違和感
取りあえず用意された二階の部屋の窓からキャロルは外を眺めていた。
外には狩人らしき男達が四・五人馬車の周りを取り囲んでいる。おそらく、さっきヴラドと話していた太った男の護衛だろうが、雰囲気から察するにあまり良くない客だという事は分かる。
大体、日が暮れた危険時間帯に人目をはばかって訪れるというのもおかしなものである。
「何であんな客がヴラドさんに?」
しばらくするとあの客が店から出て行き、馬車に乗り込むと、馬車は漆黒の闇の中を消えていった。
「キャロル?」
それと同時に後ろから呼び止められ、キャロルは短い悲鳴を上げた。
「どうしました?」
「あっ・・・いえ、何でもないです・・・」
あまりあの客の事には触れない方がいい・・・そんな思いから彼女は無理に笑顔を作ると思わず顔を伏せた。
沈黙がしばらく二人を包み込む、何か言った方がいいのかと思いはじめた時、不意にキャロルは後ろから抱き締められ、固まった。
「大丈夫ですよ。もう、店は閉めましたから・・・誰も来ません」
「・・・・・・・・」
本来なら嬉しすぎてパニックを起こしそうなシチュエーションだが、心は以外にも冷静だった。
(何? 何だろう・・・またあの違和感だ・・・)
何があるわけでもないが、心の片隅に妙な雑音が響いている感じがする。
逞しい男の腕に抱かれているのだから、もっと安らぎを得てもよさそうなものなのに・・・
「あっ! あの! それじゃ夕食の続きにしましょう。ほら、まだ全然食べてませんものね」
ヴラドの腕からスルリと抜け出すとキャロルは大袈裟に明るく言い放ち、下の階に小走りで下りて行った。




