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53.審議


『何か・・・最後の・・・』

『ちょっと・・・』

『いや、何か・・ちょっと、反則だった様な・・・?』


「何でぇっ!?」


アイルはヴィヴィのその言葉に驚愕して

振り返った。




『こんなのやりたい放題じゃんっ!!』


戦う以上、犠牲が出ることはやむを得ない。

それでもなるべく犠牲者が出ないように

どうにか加減して戦いを続けていたイヴィ―は

展開したモンショの結界に目を輝かせた。

ひょっとするとこれしちゃったら皆死んじゃうかも?

とやりすぎない様に抑えていた魔力を開放すると

遠慮なく前線にいた近衛兵を残らずその魔力で

焼き払った・・・はずだった。

直ぐにその目は曇ることとなった。


『えぇ~、なにこれ・・・』


その放たれた獄炎に結界が音を出して作動してみれば

誰もが頬けた様にして無傷であった。

その作動した結界に邪魔されて致命傷を与えることが

出来ない。

これはそういうもんなんだって解ってはいるけれど

今、確実に自分が死んでいたことを確かに理解して

戦意を喪失し、その場にへたり込む者も僅かながら

いても、それでも相対する敵の数は全く減って

いなかった。

その全員の心を折るなんて途方もない道筋だ。


これじゃ、むしろマイナスじゃんっ!!


抗議する様にモンショにイヴィ―は目を移した。


んんっ・・・とモンショはその目線に咳払いをした。


まぁ、それはそーなると言うべきか、むしろ

そうなるための魔法ではあるよな、これは・・・

適当に模倣してみたが、この魔法は何とも矛盾を

孕んだあまりにも危うすぎる魔法ではあるようだ。


『あ、慌てるでないわ・・・』

『ふん・・・』

『先のことなど、ワシには全てお見通しよ・・・』


どうにか外面を取り繕って術式が展開されて、

致命傷を受けたと判断された者たちを慌てて

その影に引きずり込んだ。


『この場ではワシこそが絶対の審判者である・・・』


ちょっとそれっぽく威厳を保つようにして

体制を取り繕ったモンショの姿に

イヴィ―は再び目を輝かせ、相対する者たちは

その目を恐怖に濁らせた。


・・・優れた知性を自身が持っていることは

当然に自身で解りきっている。

だけど、ほんのちょっと、ちょっとだけだけど

この状況は思っていた事の斜め上を行き過ぎている。


オリ―・・・・

どうか、どうかワシにこの場を収める

力をくれっっ!!




「本当に・・・」

「大したもんだっ!!」

「認めてやる、てめぇだけは・・」


覇王子の剣はその豪胆な性格なれど

あまりにも、ただの一呼吸すら置くことも

できない愚直すぎるその気質を置いても尚、

相反する相手に向けるその精錬を極めた至高の武は

今まで、その相対する全ての者の全てを穿ってきた。


だが今対峙するその少女はその全てを穿つはずの剣技を

残らず刃やその身で受け止めて見せた。


貪欲にただこの戦いに勝利を・・・

対峙する相手の首を求め、自らの傷など

顧みないその自らの精錬された武と対極の武を、

野生を極めた様な相対する少女の武にただただ舌を巻いた。



・・・だが


ちょっと誘いの様な剣を振ると、それに全力で

乗ってくるその剣は覇王子にとっては

その自らの性格を置いても、あまりにも愚直すぎる。


「お前・・・」

「何ていうか、勿体ないよな・・・」


ちゃんと剣技を学んでこれば、もしも

師に恵まれていたならば、もしそうあったならば

自らの首に届いていかもしれないその刃を、

誘いに乗って大振りに振るわれたアイルのその剣を

外すと、盛大に空振りしてそのまま回転する様にして

隙をみせたアイルに覇王子は呟いた。


「お前みたいなやつが傍にいてくれればな・・・」


更なる武の頂を共に目指すことが―― 


「がはッッ!?」


覇王子から苦悶の声が漏れた。


その最強の武の、ただの僅かな油断すら

していなかったはずの意識の外から振るわれた

その最強の武を以てしても感知できなかった

察知することもできなかった打撃に覇王子は

何が・・・!?

と思う前に意識を失い、その自らの影に引きずり込まれていった。





「何でぇっ!?」

「だって・・だって、これだってあなたが私にくれた

 ものでしょ・・・??」


こちらに振り返るアイルの姿につられる様に

口角を高くするヴィヴィはまぁ、それもそうかも?

と身内贔屓な激甘なジャッジを下した。


ようやく昨日の雪辱を果たし、あるいはその仇を

取れて思わずにんまりと微笑んでいたアイルは

かけられたその言葉に思わず驚愕しても尚、覇王子の

脳天を意識の外から打ち抜いたその尻尾を

ブンブンと振り回していた。


その時下された神竜のその審判はアイルが

自らの力だけでこの国で最強の武を誇るものを

破ったことを意味していた。





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