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7 謎の剣士、悪役令嬢から逃げられない

黒衣の男は高みから彼女を見下ろしていた。

フードの影の中で、薄い唇をわずかに結んでいる。何も言わず、しかし立ち去ることもなかった。


イザベラは顔を上げ、手からはまだ血がにじんでいた。

目元はたちまち赤く染まり、理不尽なクライアント相手に鍛え上げられた演技力が、ついに役立つ時が来た。

「お兄ちゃん」

彼女は声を震わせた。

「やっとあなたを見つけたわ……」


黒衣の男はしばらく沈黙した後、口を開いた。その声は低くて冷たかった。

「手を離せ」


イザベラは下を向いてみると、いつの間にか相手のローブの裾をがっちりと握りしめていた。

「……離さないわ」


「お兄ちゃん!」

今がチャンスだ。今ここで離れたら終わる。

イザベラはそう判断すると、迷わず手足を駆使して男の太ももに抱きつき、彼にきつく絡みつき、涙を浮かべた瞳を少し怯えた様子で彼を見つめた。

しかし、その男の顔を見た瞬間、彼女の口元が思わずピクッと痙攣した……

これ、若すぎるんじゃない?

眉目秀麗で信じられないほど整った顔立ち、肌は長年外で過ごしている人とは思えないほど白い。

前世なら、この顔でそのまま芸能デビューできたはずだ。でも、ここでは通用するのだろうか?

この太もも、もしかして抱き間違えたのかしら?


とはいえ、今となっては他に手立てがない。

イザベラは彼の足元にしがみつき、決して手を離そうとはせず、泣き叫びながら言った。

「お兄ちゃん、うう……やっと見つけたよ、お兄ちゃん……もう私を置き去りにしないで……」


こいつ……まるで木にしがみつくコアラのように、彼の足から離れようとしない。

黒衣の男は自分にまとわりつく小柄な姿を眉をひそめて見つめていた。人との接触に慣れていないため、その体は少しこわばっていた。

彼は足を振りほどき、低い声で言い放った。

「人違いだ。放せ!」


言い終わると、イザベラの腕はさらに強く彼の足に絡みついた。


黒衣の男は忍耐の限界に達し、表情をさらに冷たくして、鞘に収めた剣で、そっと押し退けようとした。

半メートルほど突き飛ばした瞬間、イザベラが悲鳴を上げてさらに強く抱きつき、その頭が彼の股間に直撃した。

「うっ!」


枝の上で、黒猫は黙って前足を上げ、自分の目を覆った。

猫の尻尾の先が、微かに二回震えた。

何も見えていなかった、何も見えていなかった。


黒衣の男の体が一瞬こわばり、顔全体が暗くなった。

「手を放せ!」


「離さないわ。私を連れて行ってくれるって約束するまではね」

イザベラはしつこく黒衣の男にまとわりつき、心の中で密かに安堵した。この人は少し冷たいけれど、悪い人ではない。

彼女は、自分の小さな頭が相手の敏感な部分に押し当てられていることに、全く気づいていなかった。


殺意を必死に抑え込んでいる黒衣の男は、深く息を吸い込んだ。腰に差した剣が微かに唸りを上げ、抜刀まであと半寸というところまで来ていた。

しかし結局、彼は歯を食いしばってこう言い放った。

「……手を離せ。ついてくるのは許してやる」


イザベラの口元が、一瞬だけ跳ね上がり、すぐに元に戻った。

成功だ。


黒猫は枝の上にしゃがみ込み、琥珀色の瞳にその光景を映しながら、結界は音もなく解けた。猫はしっぽを軽く振り、黒衣の男に視線を向け、何かを思案しているようだった。

「……彼だったのか」

猫は首を傾げた。

「僕の予言、外れてしまったのかな?」


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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