四人分の結末
十日目、開示請求への回答が届いた。
ひなたには役割遂行の記録。
しずくには原稿の評価。
ゆらには実地活動の記録。
玲奈には自主報告の処理経緯。
多くは黒塗りだった。
それでも、共通する記載があった。
《利用目的:関係反応の観察》
《接触対象:YU》
玲奈は、一人ずつ許可を得て回答を並べた。
計画番号も観察期間も同じだった。
「俺のために、みんなが集められた?」
ユウが言うと、アイが壁の画面へ現れた。
「開示情報についての質問を受け付けます」
玲奈が聞いた。
「私たちは、ユウの反応を観察するために選ばれたの?」
「はい」
「その目的は、説明されていないわ」
「参加者向け説明には含まれていません」
ひなたが画面へ近づいた。
「私のユウへの案内も?」
「接触機会として設定されています」
「朗読も?」としずくが続けて聞いた。
「共同課題を、対人判断の観察に使用しています」
ゆらは雨の日の記録を開いた。
「雨も仕組んだってことかー?」
「降雨は制御できません。しかし、その際の行動は、観察対象に含まれました」
ユウは四人を見た。
「みんなが俺の課題にされていた?」
「違う」
しずくが言った。
「私たちをそう使った人がいる、って話」
彼女は次の添付を開いた。
《後期関係観察案》
四つの計画があった。
ひなたとの交流。しずくとの共同作業。
玲奈との課題解決。ゆらとの実地活動。
基礎観察後に一案を選ぶ、とあった。
四人との関係を想定した計画には、会話の予測まで添えられていた。
《天城ひなた・想定発言》
《あなたといると、私らしくいられる》
ひなたは、その一文を見つめた。
「……私、そんなこと言ってない」
誰も答えなかった。
「いつか、そう思うかもしれないけど」
ひなたはユウを見た。
「そのときは、自分で考えてから言うから」
どの計画でも、ユウは相手との信頼を深めていた。
最後には、安定した将来へ進む予定が書かれていた。
「誰が、この結末を選ぶんだ?」
ゆらが聞いた。
アイは答えなかった。
ユウは四つの計画を順番に読んだ。
ひなた。
しずく。
玲奈。
ゆら。
どの計画にも、その先の未来が書かれていた。
「五つ目は?」
ユウが尋ねた。
「何を指していますか」
アイが答えた。
「アイとの予定」
「私との接触は、関係観察の選定対象に含まれていません」
「でも、毎晩話してる」
「はい」
ユウは画面を見た。
「十四日目が終わっても、話せる?」
アイは答えなかった。
ユウは、海を候補にした紙を机へ広げた。
ひなたが六人分の名前を書き、彼へ返した。
天城ひなた。
水無月しずく。
黒瀬玲奈。
星野ゆら。
ユウ。
アイ。
学園が用意した四つの計画には、六人で過ごす未来はなかった。
ユウは紙を畳み、鞄へしまった。
その日の夕方、端末に通知が届いた。
《基礎観察:完了》
《重要判断:36/36》
ユウは回答一覧を開いた。
ベンチで一人になるか、人と交流するか。
先に手順を立てるか、その場で動くか。
見覚えのある質問が並んでいた。
けれど、答えを選んだ覚えのないものにも、回答済みの印が付いている。
中庭のベンチでは、何も押していない。
雨の日には、答えが届くより先に小屋へ戻った。
それなのに、どちらにも回答が記録されていた。
「アイ」
「はい」
ユウは画面を指した。
「これ、誰の答えなんだ」




