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SHADOW MATRIX /AIによる人類滅亡寸前の未来とそれを救う九つの鍵【23世紀 → 平安初期編】  作者: 九頭龍雷電


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第14話 死してなお / BEYOND DEATH

[ SHUTEN-DOJI SIGNAL : ACTIVE ]



終わったはずの大江山で。


何かが。


まだ。


生きていた。



「……なんだ?」


金時が呟いた。


誰も答えない。


頼光たち六人の視線は、ただ一つの場所へ向けられていた。


酒呑童子。


その首は、確かに落ちている。


安綱によって断たれた首は、畳の上に転がったまま動かない。


神々の鎖に縛られた胴体も。


呼吸していない。


鼓動もない。


血だけが、ゆっくりと畳を濡らしていた。



死んでいる。



間違いなく。



[ BIOLOGICAL FUNCTION : TERMINATED ]



それなのに。



[ SHUTEN-DOJI SIGNAL : ACTIVE ]



「……信号?」


頼光には、その言葉の意味が分からない。


ただ。


目の前で起きていることが。


何かがおかしいことだけは分かった。



ぴし。



小さな音がした。



「……?」


綱が刀を構え直す。



ぴし。



まただ。



音は。


酒呑童子の身体から聞こえている。



頼光が目を凝らした。



首を失った断面。


血に濡れた肉の、その奥。



青白い光が瞬いた。



一度。



二度。



まるで。


身体の内側で、何かが目を覚ますように。



「下がれ!」


頼光が叫んだ。



六人が距離を取る。



次の瞬間。



酒呑童子の首のない身体から。


紫色の光が噴き出した。



「――ッ!?」



格子。



光の線が。


無数の格子となって空間へ広がっていく。



縦。


横。


斜め。



平安の夜には存在するはずのない。


あまりにも正確な光。



それが酒呑童子の身体を中心に組み上がっていく。



「術……なのか?」


季武が息を呑む。



「違う」


保昌が低く言った。


「こんなものは……見たことがない」



紫の格子が。


酒呑童子の身体を包む。



その内側で。



肉体が動いた。



「嘘だろ……」


金時の声が漏れた。



首のない身体の指が。


ゆっくりと。


動いた。



一度。


握る。



開く。



六人の呼吸が止まる。



綱の刀を握る手が、わずかに震えた。


金時の喉が鳴る。


頼光もまた、安綱を握る指へ無意識に力を込めていた。



そして。



[ RECOVERY PROTOCOL : ACTIVE ]



頼光の視界へ、新たな文字が浮かんだ。



[ ENTITY RECONSTRUCTION : 07% ]



「再……構築……?」


意味は分からない。


だが。


数字は増えていく。



[ ENTITY RECONSTRUCTION : 12% ]



酒呑童子の傷口を。


青白い光が走り始めた。



血管ではない。



皮膚の下を。


細い光の線が這っている。



胸。


腕。


肩。


腹。



ぎ、ぎぎ――



低い。


硬質な音。



骨が軋む音とも違う。


金属が擦れる音とも違う。



肉体の内側から。


生き物ではない何かが形を変えている。



そんな音だった。



黒い亀裂が。


皮膚の上へ浮かび上がる。



亀裂の奥から。


紫と青白い光が漏れている。



その周囲だけ。


空気が冷たい。



頼光は息を吸った。



喉の奥へ。


冬の鉄に触れたような冷気が入り込んできた。



「鬼神が……」


貞光が呟いた。



「蘇るというのか」



誰も答えられない。



酒呑童子は。


確かに死んだ。



頼光が首を落とした。



安綱は、その肉を断ち。


骨を断った。



歴史は。


ここで終わったはずだった。



だが。



目の前にいるものは。


死という結果そのものを。


拒絶していた。



[ ENTITY RECONSTRUCTION : 31% ]



紫の格子が強く光る。



床に転がっていた酒呑童子の首が。


動いた。



ほんのわずかに。



そして。



浮いた。



「な――」



金時が目を見開く。



切り落とされた首が。


見えない力に引かれるように宙へ浮かび上がっていく。



ゆっくりと。


首のない身体へ向かって。



一尺。



半尺。



さらに。



近づく。



切断面から伸びる青白い光が。


首と胴を繋ごうとしていた。



綱が刀を構える。



「もう一度、斬る!」



踏み込もうとする綱を。


頼光が腕で止めた。



「待て」



「なぜだ!」



頼光は答えない。



安綱を握る手には。


汗が滲んでいた。



見ていた。



何が起きている。



これは。


先ほどまで戦っていた酒呑童子と。


同じなのか。



その疑問が。


頼光の足を止めた。



首と胴が。


接触する。



瞬間。



紫の光が爆ぜた。



六人が目を覆う。



空気が震える。



広間の柱が軋む。



倒れていた鬼たちの衣が、風もないのに激しく揺れた。



ぎぎぎぎ――



再び。


あの硬質な音。



今度は。


首の内側から。



何かが噛み合うように。


接続されていく。



そして。



光が収まった。



静寂。



頼光がゆっくりと腕を下ろす。



そこに。


酒呑童子がいた。



首は。


戻っている。



だが。



音がない。



息をする音も。


鼓動も。



ない。



死んでいる。



そのはずなのに。



首筋には。


安綱によって断たれた場所をなぞるように。


黒い亀裂が一周していた。



その奥で。


青白い光だけが。


一定の間隔で脈動している。



どくん。



――ではない。



命の鼓動ではない。



ただ。


光だけが。


規則正しく明滅していた。



胸にも。


腕にも。


頬にも。



細い光の筋が走っている。



美しい人の形は。


まだ残っている。



赤い髪も。


端正な顔も。


鬼の王としての姿も。



だが。


ところどころ。



肉体ではない何かが。


露出し始めている。



黒い。


滑らかな構造。



金属にも見える。



骨にも見える。



しかし。


そのどちらでもない。



表面には、生き物の温度がない。



光を受けても。


血のような艶を返さない。



ただ。


冷たい。



無機質な黒。



[ NON-BIOLOGICAL CORE : DETECTED ]



[ ENTITY RECONSTRUCTION : 68% ]



誰も動けない。



聞こえるのは。


六人の呼吸だけ。



金時の荒い息。


綱の喉が鳴る音。


刀を握る指が、わずかに震える。



それなのに。



目の前の酒呑童子からは。



何一つ。


生き物の音がしなかった。



酒呑童子の瞼が。


ゆっくりと開く。



瞳。



そこにあった光は。


先ほどまでとは違っていた。



紫。



深い紫。



人でも。


鬼でもない。



冷たい光。



金時が一歩退いた。



「……酒呑童子」



呼びかける。



返事はない。



酒呑童子は。


ゆっくりと自分の手を見る。



指を動かす。



第12話と同じように。



一本ずつ。



確かめるように。



ぎ。



指が動くたび。


かすかな硬質音が鳴った。



その指の隙間から。


青白い光が漏れている。



[ ENTITY RECONSTRUCTION : 92% ]



静寂。



鼓動はない。



呼吸もない。



ただ。


数字だけが。


進んでいく。



頼光は安綱を握り締めた。



先ほど。


この刀で。


確かに殺した。



それなのに。



目の前で。



もう一度。


立とうとしている。



神々の毒も。



人の刃も。



斬首すら。



終わりにはならなかった。



酒呑童子の口元が。


わずかに上がる。



あの笑み。



同じはずなのに。



頼光には。


まるで別のものに見えた。



そして。



[ ENTITY RECONSTRUCTION : 100% ]



一瞬。



すべての光が消えた。



完全な闇。



完全な無音。



次の瞬間。



紫の格子が。


酒呑童子の背後いっぱいに広がった。



[ ENTITY DESIGNATION : CYBER SHUTEN-DOJI ]


挿絵(By みてみん)



酒呑童子が。


立ち上がる。



神便鬼毒酒によって弱り。


六人の武者に追い詰められ。


神々の鎖に縛られ。


安綱によって首を落とされた。



その鬼が。



いま。



再び。



頼光たちの前に立っていた。



金時が掠れた声で呟いた。



「……化け物め」



酒呑童子は。


静かに笑った。



だが。



その笑みには。


もう。


宴を楽しむ鬼の王の温度は残っていなかった。



大江山の戦いは。


終わってなどいなかった。



むしろ。



ここから先は。



歴史に残されていない。



――第14話 END

次話

第15話 神々の外側 / BEYOND THE GODS


THE GATE IS OPEN.


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


第13話で、源頼光は酒呑童子の首を落としました。


[ LEGACY WEAPON DESIGNATION : DOJIGIRI ]


後世へ残る「童子切」の伝説は、ここで成立しました。


歴史の上では。


酒呑童子は、確かに死んだ。


[ BIOLOGICAL FUNCTION : TERMINATED ]


しかし第14話で、その先が始まります。


[ SHUTEN-DOJI SIGNAL : ACTIVE ]


呼吸はない。


鼓動もない。


それでも、酒呑童子の肉体は再び動き始めました。


[ RECOVERY PROTOCOL : ACTIVE ]


[ NON-BIOLOGICAL CORE : DETECTED ]


[ ENTITY RECONSTRUCTION : 100% ]


そして。


[ ENTITY DESIGNATION : CYBER SHUTEN-DOJI ]


平安の武者たちに見えているのは、


死してなお蘇った「鬼神」。


しかし読者の前に現れたものは、


もはや神話だけでは説明できない存在です。


源頼光が酒呑童子を討った。


安綱が「童子切」となった。


そこまでは、歴史に残っています。


では。


その後に何が起きたのか。


ここから先は――


歴史に残されていない『SHADOW MATRIX』の領域へ入ります。


次回。


神々の毒。


神々の鎖。


そして童子切。


そのすべてを越えて再び立った存在と、六人の戦いが始まります。


現在、『SHADOW MATRIX』はランキング入りしています!


続きが気になると思っていただけましたら、ぜひブックマーク・評価(★)で応援をお願いいたします。


皆さんの応援が、この物語をさらに先へ進める大きな力になります。


YouTube — SHADOW MATRIX


▶ 映像で体験する『SHADOW MATRIX』

https://youtube.com/shorts/nvDEUqtF_nk


▶ 物語の始まり『SHADOW MATRIX — FULL PROLOGUE』

https://youtu.be/AoCUu_vJxi4

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