メイド、ダンジョンに入る
「あ、白竜様とシエル・エトワール様! お待ちしておりました」
ギルドの前には、一昨日と同じ受付嬢さんが立っていた。
「おはようございます。案内をお願いします」
彼女の先導で街の奥へと進むこと約十分。巨大な、それこそ山を丸ごと一つくり抜いたような圧倒的な「穴」が姿を現した。
「では、私はここでお別れです。皆様のご武運をお祈りしています。……まずは三十層まで。実態調査が終了しましたら、速やかに地上へ引き上げてきてください」
受付嬢さんは、私たちの姿が見えなくなるまで、何度も深く頭を下げて見送ってくれた。
「……さて。とりあえず、各階層ごとに現れた魔物を記録していけばいいんだよね?」
「そうですね。一階層……今のところ、見た限りでは異常はなさそうです」
「二層目もこの調子なら、サクッと終わるんとちゃう?」
フェリシアの楽観的な言葉と共に、私たちはひんやりとした深淵の奥底へと一歩を踏み出した。
「えっと、ここにいたのは『ゴブリン・ジェネラル』と『ハイ・オーク』だけやな。……よし、異常なしっと!」
フェリシアがノートにさらさらとペンを走らせる。それを見たスイが、慌てて彼女の手を止めた。
「いや、フェリシアさん! 大アリですよ! 通常、ここは三層で五層まではただのオークとゴブリンしか出ないはずなんです。
ジェネラル級なんて、本来は十層以降の中ボスなんですから!」
「えー? でもゴブリン・ジェネラルなんて、言うたらただのゴブリンやろ? ジュゴンとマナティーみたいな違いやん」
フェリシアの適当すぎる例えに、スイが瞳をスッと細めた。
「……いいですか。ジュゴンとマナティーは、構造が全く異なります。例えば尾びれの形。ジュゴンは三角形ですが、マナティーは丸いうちわ型なんです。全然違います!」
「「「へぇ〜……」」」
私、フェリシア、さらにはニコまでもが声を揃えて感心してしまった。
(初めて知った、そんな雑学……!)




