2.神の扉
「せいぜい足掻いてみろ。」
その瞬間、成人式の開始を示す鐘がなった。
(このまま成人式へ向かえば、本当に殺される。)
(信じられるかは分からない。でも、他に道はない。)
私は地下へ続く階段を駆け下りた。
神の扉ーそれは誰もが入ることを禁じられている神が住む部屋につながっていると言われている。
「はぁはぁ…ここが神の扉、」
石造りの部屋の中央に、白銀の巨大な扉が静かに佇んでいた。
表面には翼を広げた女神が彫られており、その瞳だけが今にも動き出しそうなほど精巧だった。
――扉を開かんとする者よ。王の血を捧げよ。
女神が持っている杯の絵に小さな穴があった。
「ここに指を入れればいいのか?」
恐る恐る指を穴へ差し入れた。
次の瞬間、
「っ!」
鋭い痛みが指先を貫く。
針のようなものが血を求めるように突き刺さっていた。
そして扉が大きな音を立てながら開いた。
その時だった。
「誰かいるのですか?」
廊下の向こうから聞き慣れた女性の声が響く。
エルミ先生だ。
私は思わず息を呑んだ。
ここで見つかれば終わりだ。
逃げ場はない。
エルミ先生ですら、私を生贄に差し出す側の人間かもしれない。
もう誰も信じられない。
私は振り返ることなく、開いた神の扉へ足を踏み入れた。
その瞬間――
バタン。
重い音を響かせ、扉が閉じた。
中は薄暗く、冷たい空気が漂っていた。
部屋の中央には巨大な像があった。
そこに刻まれていたのは、翼を持つ者が、翼を持たない者の胸へ刃を突き立てている姿。
「……なんだ、これは」
王国では、神は民を救った存在だと伝えられている。
なのに、この像が表しているものは――まるで逆だった。
(ここは……何のための場所なんだ?)
私が像を見上げていると、その上に誰かが立っていることに気づいた。
「あの……!」
声を張る。
「あなたは……誰ですか?」
「お前は……」
暗闇の中から、低い声が響いた。
「今回の生贄か。」
その言葉に、背筋が凍る。
「なぜ……それを?」
姿を現した者は、ゆっくりとこちらを見下ろした。
「我はアルジャ。」
「かつてこの地に繁栄をもたらした者だ。」
「……お前たちが神と呼ぶ存在だ。」




