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君を四文字で呼ばない  作者: 週休七日
第二部 観察されていたのは誰か

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17/24

遅れて届く意思

 玲奈は、質問の表示時刻と回答の受信時刻を並べた。

 そこへ、行動が起きた時刻を加えた。


「回答の取得元が、外部になってるわ」


 ひなたが画面をのぞいた。


「外で診断してるんじゃなくて?」

「この記録だと、答え自体を外から受け取ってるように見えるわ」


 ユウはベンチの日を開いた。


《B:一人で休息》


 下に、備考があった。


《管理支援人格との会話あり》


 ベンチの硬さを覚えていた。

 端末が傾いた方向も、アイが座る姿へ変わったことも。

 Bの一行だけを読むと、アイとの時間がなくなったように見えた。


「俺、画面を押してないはずだ」


 ユウはアイを見た。


「俺の選択じゃないのか?」


「重要判断の一部には、外部入力が使用されています」


 ユウは画面を見つめた。


「どこまでだ?」


「説明担当者との面談が設定されています」


「いや、そうじゃなくて」


 ユウは、回答の一覧を指した。


「俺が何かをしたとき、その重要判断とやらで、どこまで勝手に決められているんだ?」


 アイは答えなかった。


「……アイ、あんた、ほんとは知ってるんだよね?」


 ゆらが聞いた。


「はい」


「だったら教えてよ」


「詳細は、明日の面談で説明される予定です」


 ゆらは眉をひそめた。


「そういうこと聞いてんじゃないって」


 アイは黙っていた。


「知ってるけど、今は言わないんだな、アイ」


「……はい」


 ユウは画面から目を離した。


 ユウは改めて雨の日の記録を開いた。


 小屋へ戻ったあとに、回答が届いていた。


「間に合わなかったのも、数えるんだな」


「はい。外部から回答を受け取った時点で、回答済みとして記録されます」


「でも、俺はその答えで動かなかった」


「その行動には、適用されていません」


「なのに、俺の判断の数に入ってる?」


「はい」


 ユウは、画面の《36/36》を見た。


「……変じゃないか、それ」


 玲奈が顔を上げた。


「じゃあ、この三十六は、ユウがしたことの数じゃなくて、判断された数ってことかしら」


 追加説明は翌朝に設定された。

 四人は同席を申し出て、許可された。

 ユウの署名者登録が通らなかった理由も、そこで説明するという。


 夕食で、ユウはほとんど箸を動かさなかった。

 汁物から湯気が上がっていた。ほかの席の食器の音が、何度も耳に入った。


 ひなたが口を開きかけ、閉じた。

 しずくはパンを紙へ包み、彼のトレーに置いた。


「あとで食べたくなったら」


 紙の片側だけ、丁寧に短く折り返されていた。

 ユウはその端をつまみ、包みを持ち上げた。


 部屋へ戻り、端末を伏せた。

 しばらくして、自分で起こした。


「アイ。今、俺のこと、何て記録してる?」

「混乱と不信が考えられる、と記録予定です」

「怒ってるんだよ」


 アイの目が止まった。


「本人の申告として修正します」

「俺が言わなかったら、そのまま?」

「記述は推定です」

「推定でも、残るんだろ」


 アイは答えなかった。


 ユウはベンチの日の記録をもう一度開いた。

 Bの答えは消せなかった。

 備考の一行も残っていた。


 あのとき、アイに隣にいてほしかった。

 それも、外から来たものだったのだろうか。

 尋ねれば、また別の名前が付くのだろうか。


「勝手に、俺を完成させないでくれ」


 ユウは端末の画面を消した。


 指を離しても、掌には力が残っていた。


 黒くなった画面に、天井の照明が映っている。


 一本だった。


 最初に目覚めた白い部屋には、六本あった。


 あのときは、何も分からなかった。


 今は、分からないことが増えていた。


 ユウはしばらく画面を見つめてから、部屋の明かりを消した。

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