変態と聖女様
「なっ! ユー! ミーを見るなり変態とはなんざますか!」
相変わらず厳ついボディーガードを従えながらゴールドは奇声を張り上げた。
「ゴールド?」
「ダメよ! レニは見ちゃダメ! あんな変態、見ただけでレニが汚れちゃうわ!」
レニの視線を遮るかのように目の前に立ちはだかるとキャロルは持っている荷物を手当たりしだい投げつけた。
「なっ! 何するざますか! なっ! 痛った! いたっ! いたたた! たっ…」
どさくさに紛れてそこら辺に転がっている小石やレンガ、そしてしまいには鉢植えを投げつけると………
「ノオォォォォォォォォォォン!」
最後の鉢植えが見事に股間に命中し、ゴールドは情けない悲鳴を上げながら地面にうずくまった。それを両脇のボディーガードが急いで介抱する。
「信じられない! あんたストーカー? とうとう本性を現したわね! この変態!」
レニを背後に庇いながらキャロルは荷物だけを拾い上げると門の中に滑り込み、鍵を閉めた。
「あの、キャロルさん」
「大丈夫よ! レニの事は私が守ってあげるから!」
「でも、すごく痛そうですよ?」
「あれは演技! 演技なのよ! ちょっと油断したら突き飛ばされておとりにされて尻掴まれゃうからね!」
「それ、キャロルさんがされた事ですか?」
「そうよ! あの変態が私を餌に…」
そこまで言ってキャロルは口を噤んだ。
そうだ。レニも小さい頃に魔族の生餌として殺されかけたんだ。
後ろでは餌という言葉に反応したのかレニが複雑な表情を浮かべている。
しかし、そこでまた空気の読めない変態の声が響いた。
「キャロリン! 特Sのハルトのサポーターのユーにお願いがあるんざます! ミ…ミーがした事は部下達が謝るざますから…」
(せめてアンタがあやまれぇ!)
謝られても許すつもりは無いが、この期に及んでまだ自分で責任を取ろうとしないゴールドにキャロルは再び小石…いや、かなり大きな岩を両手で持ち上げた。
「ひっひいぃぃぃぃ!」
透かさず足をすぼめ、股間をガードしながらゴールドが悲鳴を上げる。
ガードされると尚もそこを狙いたくなった彼女が的をしぼった瞬間…
いきなり目の前にレニが歩み出て思わず踏みとどまる。無理な体勢で踏みとどまったキャロルの腰がグキッと嫌な音を立てた。
「レ…レニ! 何やってるの!」
門を開く少女にへっぴり腰のキャロルが驚きの声を荒げる。
「お話だけは聞いてあげませんか? 何かすごく必死だから…」
差し伸べられた手を見つめながらゴールドはレニの顔を見つめた。
「せ、聖女様。聖女様ざます! ユーは…聖女様ざますぅぅ!」
差し伸べられたレニの手を感動に浸るゴールドが触れようとした時、キャロルは腰の痛みを抑えて少女の体を引き戻した。
「触んじゃないわよ! この子、こっ…この子を誰だと思ってるの?」
ボディーガードと顔を見合わせるとゴールドはキッパリと答えた。
「聖女さ…」
「ハルトの…娘よ!」
答えを聞くのさえ馬鹿らしくなり、言い終える前に思わず答える。
「………」
「……………」
しばしの沈黙を一陣の風が吹き抜け、この世の終わりとばかりの悲鳴がこだました。
「ノオオォォォォォォォォォォォン!!!!」




