痛い質問
自分を取り戻したのは料理の皿が半分以上片付いた時だった。
目の前には唖然と自分を見つめるレニの姿がある。
「えっ…えっと…えっと」
ある程度空腹が満たされたキャロルは「おほん」と咳払いをするとフォークを置き、いきなり淑やかにナプキンで口を拭った。
紅茶を一口啜り何事もなかったかのように目の前の少女と向き合う。
「あ…あなた料理上手ね。えっと両親…あっ…父親がハルトだっけ…えっと…お母さんは?見たところ十代半ばだけど…」
とりあえず無難な質問で獣の如き勢いで他人の家の食事を喰らっていた自分から話を逸らす。
「ママは…知らないんです。レニを生んですぐに居なくなっちゃって…」
その場に重い空気が淀んだ。
(うおおおい!!!やっちゃった!やっちゃった!私とんでもない事聞いちゃったぁ?!!!)
最悪な会話の選択に顔を引きつらせながら、キャロルは頭の中で持ちうる全ての考えを総動員して他の話題を探した。
「わっわわわ…私はねこう見えても一応しがないフリーサポーターをしてるんだけどね……」
その言葉にレニが首を傾げる。
「サポーターが何で一人で夜の街に?」
「!!!!!!!!!!ッッッ」
ゆっくりとカップを下に置くとキャロルは不気味な笑みを浮かべた。
「自称A級狩人にスカウトされたんだけどね・・・あいつ、ターゲットの魔族が出て来たら逃げたのよ」
お経のように静かで恨めしく呟くとキャロルは「ふふふふふ」と低い笑いを零した。
昨晩の事を口にするだけで怒りが沸々と込み上げてくる。
怒りに打ち震える手の中でカップがカタカタと音を立て、中の液体がちゃぷちゃぷと揺れていた。
「?…キャロルさ…」
「あのホラ吹き野郎のゲスの変態があぁぁ!!!この私をエサにして…しかも逃げる間際に尻触ってよおぉぉ!」
感極まったキャロルの片足がバンッとテーブルの上に乗せられた。「パンツ見えてますよ」というレニの言葉はおよそ聞こえてはいないだろう。
大声という形で取りあえず怒りを発散させたキャロルは「ふぅ」と息を整えた後、椅子に座りなおすと気を静めるために紅茶を再び啜った。
「お陰で今は無職の根無し草よ。まぁフリーのサポーターなんてこんなもんよね。何かに特化してる訳でもないし…大した経歴もないしね…」
広いキッチンを見回しながらキャロルはデザートに出されたフルーツの盛り合わせからブドウを一つ口に放り込んだ。
「…にしてもあなたのお父さん稼ぎがいいのね。クラスはどれぐらいなの?『A』ぐらい?」
「えっ?あっハルトは『特S』です」
「ふぅ~ん特S?なかなか…………」
短い沈黙…それをキャロルの叫びがぶち破った。
「とっ…ととととと特Sぅ?」




