消えたUSB①:陸上少女、話をする(未)
七月になり、期末テストが終了した。
桐島先輩はこれまで通り、秘密の部屋に入り浸っている。
澪とは、仲良くやっている。陸上部での問題も解決したらしい。
星野先輩とは本当に仲良くなったらしく、よく話題に出てくる。
姉さんは、たまに家に泊まりに来る。
漫画の連載も順調なようで、たまに預金通帳を自慢げに見せつけてくる。
順調そのもの。
あとは夏休みを待つばかりの平和な日々だった。
だが――事件は起きた。
とはいっても、今回の事件はぼくには関係のないものだ。
身近な人間がターゲットになったわけでも、犯人になったわけでもない。
傍観しようと思えば、傍観できたものだ。
だが、ぼくは関わることになってしまった。
ついつい、介入してしまった。
×××
ある日の朝、学校の玄関に人だかりが出来ていた。
生徒たちは、掲示板の前に集まっているようだった。
――普通の掲示物にしては、注目を集め過ぎだな。
後ろから覗いてみると、そこには二枚の掲示物があった。
片方は何かの表のようで、細かい文字が書かれている。
何が書かれているのかは、遠目からはよく分からない。
ただ、周りの声を聴いていると、そこには個人情報が載っているらしい。
そして、もう一枚の方――。
こちらは大きな文字が記載されていた。
『これらの情報を漏らされたくなければ、
恥ずかしい秘密を暴露しろ』
これがその内容だ。
ちなみに、こちらは大きな文字で印刷されていた。
つまり――。
この学校の個人情報を手に入れた人間がいるらしい。
そして、それを使って脅迫をしようとしているようなのだが――。
――なんだ、これ?
明らかにおかしい。
脅迫文にしては、内容が大雑把すぎる。
まず、要求の相手が書かれていない。
それに『恥ずかしい秘密』というのも抽象的だ。
誰に、何を暴露してほしいのか――それが伝わってこない。
まぁ、ただの悪戯だろう。
犯人を見つけるのは、難しいだろう。
学内に監視カメラはない。
貼るところを捕まえなければ、犯人の特定も出来ない。
――どうでもいいか。
そう考えていると、教師が現れた。
国語教師の前田先生だ。
外見が非常に整っており、教師でありながら『王子』などと呼ばれている。
そのモテっぷりは生徒を差し置いて学内一。
バレンタインの日など、教卓の上がチョコで溢れるとか。
前田先生は、爽やかな笑顔を浮かべながら掲示板に向かった。
そして――。
「おや、これはいけないね」
まるでお芝居のように、軽やかに紙を剥がした。
その動作を見た一部の女生徒が、黄色い声を上げる。
「さぁ、君たちは教室に行きなさい」
前田先生がそう言うと、生徒たちは素直に従った。
こういうところは、進学校らしい。
それにしても、個人情報の流出と脅迫か。
割と大ごとになってきたような気がしなくもない。
――まぁ、後のことは職員室で決まるだろう。
ぼくが関わることはない。
そう思っていた。




