↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHADOW MATRIX /AIによる人類滅亡寸前の未来とそれを救う九つの鍵【23世紀 → 平安初期編】  作者: 九頭龍雷電


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/16

第12話 酒呑童子の正体 / THE TRUE FORM OF SHUTEN-DOJI

「――宴は、これからだ」


酒呑童子は笑っていた。


神便鬼毒酒を、確かに飲んだ。


一滴ではない。


杯を重ね、そのすべてを腹の底へ流し込んだ。



広間では、すでに異変が始まっている。


先ほどまで酒を喰らい、笑い、騒いでいた鬼たちが、一体、また一体と崩れ落ちていった。


巨体が畳を叩く。


杯が転がる。


やがて、うめき声すら消えた。



神々より授けられた毒酒。


――神便鬼毒酒。


鬼にとっては猛毒。


人にとっては力となる、神域の酒。


その効力に疑いはない。


倒れ伏した鬼たちが、何よりの証だった。



そして。


酒呑童子の身体にも、確実に届いている。



[ ONI RESPONSE : NEURAL COLLAPSE ]


[ MOTOR FUNCTION : RAPID DECLINE ]


[ TOXIN PENETRATION : CONFIRMED ]



頼光は、安綱の柄に手を置いた。


酒呑童子の呼吸は深い。


立ち上がった巨体も、わずかに揺れている。


あれほど鋭かった眼光にも、確かな鈍りがあった。



普通の鬼ならば。


もう立つことさえできない。


――そのはずだった。



酒呑童子は自らの掌を見つめた。


ゆっくりと手を開き、指を一本ずつ動かす。


そして。


笑った。



「……なるほど」



静かな声だった。



「これが、神々の酒か」



頼光の背筋を、冷たいものが走る。



童子は倒れない。


それどころか。


一歩。


こちらへ踏み出した。



ずん、と床が沈む。



その瞬間。



[ COMBAT CAPABILITY : 73.4% ]



頼光の目が見開かれた。



神経は侵されている。


身体機能も落ちている。


それでも――



七割を超えている。



次の瞬間、金時が動いた。



「おおおおおッ!」



床を蹴る。


一気に間合いを潰し、大江山へ入ってから温存してきた力を真正面から叩き込む。


坂田金時の一撃。



酒呑童子は避けなかった。


片腕を上げる。



激突。



轟音。



空気が破裂した。



「――ッ!」



金時の身体が宙を舞う。


広間を横切り、そのまま柱へ叩きつけられた。


木片が飛び散る。



「金時!」



綱が叫ぶ。


だが、すでに身体は動いていた。



一閃。



狙いは首筋。


死角から放たれた刃が、一直線に頸へ走る。



だが。



止まった。



刃は届いていない。



酒呑童子の手が、綱の腕を掴んでいた。



「な――」



指が締まる。


骨が軋んだ。



「ぐっ……!」



綱の顔から血の気が引く。



頼光が走った。


安綱を抜く。


刃が閃き、綱を掴む腕へ迫る。



硬い。



肉を斬ったとは思えない抵抗が、柄を通じて腕へ返ってきた。



それでも刃は入る。



酒呑童子が綱を放した。



一歩、退く。



その胸元を、安綱の切っ先が浅く裂いた。



鮮血が飛ぶ。



赤い滴が畳へ落ちた。



酒呑童子は自らの胸を見下ろす。


傷口へ指を這わせ、血のついた指先を眺めた。



そしてまた笑う。



「人の刃で、我に血を流させたか」



頼光は答えない。


安綱を構えたまま、相手を見る。



遅くなっている。


間違いない。



先ほどまでなら、今の一撃すら届かなかった。



神便鬼毒酒は、確実にこの鬼を弱らせている。



だからこそ。


頼光には理解できてしまった。



もし、この酒がなければ。


もし、神々が力を貸していなければ。



六人でこの広間へ踏み込んだ、その瞬間に終わっていた。



最初の一太刀すら、許されなかったかもしれない。



視界の隅には、まだ数値が残っている。



[ COMBAT CAPABILITY : 73.4% ]



「……これで、七割か」



頼光が呟いた。



瓦礫が動く。


金時が立ち上がった。


口元の血を腕で拭う。



「……効いてるんだよな」



誰も答えない。


答える必要もなかった。



綱も、痺れの残る腕で刀を握り直す。



季武。


貞光。


保昌。



誰一人、退かなかった。



六人は、同じ現実を理解していた。



目の前にいるものは、ただ強い鬼ではない。



人間が、本来なら戦ってよい存在ではない。



神々の毒がなければ。


同じ場所に立つことさえ許されなかった怪物。



その存在を。


神便鬼毒酒によって。


ようやく、人の刃が届く場所まで引きずり下ろした。



それだけだった。



勝ったわけではない。


追い詰めてもいない。



ようやく。


戦える。



ただ、それだけ。



酒呑童子がゆっくりと両腕を広げた。



足元には、倒れ伏した鬼たち。


転がる杯。


こぼれた酒。



向かいには、六人の人間。



「よい」



低い声が、大江山の奥深くまで響いた。



「酒もよい」



一歩。



「人もよい」



また一歩。



頼光たちは動かない。



酒呑童子が牙を見せる。



「ならば――宴の続きをしよう」



空気が震えた。



六人が同時に構える。



頼光は安綱を握り締める。


金時が腰を落とす。


綱が刃を上げる。



神便鬼毒酒は効いた。


鬼の王は、確実に弱っている。



それでもなお。



六人全員で挑んで。


届くかどうかすら分からない。



戦いはようやく――



始まったばかりだった。


――第12話 END

後書き


次話

第13話 童子切 / DOJIGIRI


THE GATE IS OPEN.


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


第12話では、ついに神便鬼毒酒がその力を現しました。


宴を囲んでいた鬼たちは次々と倒れ、酒呑童子の身体にも確実な異変が現れます。


[ ONI RESPONSE : NEURAL COLLAPSE ]


[ MOTOR FUNCTION : RAPID DECLINE ]


[ TOXIN PENETRATION : CONFIRMED ]


しかし――


酒呑童子は倒れない。


[ COMBAT CAPABILITY : 73.4% ]


神々の毒によって大きく力を削がれながら、それでもなお七割以上。


金時を吹き飛ばし、綱の刃を止め、頼光の安綱でようやく傷を負わせることができる。


頼光たちは、ここで初めて理解します。


神便鬼毒酒は、酒呑童子を倒したのではない。


本来なら人間が戦うことすらできない鬼の王を、

ようやく人の刃が届く場所まで引きずり下ろしただけなのだと。


そして酒呑童子は、なお笑う。


「ならば――宴の続きをしよう」


次回。


頼光たち六人と酒呑童子の戦いは、さらに激しさを増していきます。


そして大江山で、一振りの刀がその名を刻む時が近づいています。


現在、『SHADOW MATRIX』はランキング入りしています!


続きが気になると思っていただけましたら、ぜひブックマーク・評価(★)で応援をお願いいたします。


皆さんの応援が、この物語をさらに先へ進める大きな力になります。


YouTube — SHADOW MATRIX


▶ 映像で体験する『SHADOW MATRIX』

https://youtube.com/shorts/nvDEUqtF_nk


▶ 物語の始まり『SHADOW MATRIX — FULL PROLOGUE』

https://youtu.be/AoCUu_vJxi4

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。