顔は無名の名前は有名
「ちょっ…なんざますか! ユーたちやってしまいなさい! あんなおチビ、どうにでもなるざましょ!」
一番の戦力であったボディーガードが一撃で倒され、ゴールドが恐怖に震えた声で周りの取り巻きに声を掛ける。
「上等だ。てめぇらこの俺とやり合おうってのか?」
ハルトの片手が背後の腰に備えてある銃に伸びたのを見ると、キャロルは慌ててその手に飛びついた。
「ちょっとハルト! あんた何する気よ! 人間に向かって銃なんて…」
「うるせぇ! 黙ってろ!」
二人の会話を聞いていた酒場の客がキャロルの言葉を聞くなり騒然となった。
ゴールドの取り巻きも持っている武器をしまい、後ろに一歩下がる。
「ちょっと! どうしたざますか?ユーたち!」
狩人たちが目の前に対峙する小柄な『男』を眺めながら顔を見合わせた。
「今、あの女、あの三つ編みの男の事…ハルトって言ったよな」
「ハルトって…あのハルトか?」
一触即発だった酒場のムードが変化したのに気付き、キャロルは目を瞬かせた。
「そう言えばさっき向こうの方で二輪の鋼鉄の騎馬を見た奴がいたって」
「鋼鉄の騎馬に乗った白い服の三つ編み男?」
異様な雰囲気に不安を煽られ、ゴールドがキョロキョロと周囲を見渡す。
「な、何言ってるざますか…早くあいつを…」
「ゴールドさんよ。あいつぁダメだ。諦めた方がいい。触らぬ神に祟り無しってな…」
「…だな。あの女も諦めた方がいいぜ。特Sの女に手出ししたら命がいくつあっても足りねぇよ」
戦意喪失した男達がそそくさと顔を背けながら後ろに下がる。
「特S? 特Sの女ってキャロリンはただの野良サポーター…」
「あの女の方じゃなくて、あの男が特Sのハルトだって言うんだよ。あんたハルトの女に手ぇ出したのか?それじゃ、いくら積まれても俺らには助けられねぇぞ」
「ちっ違うわよ! 私はこいつの女じゃ…」
キャロルの強烈な否定を打ち消すかのようにゴールドが悲鳴をあげた。
「ノオオオオォォォォォォン!!!! 特Sのハルト? ウソざましょ! あんなチビ男が…」
慌てて男達がゴールドの口を抑える。
「な、何でもねぇよ。俺たちはあんたとやり合う気はねぇし、その女とは…ちょっと遊んでただけだからよ」
その言葉にキャロルが眉をひそめる。
(遊んでたですって? 冗談じゃないわよ。あんたたち、よってたかって一人の女に何しようとしてたのよ!)
もう一度ぶっ飛ばしたい気分だが、ここで自分が平静を失えば、ハルトの手によって死傷者が多数出てしまうだろう。
怒りの感情をぐっと堪えてキャロルはハルトの手を力任せに引っ張った。
「っんだよ離せよ!」
「もういいわよ。とりあえずアンタを触った大男は白目を剥いて気を失ってるんだから、あいつらは無視して換金に行きましょう」
ある程度男達から離れた所でキャロルはハルトの背を酒場の外に押し出す事に成功した。




