惚れてない!! イケメンだと思っただけよ!! (byキャロル)
「このアマ、人が下手に出れば付け上がりやがって…」
「あんたたち…」
首筋に男が腰に差していた剣の刃が突きつけられていた。
「お前はそっちの小さいのでいいんだろ。俺はこの女に世界の仕組みって奴を教えてやる」
「っ小さいのって…あんたたちその子に手を出したらただじゃすまないわよ!」
「どうなるってんだ?」
男の息が背後から耳元にかかった時、第三者の低い声が聞こえた。
「狩人の面汚しですねぇ」
その声と同時に重い音が二度響くと二人の男の体が宙を舞った。
「えっ?」
ハルトではない、レニは怯えた子猫のようにキャロルの腕にしがみ付いている。
後ろを振り向くと見ず知らずの青年が二人を庇うように、投げ飛ばされた男達の前に立ち塞がっていた。
「まったく、か弱い女性に大の男がよってたかって情け無い事です」
背中に異様なほど巨大な銃を担いだ青年は穏やかな笑顔で二人の男を諭すように語り掛けるが、その声の奥底には凍えるような冷たさが垣間見える。
「っんだテメェ!」
立ち上がった男の手を仲間が思い切り掴み、制止した。
「やめろ! 背中の銃…こいつ…」
しばらく青年の顔を眺めると、何かに気付いたのか、男の顔からみるみる血の気が引いて行く。
そして、キャロルを恨めしそうに睨み付けると、あれ程威勢を放っていた二人の狩人は怯える犬のように尻尾を巻いて逃げ出した。
「えっ? 何?」
呆然としていると巨大な銃を担いだ背の高い青年がキャロルを振り向いた。
百八十近い身長を持つキャロルと同じぐらいの背丈、十二センチのヒールの高い靴を履いているにも関わらずに変わらないという事は百九十以上はあるだろう。
その長身にダークブルーのコートが映え、綺麗に整えられた短髪に丸い眼鏡が聡明さを滲ませている。
「大丈夫ですか? ここにはああいう輩が結構居ましてね、気をつけた方がいいですよ」
端正な顔が穏やかに微笑み、キャロルは思わず顔を赤らめた。
「家まで送りましょうか?」
その言葉に声を上ずらせながらキャロルが首を振った。
「いっいえ! だだだだ…大丈夫です! 助かりました」
続けてレニが「ありがとうございます」と頭を下げた。
「そう、それじゃ気をつけて」
優しく微笑み、軽く片手を上げて何事も無かったかのように歩いていく背の高い青年をキャロルは呆けながら見つめ続けた。
「ヤバッ…ちょ…ヤバ…うわっ!」
「? キャロルさん? どうしました? 顔が赤いですけど…」
「なっなななななななな…なん、そんな事ないわよ」
レニの言葉に正気を取り戻したキャロルは顔をブンブンと振ると上ずった声で答えた。




