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5 守護妖獣の幼獣を誘拐した犯人は私です

王太子とイザベラは星詠仙門ほしよみせんもんの弟子であり、今回受けたのはD級仙士向けの採集任務だった。

一度引き受けた仙門の任務は、途中放棄できない。失敗すれば成績はゼロ。三回連続でゼロになれば、仙門から追放される。

イザベラはこれまでにも二度任務に失敗しており、今回が最後のチャンスだった。


「……」

イザベラは仰向けになって空を見上げた。


おじいさんが後ろ盾になってくれるとはいえ、いい歳した社会人だった私が、試験で落第なんて……普通に恥ずかしい、プライドが許さない。

それに修仙界は強者が尊ばれる世界だ。

今は悪役令嬢である私が、任務を完遂せずに外に出るなんて、裸で走り回るのと何ら変わりがないではないか?

どうすればいい?

悩ましい。それとも、恥を捨ててみるか? 駄々をこねて転げ回るのも、ありかもしれない。……いや、さすがにそれは三歳児だ。

でもね……


しかし、次の瞬間「恥を捨てる」という案は打ち砕かれた。


「ご主人様」

黒猫がイザベラの膝の上にしゃがみ込み、しっぽでそっと彼女の腕を叩いた。

「おじい様が、ご主人様を王太子と婚約させるために、どれだけ敵を作ったか覚えていますか? もしあなたが仙門の弟子という身分を失えば、あの人たちは……もう何の遠慮もなくなってしまうでしょう」


イザベラは黙り込んだ。

この世界において、仙門は仙士にとって第二の家であり、どの仙門も自門の弟子を守ってくれる。

おじいさんは万が一自分に何かあった時に、イザベラを守ってくれる人がいないことを恐れてた。

自分がいなくなった後でも、イザベラを守ってくれる居場所を残したかった。だから、莫大な財宝を費やして彼女を星詠仙門に入門させたのだ。


「……わかったわ」

彼女は顔をこすりながら言った。

「もう諦めない」

イザベラは体を起こし、黒猫に次にどこへ行けばいいかと尋ねようとしたその時、突然――

パタッ

空間袋くうかんぶくろの中で何かが動いた。

イザベラが視線を落とすと、いつの間にか袋の口が緩んでおり、手のひらほどのふわふわした白い毛玉が中からころんと転がり落ちた。

四つん這いのままバタバタと必死にもがいている。


イザベラはその白い毛玉と三秒ほど見つめ合った。

「……何これ?」


毛玉も首を傾げた。

「ぴ?」


「…………」

「…………」


イザベラはゆっくりと黒猫を見た。

「……ねえ、黒猫ちゃん」


「……はい」


もしかしたら……

彼女の声はかすかだった。

「私が白霧仙芝を採っていた時……守護妖獣の幼獣ようじゅうも一緒にうっかり攫ってきたんじゃないかしら?」


黒猫の尻尾がすでにリスのようにふくらんだ。

「……ご主人様、今さら気づいたんですか?!」


幼獣はひと転がりして、イザベラに向かって「ピー」と鳴いた。


遠くから木が倒れるような轟音が響き、何か巨大なものがこちらへと押し寄せてきており、その一足ごとに地面が震えていた。


黒猫は耳を首に押し付け、琥珀色の瞳には密林の奥で揺れる黒い影が映っていた。

「ご主人様、守護妖獣が目を覚ましました」


「お前の予言はどうなったの?!」


「言ったでしょう…こんなこと予言できないって!」


「この役立たずめ!」


「あなたこそ大役立たずです! 仙士のくせに守護妖獣の幼獣を連れ去ったことすら気づかないなんて! 昨夜ずっと森中に咆哮が響いていた理由も、それで納得です!」


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

イザベラはそう言いながら、幼獣をひょいっと抱え上げ空間袋に放り込んだ。

そのまま地面を転がりながら這うようにして立ち上がった。

「無駄口はやめて…逃げろーーー」


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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明日も更新予定ですので、また読みに来ていただけると嬉しいです!


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