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お隣の氷姫は、ぼくにだけ微笑む  作者: こねこねこ
第3章 佐藤綾香の秘密

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消えたUSB⑤:学園王子、提案する

「あったあああああああ! やっふううううううううう!」


 桜井先生が叫んだ。

 先ほどまでの憔悴が嘘のように溌溂としている。

 職員室中の視線がこちらに向く。

 教師たちが、わらわらと集まり始めた。


「何だ、そんなところにあったのか」

「もう少し探せばよかった」


 教師たちは、口々に感想を言っていく。

 USBは見つかった。

 最初からずっと、このロッカーの中にあった。

 盗まれたのではない。

 隠されたのだ。


「お前、よく分かったな。何か、推理したのか?」


 桜井先生が尋ねた。

 推理――今回のものは、そう呼べるほどのものではない。

 可能性の一つとして考えたものが、たまたま正解だっただけだ。

 一応筋道立てて説明は出来るが――。


「あれ?」


 この時、ぼくはあることに気が付いた。

 ぼくの仮説どおりだと、説明のつかないことがある。


 ――犯人は、何故脅迫状など出したのか。


 ここまで、犯人は『ちょっとした悪戯』ばかりしてきた。

 だけど、脅迫状を作成して掲示板に貼るというのは、それを逸脱している。

 これまでの犯人の傾向とは異なる。


 ――脅迫状については、別の犯人がいる?


 だとしたら、それは一体誰なのか。

 これまでの流れから、特定することが出来るのではないか。


「どうかしたのか?」


 桜井先生がこちらの様子をうかがう。


「……いえ、何でもありません」


 ぼくはとっさに、そう答えた。

 その時、ぼくの中にある発想が生まれた。

 頭の中で、その内容を検証する。

 そして――結論に達した。


 脅迫状を出した犯人に心当たりが出来た。

 だけど、それをここで話すわけにはいかない。


「USBを見つけられたのは、ただの偶然です」

「そうか。なんにせよ、助かったよ!」


 桜井先生はそう言って、ぼくの背中をバシバシたたいた。

 とりあえず、桜井先生の責任問題にはならなくて済みそうだ。


 だけど、これで終わりにしてはいけない。

 これで終わったら、脅迫状の件が有耶無耶になってしまう。


 正直に言えば――。

 脅迫状の犯人には、捕まって欲しくない。

 この犯人が捕まると、ぼくが困ったことになる。

 だが、有耶無耶になるのも困るのだ。


「まだ、終わっていません」


 ぼくは言った。


「脅迫状はどうなるのですか? 玄関に貼られていた脅迫状です」


 職員室が、再び騒めく。

 全てが解決したと思っていたのだろう。

 だけど、まだ問題は残っているのだ。


「USBがずっとここにあったなら、アレは作れなかったはずです。ですから、犯人は一度USBを盗み出し、そのデータをコピーしたものを持っている可能性があります。USBは、ロッカーに戻されたのです」

「その犯人は、誰なんだ?」


 ぼくに視線が集まる。

 犯人が誰なのか――アタリがついていると思っているのだろう。

 勿論――。


「いや、ぼくには分かりません。そこまでは無理ですよ。普通に警察に通報してください」

「え?」

「だって、個人情報を使った脅迫ですよ? 沢山の生徒が脅迫状と名簿を見ていたのですから、このまま鎮静化というのは無理です。後は、警察を頼るしかありません」


 この場にいる教師たちには、その是非の判断がつかないようだった。

 学校というのは、閉鎖的な場所だ。

 なんでもかんでも内側で終わらせようとしてしまう。

 だから、警察に介入されることにも抵抗があるのだろう。

 だが――そこで声が上がった。


「その生徒の意見に賛成です」


 前田先生だ。

 相も変わらず、爽やかな表情を浮かべている。

 ぼくは呆れながら、それを見ていた。


「というより、それ以外の選択肢がありません。既に事件は起きています。このまま放置して、後で個人情報の流出が判明したら大変です。警察を呼ぶことに抵抗があるのでしたら、警察署に連絡して、相談をするという形でいかがでしょう?」

「少し、相談させて下さい」


 教頭はそう言った。

 これで、ぼくが関われる範囲での事件は終了だ。

 後は、警察に任せればいい。

 そう思っていたのだが――。


「それ、やったの。私です」

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