6 追われる悪役令嬢、秘境で大ピンチ!
数時間後、イザベラはようやく幼獣を激怒した守護妖獣に返すと、その相手から逃げ切った。
正確に言えば、秘境の半分以上を回り込み、幼獣を守護妖獣の巣へ送り届けると、振り返らずに走り出し、さらに丸4時間も走り続けてようやく振り切ることができた。
とはいえ、代償は大きかった。
空間袋には穴が開いて使えなくなり、髪は片側が乱れ、スカートは足首から太ももまで引き裂かれていた。
おじいさんが用意してくれた様々な丹薬に感謝だ。
そうでなければ、彼女はまた死んでいただろう。
木の上にしゃがみ込んであくびをしている小柄な人影があった。
その隣では、一匹の黒猫の首輪についた鈴が淡い光を放ち、結界を張って彼女を守っている。
イザベラは半開きにした目で、近くを巡回する数人の仮面の男たちを眺めて、別の空間袋から取り出したリンゴをひと口かじり、頬を膨らませる。
泥まみれの顔には傷と汚れが残り、髪はボロボロの布で丸ごと包まれていた。
そして、何よりも重大な問題がある。
ズボン!ズボン!なんで戦うのにスカートなの?!
イザベラは空間袋をくまなく探してようやくズボンを一枚見つけた。元の持ち主はスカートが好きすぎたようだ……
一通りの着替えを経て、小さな物乞いが誕生!
これがフェアフィールド家の、金銀を身にまとったお嬢様だとは、誰にも想像できないだろう。
「運が悪すぎ! どうすればいいの?」
リンゴを噛みながら、イザベラはため息をついた。
あの仮面男たちは、セドリックが送り込んだに違いない。何しろ、もし彼女が生き返れば、彼の浮気は隠し通せなくなるからだ。
王太子の地位が安定しているかどうかはさておき、間違いなく足を折られることになるだろう。彼女はおじいさんのことをよく知っているわ。
イザベラはリンゴを最後の一口までかじり、種をさっと捨て、少し苛立ちを覚えた。
もともと小説を読んで、転生なんて面白そうだなと思っていた。
貴族令嬢に転生して優雅に暮らすとかそんな人生を想像していたのに。まさかこの世界の人々は仙道を修めているなんて。
修仙界! 仙人に妖獣。 剣は飛ぶし、人も空を飛ぶ。
それじゃ、現代人の調査員だった自分の経験なんて何の役に立つというのか。
妖獣の浮気調査でもしろって?
「昨日の夜、ご主人は別の狐獣と会っていました」って報告したら、尻尾で叩き潰される未来しか見えない。
仙門で依頼を受ける?
「あなたの奥さんの浮気証拠はこちらです」
……いや、その前に術で消し炭にされるだろう。
彼女は枝の上に座ってため息をつき、元気がなく、足を宙にぶらぶらと揺らしていた。
その時、視界の隅に一つの人影が映った。
木陰の奥から、黒いローブをまとった男がゆっくりと歩いてきた。
足取りは軽く、しかし確かで、全身から「近寄るな」とでも言わんばかりの冷たい気配を放っていた。フードが顔の大半を覆い、冷たく硬い顎のラインだけが覗いている。背筋はまっすぐで、腰には全身漆黒の剣が一本下げられていた。
仮面の男は彼を見ると、無意識に後ずさった。誰も彼を止める勇気はなかった。
イザベラの瞳がくるりと動いた。
彼女は迷うことなく木から飛び降り、黒いローブをまとった男の方へと飛びつき、口では泣き叫んでいた。
「うっ……お兄ちゃん! お兄ちゃん、やっと見つけたよ!わあっ――」
黒いローブの男は足を止め、体を横にずらして避けた。
イザベラは空を切って、地面に叩きつけられた。両手が小石を擦り、ヒリヒリと痛んだ。
「うっ……」
彼女はうめき声を上げ、地面にうつ伏せになったまま動かなかった。痛くてたまらない!
頭上に影が落ちた。




