メイド、森を抜ける
「森を抜けたぞ。お疲れさまだ」
御者のおじさんが手綱を緩め、安堵の声を上げた。目の前には、ついに目指す国の輪郭が見え始めている。
「あぁ……疲れた〜。腰痛いわ……」
「これくらいの移動で疲れるなんて、まだまだ半人前だよ。――アバター、もう戻っていいよ」
私の指示に、雷光を纏ったアバターは一礼して霧のように消えていった。
「……おいおい。あのお嬢ちゃんが半人前ってんなら、世の中の一般冒険者は何人前になっちまうんだよ……」
おじさんがまた何かブツブツとツッコミを漏らしているけれど、私はそれを無視して荷物をまとめる。
「ほら、目的地はもうすぐ。おじさんも言ってるんだから、休憩終わりにして降りる準備してよね、フェリシア」
「あぁ……なんでルナリスはそんなに元気なんや? 自分、無尽蔵の体力お化けやろ……」
「おじさんも同感だよ。あんたらの動き、見てるだけで目が回ったわ」
おじさんと意気投合して愚痴をこぼすフェリシアに、私は少しだけ意地悪く微笑んでみた。
「……フェリシアだけがそんなに疲れてるのは、昨日の夜、こっそり夜更かししてたからじゃないの?」
「なっ......! なんでそれを知ってるんや!? 絶対バレへん自信あったのに……!」
図星だったらしく、フェリシアは飛び上がって驚いている。
「絶対、昨日夜更かししたのなんて関係ねえな。単純に体力と精神力の差だわ……」
おじさんの非情な追撃に、フェリシアはMPに特大ダメージを受けたような顔をして沈没した。
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