バレそうでバレない人格
「それより早く帰らないと日が…」
レニの手を取り、家路を目指して歩き出そうとしたとき、再び彼女等の後ろから男の声が響き渡った。
その声に第二のナンパを想定したキャロルは凄まじい勢いでその手を後方の声の主に向かって繰り出す。
「うおっとぅ」
その手を間一髪で避けると見知らぬ男がキャロルのコートを見ながら豪快に声を上げた。
「おおっ! やっぱり俺の女神が着てたオーダーメイドのコートじゃねぇか!」
嫌味も、ナンパ男特有のいやらしさも無い迷彩服の髭面の男は無精ひげを片手で撫でながらキャロルとレニを交互に見渡した。
「な…何? レニの知り合い?」
レニが「いいえ」と首を振る。
「レニ? うおぉ!! やっぱりレニか!」
男の豪快な叫びにキャロルは訝しげな視線を投げつけた。
警戒する二人の心情を悟ってか、男は
「いやいや、あやしいもんじゃねぇよ!」
と片手を顔の前で振ってみせる。
「何だよ。ハルトは俺の事話してねぇのか? つれねぇなぁ」
「ハルト?」
キャロルより先にレニが男を見上げ、聞いた。
「ハルトのお知り合いですか?」
「がっはっはっ俺ぁバドルってんだ! ほらよ。お譲ちゃんちの壁治ってたろ?」
「ハルトが言ってた何でも屋さんですか?!」
レニの頭をポンポンと撫でるとバドルはポケットから飴玉を一つ取り出し、彼女の手にそれを握らせた。
「ホレ、飴ちゃんだ。パパには金銭面で色々世話になってっからな。いやぁ、しかしまぁ、こんな所でハルトの愛娘に出会えるなんてよぅ! よく似てんなぁ。完璧に父ちゃん似だな」
それはそうだ。ハルトとレニは同一人物。
しかし、運がよかったと言うべきか、今のレニは可愛らしい格好をした年相応の女の子だ。
髪型も違うし声も『ハルト』の時とは全然違う。顔つきも別物だ。よく似た親子と思えなくもない。




