襲撃者
外の夕日はいつしか沈み、窓から覗く空が漆黒の闇に染まっている。
しばらく沈黙していると不意に部屋の壁が外から大きく叩かれた。
「何!?」
魔族から身を守るために作られた、分厚い鉄板入りの壁が叩かれるたびに歪み、ひびが広がる。そして何度かの衝撃の後、壁は内側に吹き飛ばされ、白い粉塵が部屋中に充満した。
「っ…これって…」
ピリピリとした緊張が広がり、塵が舞う室内に筋骨が隆々とした巨大な者が足を踏み入れた。頭には二本の角、背には黒々とした翼が生えている。
「こいつっ!魔族?どうして結界に守られた屋内に?日だって暮れたばかりで・・・」
まるで見た事が無い…体長は3メートルを超える。キャロルが愕然としているとレニが小さく呟いた。
「狩人殺し…」
「狩人殺し?うそっ…これが…」
狩人殺しとは魔族の中で人間の狩人を専門に始末する特殊体である。
A級以上の狩人が命を落とす理由が狩人殺しと呼ばれる魔族の仕業であった。いわば魔族界の狩人と言った所だろう。
漆黒の翼を携えた魔族は二人の姿を見つけると、透かさず飛び掛かった。
間一髪で避けたキャロルの変わりにテーブルが粉砕される。
「ちょっ…とんでもなく強そうなんだけど!」
「こっちですキャロルさん!」
いつの間にかレニが壁に作られた小さな隠し扉を開いていた。人一人がやっと通り抜けられるその扉の向こうに、下へと続く階段が見える。
急いで滑り込むと同時に魔族が通路に飛び込んできた。
「何て強引な奴なの!」
小さな入り口に阻まれてもなお、手を差し伸ばす魔族を後ろに臨みながら二人は狭い石畳の階段を駆け下りた。
「キャロルさん。運動神経良いですか?」
「え?」
小さな木の扉をくぐるレニの後をキャロルが追う。
「わ…悪い方じゃないと思うけど…」
「よかった」
そう言って潜り抜けた先でレニが待っていた。
「これ、走らせて下さい!」
笑顔のレニにキャロルは間髪いれずに突っ込んだ。
「オイ」…と
小さな扉の先に広がる、石造りの寒々とした車庫の真ん中に見たことも無い乗り物が鎮座していた。




