メイド、電気ショックを食らいそうになる。
「……さて、食後の挨拶はこのくらいにして。そろそろ『作戦会議』を始めましょうか」
スイがリビングのテーブルに一冊のノートを広げた。その瞬間、彼女の瞳からさっきまでの柔らかさが消え、B+ランク冒険者の鋭い光が宿る。
「今回の依頼は実態調査です。そのため、メモを取る記録役と、その記録役を確実に守る護衛役を分ける必要があります。まず、私が記録役を担当してもよろしいでしょうか?」
「「「どうぞ、どうぞ」」」
これに関しては、冷静なスイが最適任だろう。異論はなく満場一致で決まった。
「記録役は二人いた方が正確です。もう一人は……フェリシアさんにお願いしたいです。物理アタッカーのニコと、魔術師であるルナリスさんは、不測の事態に備えて常に完全な戦闘態勢でいてほしいですから」
「めっちゃ論理的やん! うちでええなら喜んで!」
「……それで大丈夫? まあ、言っている筋は通っているし、戦力の分散を避けるならその振り分けがベストね」
「あたしは難しいことはわかんねえから、その案で大丈夫だ!」
ニコも豪快に頷く。
「では、この編成で行きましょう。あとは、万が一分断された時の合流地点ですが――」
外はまだ明るいけれど、インフィニア王国の奥底に眠る「深淵」へのカウントダウンは、もう始まっていた。
ついに、決戦の朝が来た。
私たちはまだ薄暗い宿を出て、冷え切った空気の中をギルドへと向かう。
「あかん、眠すぎる……。ダンジョン入る前からもうボロボロや……」
「眠気覚ましに電気ショックでも流してあげようか? ついでに、そちらの赤髪さんにも」
私が指先にパチパチと小さな火花を散らすと、フェリシアが弾かれたように飛びのいた。
「五日間は確実に失神するから、マジでやめて!」
「……え、あたしはちょっとお願いしてみたいかも――」
「あかん! 絶対あかん!」
フェリシアが勢いよくニコの口を塞ぐ。好奇心で死ぬところだったニコは、必死に手を振ってもがいている。
「……お二人とも、騒がない。早くに寝ない方が悪いんですよ」
スイの冷ややかな一言に、フェリシアとニコは同時に「……正論です」と項垂れた。
(あぁ、この二人はスイには頭が上がらないみたいね)
「あ、白竜様とシエル・エトワール様! お待ちしておりました」
ギルドの前には、一昨日と同じ受付嬢さんが立っていた。




