く。

「影狼を倒す前……偽物のカーナさんに告白されてましたよね。」


「そうだね。」


ノアは顔をそむける。

「……もし、本物のカーナさんだったら、どう返事する予定でしたか?」


「……僕にはやらないといけないことがある。だから断ってたかな。」


「そうですか…おやすみティシア。」


「おやすみ。」


────────


翌日、ティシアとノアは武器や食糧を買うために外へ出た。


「あれ、食べませんか?」

ノアが指をさす。


「あれって、ケバブのこと?」


「はいです。見慣れない物だったので。」


「昼食はまだ取ってないし、食べようか。」

二人はケバブを買い、並んで食べ始めた。


「おいしいです!」

ノアが嬉しそうにケバブを頬張る。


「……。」

ティシアもケバブを口にする。


「……ティシア?」


「ん?」


「どうしたですか?」


「どうしたって?」


「さっきから、全然食べてないです。」


ティシアは手元のケバブを見る。

「……ああ。」


「お腹いっぱいですか?」


「いや……。」


ティシアはケバブを一口食べる。

「……なんか、変な感じがする。」


「変?」


「うん。肉を食べてるだけなのに……。」

ティシアは少し黙る。


「実は、────」

ティシアはノアに、影狼の記憶を見たことを話した。


「それで……肉を食べると、なんというか……血の味がする気がする。」


ノアは持っていたケバブを見つめる。

「……。」


「ごめん。せっかく買ったのに。」


「謝らなくていいです。」


「ティシアが悪いわけじゃないですから。」


ノアは少し考え込む。


そして、ぱっと顔を上げた。

「肉の感触がダメなんですよね?」


「そうだね。匂いにはあまり反応しなかった。」


「じゃあ、卵や大豆をたくさん買うです。あとはひき肉とか……肉の形が残ってないものを使って……。」

ノアは指を一本ずつ折りながら、食べられそうなものを考えていく。


そんなノアを見て、ティシアは微笑んだ。

「ありがとう……ノア。」


ノアは二人分のケバブを食べながら買い物を続けた。

気づけば、あたりはすっかり暗くなっていた。


その後、いつも通り魔法の使い方を教えてもらう。


練習を終えたところで、ティシアが口を開いた。

「ノア、行きたい場所があるんだけど、いい?」

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