白騎士のハルト、黒騎士のヴラド、そしてパッチもん…基、変態王子ゴールド
「んで、アンタがあのハルトをめでたく落とした補助士ってわけか。なるほどねぇ」
「お…落としたって…」
キャロルの全身を見つめるといきなりバドルの瞳から涙が溢れた。
「ちょ…ちょっと何?」
歯を食いしばり、溜まった涙をゴクリと飲み干しながら「ちくしょぅ」と小さく呟く。
「俺の理想スタイルを形にしたコートを着こなせるバディの女がこんな間近に居たなんてよぅ…羨ましいぜぇ」
「い、行こうレニ」
進もうとしたキャロルの背後からバドルが横に付いた。
「なっ何?」
「俺が家まで送ってやるよ。おめぇらに何かあったらハルトにぶっ殺されかねねぇからな」
「ちょっと別に大丈夫よ!」
「何を言ってやがる! おめぇらさっき三流狩人に絡まれてたろ!」
(あんた見てたのかい!)
そう心で叫びながらキャロルは訝しげな目でバドルを見上げた。
それに気付いた彼が慌てて手を振る。
「おいおい! そんな目で見んなよ! 俺も助けようとしたんだぜ? でもよぅ、ヴラドに先を越されちまったからなぁ」
その名前にキャロルの足が止まった。
「ん? 何だ? 犬のクソでも踏んだか?」
「ヴラドって大っきな銃を背負った背の高い人ですか?」
キャロルの質問を代弁するかのようにレニがバドルを見上げる。
「おう。ここら辺じゃ結構名の知れたS級のハンターでよ。あんまり素性は知らねぇが、狩人たちの間じゃ有名だぜ。服の色をとって黒騎士のヴラド、白騎士のハルトってな。そういや金の王子ゴールドってのも居たが、あいつぁパッチもんだな」
「…ヴラド…」
噛み締めるように呟いたキャロルの言葉を聞き逃さなかったバドルが顔を眺める。
「おいおい! 女神さんよぅ! 顔が赤いぜぇ!」
その言葉にキャロルの顔がさらに真っ赤に染まった。
「ちょっ!! 何なのよあんたは! 大体女神って…私にはキャロルって名前があるのよ!」
繰り出された拳をヒラリと避けるとバドルはレニの肩を掴み、キャロルに聞こえる声で囁いた。
「レニちゃんよぅ。ハルトに言っとけぇ? 欲求不満にさせっとヴラドにとられちまうぞ。ってなぁ」
「欲求不満? 欲求不満って何ですか?」
「だからよぅ…」
「レ、レニも聞かない! そこのオジサン! レニに変な事吹き込まないでよ! 大体私とあのバカ男はそんなんじゃ…」
がっはっはっと笑うとバドルはレニの頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「ハルトをバカ男呼ばわりか? そんでも生きてるって事は間違いなくアンタがお気に入りってわけだ! レニちゃんよぅ折角の母ちゃん候補手放すんじゃねぇぞ」
「はい!」
レニが顔を赤らめながら大きく頷いた。
「レニ! 返事しなくていいの! お姉ちゃんだって言ったでしょ!」
騒がしいほどに3人で言い合っていると、いつの間にか家のすぐ近くにまでたどり着いていた。
それを確認するとバドルは豪快に笑いながら後ろに飛び退き手を振った。
「とりあえず、ヴラドはやめとけよ! あいつぁ確かに物腰がいい紳士だが一癖あるぜ! 背は小っせぇがハルトもなかなかいい男だろ!」
遠ざかっていくバドルに振り返すレニの手を押さえながら、キャロルは顔をしかめた。
(あいつのどこがいい男なのよ! まぁ元がレニだから外見は悪くないかもしれないけど、ドS男より紳士の方が断然いいじゃない)
ふてくされながら家の門に辿りつくと、そこに招いても居ない珍客が待ち伏せていた。
そうだ。あいつはさっきバドルの話でちょこっと出た…と思う…
「変態!! アンタこんな所で何してんのよ!」
パッチもんの金の王子ゴールドだった。




