死をも恐れぬ衣装替え
「キャロルさーん。変じゃないですか?」
ショーウィンドウに移る自分の姿を見ながらレニが隣を歩くキャロルを見上げた。
「とっても可愛いわよ。お人形さんみたい」
サンタクロースを思わせる白いファーの付いた赤いワンピースに身を包み、髪を二つに結ったレニは着慣れない服に戸惑っていた。
黒いハイソックスにポンポンの付いた服と同じ色のショートブーツがさらに愛らしさを演出している。
腰を絞るようにあしらった大きなリボンが徒歩に合わせて揺れる後姿にキャロルは思わず少女の小柄な体を抱き締めた。
「え? 何ですかキャロルさん」
「いやぁーん! もぉチョー可愛いぃ~」
ハルトの事は無視して自分好みの可愛い服に着せ替えさせたキャロルが鼻の下を伸ばしながらレニと手を繋いで街を散歩する事数分、人形のように愛らしい少女と、体の線を誇張したロングコートを纏ったキャロルに来るべくして来た事件が突如巻き起こった。
「おいおい、女二人でこんな所ほっつき歩いて危ねぇぞ」
一般世間で言われる所のナンパ……なのだろう。
明らかに女漁りを目的としているであろう二人の男がレニとキャロルを挟むように後ろから両脇に並ぶ。
「ここら辺はあまり治安良くねぇからな。俺らが守ってやろうか?」
さすがは狩人が多く住まう地区。
男達の背や腰に下がる武器からして、間違いなく狩人だ。
ナンパなど日常茶飯事だったキャロルは慣れた様にレニの手を引くとスタスタと歩幅を早める。
「ちょっ…ちょっ…ちょっと待てよ!」
「私たちは忙しいの! 他をあたってちょうだい!」
「いいから少し付き合えよ!」
肩をつかまれ、キャロルの体が大きく後ろに引かれると同時に男の頬に強烈な平手打ちが炸裂した。
思いも寄らない反撃に油断していた男が豪快に尻餅を付く。
「しつっこいのよ! 変に触発しないでよ!」
キャロルが恐れているのはハルトが出現する事だ。
せっかく可愛くなったレニと散歩を楽しんで居る時にハルトが現れたらたまったものじゃない。
第一、こんな恰好にさせた事があの男に知れたらどんな毒舌で精神的ダメージを与えられるかは目に見えている。
命だって危うい。
「行くわよ」
するとレニの手を取ったキャロルの首筋に冷たいものが突きつけられ、彼女は動きを止めた。




