55.裏側
全ての出来事には意味がある。
それは何者かが何らかの指標に基づいて
行動を起こした、もしくは行動を拒否した
結果であるからだ。
放たれる言葉だってそうだ。
ただ素直に溢れ出る言葉。
相手の感情を揺さぶるための言葉。
相手を謀るための騙し絵のような言葉。
そして、あえて選ばれたであろう沈黙ですら―――
良い結果、悪い結果・・・
それが何を齎すにせよ、その放たれた言葉や
あるいは放たれなかった言葉の全てに理由と
意味がある。
だから私はその言葉の裏側を想像する。
何故、その時にその言葉が紡がれたのかを
想像してみる。
例えその思考を常人に理解することが
困難である程の狂人の戯言であったとしても
その放たれる言葉には必ず意味がある。
その狂ったフィルターを通して生成された
言葉であっても尚、その者だけの歪んだ
論理がそこにはあるはずだからだ。
言葉は一例にすぎず、全ての出来事の
裏側には必ず意味がある。
私はその裏側を覗き見る才があった。
起こった事象の全てからその当事者の思考の
裏側を容易に汲み取ることが出来た。
謀を以て謀を討つ―――
出来事の裏を、相手のその思考の裏側を読んで
利用する私の戦術は私が最も得意としているもの
でもあるし、そしてその洞察力はついさっきまで
ただの一度として私に敗北を許すことはなかった。
それなのに・・・
この不気味な謀の裏に隠された
真意だけはその私の眼を以てして
一向に見えてこない。
不気味・・・
そう、どこまでも不気味なんだ。
だって、こんなことをして・・・
それで一体誰が何を得るって言うの??
第2王子が覇王子に合流するのには大して時間が
かからなかった。
「全く・・・」
「あんな子供だっていうのに強すぎだよ・・・」
もう、お手上げと言うように手をヒラヒラさせながら
合流した第2王子は兄や弟たちのただならぬ気配に
気が付いた。
「どうしたの?」
無言で差し出されたそれを目にすれば
その気配の理由が解る。
中には短く、ただその一文だけが無機質な
文字によって刻まれていた。
――― ディーエル家を滅せ ―――
「まさか、あいつじゃねぇよな?」
ほんの数日前には王位を争っていたとしても
やっぱり仲が良い姉を疑いたくはない。
だけどあまりにも度し難く、まるで意味の解らない
理屈の通らないその一言に焦燥しきった覇王子は
思わず誰に問うた訳でもない事を呟いた。
「それはない・・・と思う」
瞬時に第2王子はその言葉を否定した。
その言葉に少し顔色を明るくする兄にかける様に、
まるで自分自身を納得させるかのように
言葉を続けた。
「だって、姉さんには理由がない」
もし自分自身が王位につこうというのであれば
理解はできる。
この国で一番と言って良い程に人望を集める
あの妹を利用しようというのであれば話は
簡単につながる。
その力を削ぎつつもそれに恩を売ると言うのであれば
それはむしろ唾棄すべき程の良策ともいえるだろう。
だけど姉さんは王位には決して就こうとしていない。
本気であの妹を王位に就かせようとしている。
その最愛の存在を奪うことに一体何の意味がある?
もし自身が妹の一番になりたいなんて歪な感情が
あったとしても尚、それでもそれはあまりにも
理性にかけた行動であってあの姉がそんな行動を
起こすはずが無い。
でも、そう見える事すら策略であったとすれば・・・
だいぶ時間を置いて、その間にどんな激闘が
あったかは解らないがその代名詞たる
真紅のドレスをボロボロにしてあられもない
姿で合流した姉の姿に弟たちはパニックに陥った。
「と、とりあえずお前、これ着ろ!!」
「もし、この場で姉さんの素肌を目にした者が
いたのであれば今すぐその両目を抉り取れッッ!!」
「こらこら・・・」
「無意味に兵力を減らすんじゃないの」
最初に授かったやっぱり大事で愛おしい弟から
渡されたマントでその肌を隠しつつ
自身の参謀を担う可愛い弟の意味不明すぎる命令を
却下しつつも初めての敗北に心を引き裂かれて
思わず立ち止まって涙したくなる程の胸の痛みが
ほんの少し和らいだ。
うん、やっぱりこの子たち最高だわ。
ごめんなさい・・・不甲斐なく負けて本当にごめん。
でも、あんたたちが無事で本当に良かった・・・
色んな感情にぐちゃぐちゃになりながら
血の王女は弟たちの一人一人を愛おしそうに
抱きしめた。
気持ち悪すぎる・・・
その命の意味は理解不能が過ぎる。
それでも発せられたこの偽りの勅命は
誰が何のために仕掛けたものなのだろうか?
別に戦闘描写を書きたかった訳じゃないことに
気が付いて考えていたストーリーを
大幅にカットしました。
ある意味でありがたいこととも言えるのですが
公私ともに多忙を極めて時間が捻出できず、
あまりにも遅筆すぎてこのままじゃこの話、
いつまでたっても終わらないと一人で勝手に
焦燥していましたが、ついでに前作同様に
書きたかった話を大幅にカットして
ラストに向けて突き進む事をようやく
決心することができました。
今度こそ書きたかった話の全てを
書いてみたかったのですが小説を書くと
言うことは本当に難しいのですね。。。
あと数話で終わる予定ですがブックマークや評価で
応援して頂けますとと幸いです。




