メイド、ご飯を食べる
リビングでニコと話し込んでいたフェリシアが、慣れた手つきで真っ白なお皿を複数生成し、念動力でキッチンまで飛ばしてきた。
(……フェリシアのスキルの引き出し、まだまだ底が見えないな)
「はい、お待たせ。ご飯できましたよ」
香ばしいスパイスの香りを漂わせながら、リビングのテーブルへカレーを運ぶ。
「やっと飯や〜! 結局、馬車でめっちゃ体力消費したからなぁ、うちは」
「馬車って……普通は座ってるだけじゃないですか?」
スイが不思議そうに首を傾げると、フェリシアは遠い目をしながら一言だけ答えた。
「……人使いが荒かったんや、誰かさんの」
「気になりますね、その旅路」
「聞かないほうが身のためやと思います。
苦笑いするスイを横目に、私はニコの前にお皿を置く。
「これ、オーク肉です。作り置きを温めただけなので、口に合わなかったらごめんなさい」
「気にするな! あたしたち、この数日まともに飯を食えてなかったから、なんだってご馳走だ!」
ニコは豪快に笑い飛ばしたが、A級間近の冒険者が食い詰めているなんて、この国の状況は相当深刻らしい。
「では、いただきます!」
四人の声が揃い、シエル・エトワールと白竜の、初めての食卓が始まった。
まず、スイが一口目を運んだ。
「え……? 美味しいです! オーク肉に弾力があって、それにこの『カレー』というソース、独特のスパイスの中に甘みもあって……! ニコちゃん、これ食べてみて!」
「え? あのスイが、一口目でそこまで絶賛するなんて珍しいな」
ニコが半信半疑のまま、勢いよく一口目を頬張った。
「――っ! マジで美味いなこれ! このこってりした濃厚な味が、疲れた体に染みるわ……!」
「やろ? めっちゃ美味しいやろ?
なぁ、自分らもそう思うやろ!?」
「いや、あんたが作ったわけじゃないんだから、ドヤ顔しないで」
調子に乗るフェリシアを軽くあしらいつつ、私たちはあっという間に皿を空にした。
「あぁ、満足! ごちそうさまでした!」
「……さて、食後の挨拶はこのくらいにして。そろそろ『作戦会議』を始めましょうか」
スイがリビングのテーブルに一冊のノートを広げた。その瞬間、彼女の瞳からさっきまでの柔らかさが消え、B+ランク冒険者の鋭い光が宿る。




