変態からの依頼
「はい。どうぞ」
レニの温情で直接庭のテラスに通されたゴールドは暖かい紅茶を差し出す少女を放心状態で見つめていた。対面にはしかめっ面のキャロルの姿がある。
「と…特Sのハルトに娘が居るとは聞いていたざますが…性格が…」
「似ても似つかないわよねぇ」
無感情に答えながら(それは同感だわ)と心の中で呟く。
「はいどうぞ」
ゴールドの隣に立つボディーガードにも満面の笑みで紅茶を差し出すレニを見ているとあれ程までムカついていた自分が馬鹿らしくなり、キャロルは仕方無しに変態の言葉を聞く事にした。
「にしてもハルトの家まで探し当てるなんて、死に急ぎもいい所だわ」
「あたりまえざます。一本二億の結界柱を四本も立てるなんて、そこらへんの狩人には出来ない事ざますからね」
その言葉に思わず飲みかけた紅茶を吹いた。
「なっ…2…2億? えぇ! 2億? …よ、四本って八億うぅぅぅぅ?」
再び昏倒しそうになったが、ゴールドのムカツク一言でキャロルは意識を留めた。
「なぁんざますかぁ? 知らなかったざぁますかぁ? ふぉっふぉっふぉっ…」
その瞬間凄まじい平手打ちが頬を直撃し、対面するゴールドは紅茶を吹きながら盛大に地面に吹っ飛んだ。
「あんた! マジでハルト起こすからね。冗談抜きでぶち殺されるわよ!」
面白いほど吹っ飛んだゴールドに唖然としながらレニはキャロルと目を合わせ、首を横に振った。どうやらまだ『ハルト』が出てくる兆しはないようだ。
「それで、ハルトに何の用なのよ」
真っ赤な手形の残る頬をさすりながらゴールドは再び席に着く。
「ユ…ユーの無礼はこの際許すざます」
(この変態! まだ上から目線か?)
そう突っ込みながらもキャロルは必死で怒りを堪えていた。そ
んな空気を察したのか、レニが変わりに用件を聞く。
「切実な何かがあるんですか?」
「聖女様! そうなんざます! とても切実な悩みをミーは持ってるんざますよ!」
ころりと態度を変えたゴールドは隣のボディガードに目配せをした。反射的にボディガードが芸術的な土下座を疲労する。
「え? えっと…」
反応に困っているレニの気持ちはいざ知らず、ゴールドはふんぞり返りながら話し始めた。
「特Sのハルトに依頼をしたいざます!」
驚きの言葉に思わずキャロルはレニと顔を見合わせた。




