最高報酬依頼
こんなに学習能力がない生き物は初めてだ。
心底そう思っているとリリアンはキャロルに「あの……」と詰め寄った。
「何か、手違いがあったのでしょうか…」
「えっ! いやっ! えっ………とねぇ」
ゴールドはともかく、世間の噂を信じてあんな男に依頼をしてしまったリリアンが哀れに思えて「依頼は受けない」などと吐き捨てる事が出来ずにキャロルは答えを探した。
そして考える事数秒。ダメもとでスタンバっているハルトを呼びに行こうかと思い始めた時………後ろから響いた音にキャロルは振り向いた。
唸りを上げる鋼鉄の騎馬。そして白いコートに身を包むサングラスの騎手。
その騎馬が三人のもとで止まるなりキャロルよりも早く動いたのがゴールドだった。
「おっそいざますよ。ミーのボディガードならもっと早………」
言い終える前にハルトの靴底が顔面を直撃し、ゴールドは後ろに吹っ飛んだ。
(こいつ、笑いが取りたいのかしら)
仰向けで倒れるゴールドを見ると、もはや彼が何をしたいのか分からない。
「触んじゃねぇよ。変態野郎」
バイクから降りるハルトにキャロルが詰め寄る。
「あんた、何でここに居るのよ」
「レニに言われたから仕方なく来てやったんだよ」
「レニ?」
「やっぱりテメェを変態野郎と二人きりにしたら心配だとか言ってな」
舌打ちをするとハルトは周りを見渡し、キャロルの腕を引いた。
「帰るぜ。変態野郎の依頼とやらは断ったんだろ」
「ちょっ…えっ? ちょっと!」
変態ゴールドはどうでもいい。しかし、頼りなく沈むリリアンを見ると、申し訳なくてこのまま見捨てる事などできるわけはない。
「ちょっと待って! せっかく来たんだから、あの子の依頼、受けてあげてくれないかしら」
「はぁ? ふざけんなよ。奈落の下に降りるってのがどれ程危険か知ってんのか? どうせ大した依頼料でもねぇのにレニを危険にさらせるかよ」
「そっそれは、そうだけど………」
言い合う二人の間に割って入って来たのがリリアンだった。
「あのっ…一億払います。ですから…」
「いっ一億ぅ?!」
昏倒しそうになったキャロルだが、ハルトは鼻で笑いながらリリアンの提示したその金額を簡単に切り捨てた。
「一億じゃ足りねぇよ。奈落に入って得る正規の報酬ってのはな『メートル数×一億』の計算なんだ。下に行けば行くほど太陽の光りも届かねぇ上に、強え化け物の出現率も高まる。あんたの落し物は、その計算でも手放しがたいもんなのか?」
この国の標高は一千メートルだ。そこから土台を差し引いた高さが下に眠る遺跡の高度になるのだが、伝承では遺跡の最下層まで八百メートルの距離があるらしい。
一歩間違えるととんでもない額に跳ね上がる上に、命を掛ける狩人の報酬は絶対だ。




