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学園のアイドルに告白したらOKされたが、彼女は魔王で僕は従者になりました  作者: ナックルボーラー
1章 

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第2話 日常の崩壊

「はぁ……こうも何度もデートを断られると、僕達は本当に付き合ってるのか段々自信が無くなって来るよ……」


 彼女である真奈との至福の昼食から午後の授業を終えた颯太は1人帰路を歩いていた。


「デートは無理でも、せめて一緒に帰るぐらいはしたかったな。学校が終わると、いつも真奈ちゃんは足早で帰るし」


 前述の通り、颯太は一人で帰路を歩いている。

 そこに真奈の姿はない。


 午後の授業が終わると、颯太が帰り支度を済ます前に、真奈が颯太の教室に来て、帰りの挨拶を投げて去っていく。

 それがいつもの事だが、デート同様に颯太は何度か一緒に帰ろうと誘うが全部断られている。


 ここ迄断れると、告白は何故OKしたのだろうか疑問に思うほどだった。


「真奈ちゃんって何かバイトでもしているのかな? 黄昏谷(うち)はバイト禁止じゃないから校則的には大丈夫だけど、ここまで予定が合わないとなると、真奈ちゃんの実家は自営業で忙しく、その手伝いをしているのか……」


 だとしても1日ぐらい予定調整が出来ないのか、そう考える颯太は自己嫌悪に自嘲する。


「つか、僕ってこんなグチグチ言うタイプだったんだ。なんかショック……」


 メンヘラ気質な愚痴を溢す自分に落胆する颯太。

 暫く歩いていると帰り途中にある公園の入口前で立ち止まる。


「そう言えば碧依(あおい)が漫画の最新巻を買って来いって言ってたっけ。本当にあの反抗期妹は、最近(ぼく)を足蹴に使いやがって」


 愚痴の対象を最近反抗期に突入した中学3年の妹に向けた颯太は、本屋への近道である公園に入る。

 公園に入って少し経つと颯太は違和感に気づく。


「それにしても珍しいな。いつものこの時間なら、学校帰りの生徒や運動してる人がいるのに、全然人気がないや」


 公園内はそこそこに広い。

 健康志向な人がジョギングしたり、カップルのデートスポットでもあるため、夕暮れ前は人が多い。

 しかし、現在は閑散としている。


「偶然なんだろうけど、こんな貸切状態は初めてだよ。まるで、この世界に僕一人しかいなくなったみたいな––––」


「オイ、貴様」


 唐突に声を掛けられた颯太は飛び跳ねるように後退する。

 独り言を聞かれたのではと羞恥で顔を真っ赤にする颯太は声をかけた人物に尋ねる。


「え、えっと……僕に言ってます? えっと、どなたですか?」


 颯太は声を掛けらた人物に心当たりはなかった。

 

(こんな暑い日なのに顔が隠れるほどの長いローブって……いや、暑い寒い関係なく、見た目が完全に不審者なんだけど……)


 現在は月読みなら春だが、今年の夏は慌てん坊なのか、春にしては蒸し暑く、夕暮れ時刻でも半袖が丁度良い暑さ。

 にも関わらず、目の前の男は顔を隠す程に目深くローブを羽織っている。

 颯太の胸中通り、怪しさ満点であった。

 颯太が警戒して後ずさると男は口を開く。


「答えろ。名は知らんが、貴様が情報にあった魔王に近しき人間だな?」


「ま、魔王?」


 突拍子もない問いと同時に指を差され、その問いは確実に颯太に向けられてると分かる。

 だが、問いの意味が理解出来ずに颯太は困惑する。


「え、えっと……何を言ってるのか全然分からないんですが。魔王って、あのゲームとかマンガに出てくる魔王の事ですか? 何かの設定?」


「貴様、何も知らないのか? それとも、俺を欺き通そうとしているのか。どちらにせよ、貴様の身柄は拘束させてもらうぞ。我らの野望のためにな」


 話が噛み合ってないのか苛立ちを見せる男に、颯太は1つ思い浮かぶ。


「もしかして何かのドラマの撮影ですか? すみません。僕、役者でもエキストラでもなく通りかかったただの一般人なので、撮影の邪魔してしまいました、直ぐに出ていくので許してください


 では、と足早に去ろうとする颯太は心中で納得と頷く。


(なるほど。撮影中だから人が誰もいなかったのか。だとしたら入り口に看板でもあれば避けられたのに、撮影の邪魔したな)


 見渡す限りカメラマンやスタッフらしき人影は見えないが、上手に隠れているのだろうと自己完結する颯太であったが、


「貴様、誰の許可を得て、去ろうとしてるんだ」


 踵を返して男とは逆方向に体制を向けたはずだが、振り返るやいつの間にか男がおり、その手には男の体躯程の大鎌が握られていた。

 そして男はその大鎌を振り上げると、颯太へと振り下ろす。

 ザシュ!

 肉が引き裂かれる音が公園に響き、颯太の体に激痛が回る。 


「が……がはっ!」


 驚きのあまり激痛ではあったが絶叫は出ず、しかし膝は脱力して折れる。


「い、いきなり……なにを……その鎌、どこから……?」


 右肩から左横腹まで到達する切り傷を摩りながら颯太は表情を歪ませ問う。

 先程まで男は大鎌など握ってはいなかった。

 そもそも、振り返るだけの短時間で回り込むなど不可能なはず。

 流血や痛み、そして困惑で状況が理解出来ない颯太を他所に、男は感嘆する。


「ほう? 殺すつもりはないとはいえ、今ので意識を保つとは、もう少し遊べそうだな。最近は嫌な事が多々あったから、少し楽しませてもらうぞ!」


 感心した表情から一転して加虐を込めた嬉々な表情となり。


「光栄に思うんだな人間。貴様はサタルディーネ家の王政崩壊の礎となる由緒ある犠牲となれるんだ。人間として無価値な人生よりかはさぞ有意義だろうな!」


 大きく振り上げた大鎌は風を切りながらに振り下ろされる。

 颯太は心臓と同調して後ろに飛び跳ねる。

 お陰で避けることは出来たが、大鎌の刃先は舗装された道を砕いて突き刺さる。


 青ざめる颯太は振り絞り叫ぶ。


「マジで何を言ってるのか全然分からないけど、そんな物騒な物振り回してると捕まるんですよ!? てか、僕は怪我させられたから、捕まって貰わないと困るけど!」


 巫山戯てる場合でもなく、人間は常軌を逸脱した場面に立ち会えば混乱して支離滅裂な事を言ってしまうものだ。

 戸惑いを払拭するかの様に叫んだ颯太は躊躇いもなく傷付ける男に恐怖を感じ。


(コイツ、人間なのか!? 人間としてのモラルが全然ないんだけど!)


 日本は比較的平和な国だが、中には常識外れの異常者もいる。

 この男はその枠組な危険人物なのかと思ったが、その考えは次の瞬間に崩壊する。


「安心しろ人間。貴様の命はまだ利用価値があるから殺しはしない。だが、先刻(さっき)も言ったが、少々楽しませてもうらぞ」


 男の口が閉ざされた瞬間、男の左眼が紫に光る。

 ビュン、と風を切る音。僅かに捉えた物は宙を描く紫の線。

 その線は颯太の右足へと刺さり、貫いた。


「が、がぁああああ! 痛い! 熱いッ! なんなんだこれは!?」


 目視は出来ても反応出来なかった紫の光線は熱を帯びていたのか、燃える様な痛みに颯太は悶絶する。

 見れば、足には穴が空いていた。

 痛みに踠く颯太を男は高笑をあげて貶す。


「ははははっ! 喚け! 泣き叫べ! 下等生物の嘆きはいつ聞いて心地よいものだな!」


 男の目は更に3度紫に明滅する。

 同時に紫の線が3本放出される。

 その紫の線は颯太の左足、右肩、左横腹を貫通する。


「がぁああああ!」


 声にもならない程の絶叫をあげる颯太。

 人生で経験した事がない激痛に襲われ、立ち上がるのも不可能になる。

 倒れ込む颯太は揺れる瞳で男を見上げ。

 

(なんなんだこれは!? 目から光線って、そんな芸当が人間に出来るのか!? もしかして、この人はマジのマジで人間じゃない!?)


 銃で撃たれたのかと最初は考えたが、発砲音はなかったうえに、男の手に拳銃らしき物は握られていない。

 颯太の見間違いでなければ、颯太を穿つ紫の線は男の眼から放たれている。

 まるで、魔法のように。


「チッ。もう喚かなくなったか、つまらない人間だ。まあ良い。命は取らねえが。手足は不必要だろうから、切り落とさせてもらうぞ」


 男は興が覚めたとばかりに嘆息して降ろしていた大鎌を振り上げる。

 両足を負傷して逃走も困難な状況で颯太は絞り出す様に問い掛ける。


「お前は……人間じゃ、ないな?」


 颯太の質問に男の手はピタリと止まる。

 男は侮辱だと歯噛みする。


「俺を貴様ら下等な人間と間違えるな知れ者が。俺は貴様らなど手も届かない高等種族、魔族なのだからな」


「ま……ぞく?」


 ゲームや漫画で聞き慣れる単語であるが、現実世界では有り得ない単語に渋面する颯太であったが、その答えを得る前に、男は冷徹な顔で目的を遂行する。


「貴様には人質の価値はあるんだ。だから、腕足を切られた程度で死ぬなよ、人間」


 颯太の両手両足を寸断する為に大鎌の刃が振り下ろされる。

 徐々に迫る刃先。到達すれば颯太の四肢は損失する。

 状況を微々も理解できないままに腕や足を失う恐怖に目を閉じた颯太。


 だが、数秒経とうと刃が到達することはなかった。

 腕に痛覚がある。腕も動かせる感覚がある。

 どうしたんだ、と恐る恐ると目を開くと、鎌の刃が颯太に到達しなかった理由が判明する。

 颯太の目に入ったのは、見覚えのある女性の背中だった。


(ゲート)を通る直前に不穏な気配を感じて戻ってみれば、人払いの結界があるなんてね。怪しいと思って結界内に入ってみれば、案の定ふざけた現場に立ち会ったよ」


 聞き覚えのある声音。

 見覚えのある後ろ姿。

 颯太は彼女の事を知っている。

 颯太は振り絞った声で彼女の名を呼んだ。


「真奈……ちゃん」


 颯太の窮地に現れた女性、黄昏谷高校に君臨する学園のアイドル三陸真奈がそこにいた。

 颯太に振り下ろされた刃が届かなかったのは、真奈が颯太と男の間に割って入り、鎌の刃を指で挟み阻んでいたのだ。

 色々な事に驚愕する颯太だが、男の方が上回る驚愕の声をあげる。


「貴様は、魔王マナルデリシア!? くっ! まだ魔界に帰還してなかったのか!?」


 予想外だと狼狽する男に真奈は冷徹な睥睨を向ける。

 

「これはどういう了見か簡潔に答えてくれないかな? 野良か誰かの差金かは知らないけど、人の彼氏を襲うとか、ただで済むなんて思ってないよね?」


 瞳を赤く光らす真奈は指の力のみで鋼の刃を挟み砕く。


「ちっ! クソがッ!」


 武器を砕かれた男は後方に退がると、真奈は手を構える。


「貴方の口ぶりから、彼を狙ったのは無作為な偶然じゃないんでしょ? なら、貴方がどんな理由で颯ちゃんを襲ったのか、捕まえてじっくり吐いてもらうよ」


 真奈が手に力を込めると掌に炎が発火する。

 道具を使ったのでも手品でもない、正真正銘にタネも仕掛けもない所から炎を出す光景を颯太は朧げな視界で見た。


(なん……なんだ、真奈ちゃん……は)


 炎を男に放とうとする真奈に男は侮辱するかの様な高笑いをあげ。


「ははははっ! なんだその弱々しい炎は? ごっこ遊びでもするつもりなのか? まさかそれが全力となれば、やはり貴様は国が衰退する原因たる没落の象徴だな」


「黙れ」


 侮辱に言い返す真奈だが、真奈は何かを気にかける様に周囲を見渡す。

 戦いに集中できてない真奈に男は言葉を突き立てる。


「それにしても貴様の態度。情報通りにその男は貴様にとって無視できない存在らしいな。つまり、そいつを捕縛できれば貴様は何もできない、弱点ってわけか」


「颯ちゃんは私たちの事情に全く関係しない一般人。貴方が颯ちゃんを狙う理由はおおよそ察せれるけど、させないよ!」


 真奈は掌に灯す炎を火球に変成して男へと放つ。

 速度は弾丸並みだが、男は跳躍して回避する。

 跳んだ男だが地面には降りて来ず、そのまま宙に浮いていた。

 宙を浮く男の背中には悪魔の翼が展開される。


「此処で貴様とやり合うのも良いが、これ以上人間界で暴れれば天界の連中に勘付かれて厄介だからな、今日の所は引いてやる。だがな、魔王マナルデリシア。貴様の様な不純種が魔王になど相応しくない。近い将来、俺達の手で貴様を魔王の座から引き摺り落としてやる。そのことを努努忘れるな!」


 翼を翻して退散しようとする男だが、真奈は体制を低くして男を睨み。


「むざむざと逃すわけがないでしょ。侮るのも大概に––––––」


「俺を追うのは勝手だが、いいのか? このまま俺を追えば、そこに転がる人間を見殺しになるが」


 男の捨て台詞に真奈は思い出したかの様に颯太へ振り返る。

 斬り落とされた腕部分から大量の血が流れ、刻一刻と出血死に迫る颯太。

 瞬時に男の追跡を諦めた真奈は蒼白な表情で颯太へ駆け寄る。


「颯ちゃん! 大丈夫!?」


 颯太の安否を大声で確かめる真奈を、颯太は苦痛に歪む表情で見て。


「なにが、なんだか全然追いついてないけど……。ありがとう、真奈ちゃん……。助けて、くれ……て」


 状況が最後まで理解できないまま、颯太は真奈への感謝を述べ、系が切れたかの様に意識が途絶えたのだった。

 

 

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