メイド、魔族と出会う
「あ、これ道中にいっぱいいたやつやん。これな、ルナちゃんが焼くと中身がエビみたいで結構美味しいんやで!」
「美味しいかどうかは別として、あなたたちは一体どんな『道中』を通ってこの国に来たんですか……」
絶句するスイを尻目に、フェリシアは「詳しい話はおっちゃんに聞いてや」と笑いながら、手際よく記録を書き足していった。
「あ……へ、へぇぇ〜……」
有能なはずの記録係・スイが、生まれて初めて「自分の常識が通じない恐怖」を味わったような顔で立ち尽くしていた。
なんだかんだで、一行は目標の三十層へとたどり着いた。
「……やっと、これで終わりですね。私、もう精神的に限界です……」
スイは頬がこけ、今にも倒れそうなほどげっそりしている。
「なんでや? ルナリスが魔物全部倒してくれるから、うちら無傷で安全やろ?」
「いえ……そういう次元の話じゃないんですよ」
常識を粉砕され続けたスイが力なく首を振る。
「あと、ニコ! さっきからずっとサボっていましたね」
「いや、サボりたくてサボってるんじゃねえ! あたしが槍を構えた瞬間に、獲物が一瞬で灰になるんだよ。入る隙間なんてミリもねえだろ!」
「……はぁ。まあ、今回は不慮の事故ということで、不問にしましょう」
スイが深い溜息をつき、調査終了のサインを出そうとしたその時。
ダンジョンの床から、どろりと這い上がるような「黒い影」が浮かび上がった。
「え? なに、これ……!?」
フェリシアの叫びと共に、全員が武器を構える。
影は凝縮され、一人の男の姿を形作った。
「ハッハッハ! お前ら、いい困惑ぶりだな。……俺の名前はユリウス。このダンジョンの魔物大量発生を引き起こした張本人――『魔族』の一人だ」
男は不気味な笑みを浮かべ、ルナリスの顔をまじまじと見つめた。




