変態に春が来た!!
一流狩人が多く住むといわれる高級住宅の一角に一際目立つ館が建っていた。
大きな門構えの内側、緑が生い茂る公園のような庭の遥か奥にその館の屋根と思しき立派な姿が伺える。
ゴシック調の城を思わせるその館の主の事はあまり定かではないが、世間の噂によると先祖が有名な特S級の狩人だったとか、王族の遠い親戚だとか言われている。
その屋敷の中の応接室に女主人と対峙する狩人が居た。
「お噂はかねがね聞いておりますわ」
顔中に刻まれた皺が、彼女の五十年以上の年輪を思わせるが、ほっそりとした面立ちと、優雅な立ち居振る舞いは美しく、見る者の目を釘付けにする。
「とても名の知れたお方らしく、その武勇の数々はまるで覇王の如きですとか…」
対峙する狩人は目の前に出された茶と高級菓子を口に運びながら胸を張り、「ふぉっふぉっふぉっ」と鼻持ちならない笑い声を上げた。
「まぁ、そうざますね。自慢じゃあないざますが、ミーの残した功績を考えれば、まぁ、そろそろ…『S』に昇進ざましょう!」
「まぁ、『S級』に? それはそれは、そのようなお方とこのようにお話できるなんて、光栄ですわ」
女主人は英雄を讃えるかの如き目を輝かせると
「ゴールド様」
と、実力、性格共に最もS級に遠いであろう名を呼んだ。
ゴールドがS級なのはスケベ心と金回りだけだ。
「それで? この次期S級狩人のミーに依頼とは? どのようなものでござぁんしょ」
女主人に持ち上げられるだけ持ち上げられ、上機嫌の彼は菓子と同等の高級茶葉から抽出したと思しき紅茶を5杯飲み干すと自慢の髭を撫で付けた。
「ええ、その件ですが…」
女主人が口を開いたと同時に扉がノックされ、一人の娘が姿を現した。
「お母様、その方が噂に名高いゴールド様ですか?」
その娘を見た瞬間、ゴールドは思わず言葉を失った。
「わたくしの娘のリリアンでございます」
そのリリアンと呼ばれる十代後半の女性は、清楚なブルーのワンピースを優雅に翻しながら、一礼をすると母親の隣に腰を下した。
「な…な、な、な…何とビューチフルな…」
波打つブロンドの髪、サファイアのような瞳。肌は真珠のように白く透き通っている。
「この子の大切なペンダントを、探していただきたいのです」
深く沈み込むリリアンを夢うつつで眺めながらゴールドは「はい」と空返事を返した。
「今は亡き主人がこの子に残したカメオなんですが…」
「はあ………」
「その、下に落としてしまいまして。大体場所は分かるのですが…」
呆けるゴールドの顔を眺めながら女主人が「ゴールドさん?」と首をひねる。
「えっああ!! い…いいざますよ! そんなカメオ探しぐらいお安い御用ざます。下? 下とはどこかの穴にでも落としたざますか?」
その言葉にリリアンの沈んだ顔がバラ色に輝いた。
「よかったわね。リリアン」
娘の手を握り締めると女主人は深く一礼をし、彼女の合図と共に執事がテーブルの上に一枚の紙を置く。
「報酬は一億で足りますでしょうか?」
「いっいちお………え? ただカメオを探すだけでそんなに?」
思いも寄らなかった金額に思わずゴールドは身を乗り出した。
「はい。場所はここから南に10キロほど行った所の中奈落です」
その場所を公開された瞬間、ゴールドの顔から血の気が引いた。




