67 人間か、それとも獣か?
黒縞妖猫は、周囲の驚きの目を意に介さなかった。
「ニャー――」
黒縞妖猫がアスランとマリーに向かって一声鳴き、 「おちびちゃん」をアスランの腕の中と預けた。
アスランがその光の玉を受け取った瞬間、「おちびちゃん」は目を開けた。
アスランは慌てて「おちびちゃん」を胸に抱き寄せ、頭を下げると、鼻先があの小さな赤ん坊のような姿にほとんど触れそうになり、唇を震わせながら、声を出すことができなかった。
マリーは彼の背後から駆け寄り、片手で口を押さえ、もう片方の手を伸ばして、指先を「おちびちゃん」のそばで止めた。触れるのを恐れる一方で、手を引くこともできないようだった。
黒猫が通訳した。
「あなたたちの『おちびちゃん』が亡くなった時、その体には魔気がまとわりついていたが、黒縞妖猫がそれを取り除いてくれた。 さらに、仙の力で『おちびちゃん』の魂を育んでくれたおかげで、『おちびちゃん』は来世で良い生まれ変わりを果たせるだろう。 あと一時間で、『おちびちゃん』は輪廻に入る。 その間に、しっかりと別れを告げるんだな」
黒猫は黒縞妖猫の頭の上にしゃがみ込み、尾を垂らして、まるでリストを読み上げるかのように淡々とした口調で言った。
「ニャー――」
黒縞妖猫は再び小さく鳴き、アスランの腕に抱かれた「おちびちゃん」から視線を外し、アスランとマリーの顔へと移した。
「黒縞妖猫は『ありがとう』と言っているよ」
黒猫は口を尖らせ、少し不満げに翻訳した。
感謝なんて……お前をちゃんと守れなかったくせに。
黒猫は顔を横に向け、尻尾で黒縞妖猫の鼻先を不機嫌そうに軽く叩いた。
アスランとマリーは喜びのあまり言葉も出ないほどだったが、同時に黒縞妖猫のことを思うと胸が痛んだ。
アスランは「おちびちゃん」をマリーの腕の中に預けた。
マリーは「おちびちゃん」を抱きしめて地面にひざまずき、涙がぽろぽろと土に落ちていたが、口元はほころんでおり、口の中で「おちびちゃん、おちびちゃん」と繰り返し呟いていた。
アスランは彼女の背後に立ち、片手で彼女の肩を押さえ、もう片方の手を上げて自分の目を覆った。
肩をピクピクと震わせながら、口からは絶え間なく呟きが漏れていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
黒縞妖猫は、礼をするアスラン夫婦に向かって首を横に振った。
イザベラはこの光景を見て、深く感動すると同時に、極めて滑稽にも感じた。
この世には、二本足で立ち、歩いているくせに、獣以下のような行いをする者がどれほどいることか。
この世には、四つん這いで這いずり回っているくせに、人間よりも人間らしい獣がどれほどいることか。
一体、誰が人間で、誰が獣なのか?
黒縞妖猫は、再び腹部から白い魂の塊を取り出した。
まだ目を開けていない白い毛の「幼獣」だ。
「ニャー……」
口から微かな鳴き声が漏れた。
その魂は白く、ほとんど透明で、丸まっており、口を開け閉めしながら、細かくて途切れ途切れの鳴き声を上げていた。
黒縞妖猫は片手で「幼獣」の魂をしっかりと支え、村民の目の前に掲げた。すると、ゆっくりと、村民の頭上から黒い霧が立ち上り始めた。
その黒い霧は空中で一つに集まり、絶え間なく「幼獣」の小さな体の周囲に絡みついていく。
誰かが悲鳴を上げ始めた。
ある村民は両手で自分の顔を掴み、爪が皮膚に血の筋を刻みながら、喉の奥から獣のような咆哮を上げた。
別の村民は地面にひざまずき、額を地面に打ち付けて「ドン、ドン」と音を立て、口からはただ一言だけが繰り返し漏れていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい――」
ある若い村民が逃げ出そうと振り返ったが、足を上げた途端に宙で固まってしまい、何かに縛られたかのように、その場から動けなくなって、眼球だけが眼窩の中で狂ったように動き回っていた。
「どうしてこんなことに?」
アスランは村民たちの苦痛の表情を見て呆然とした。自分が怨念を吸い取られた時は、何の感覚もなかった。
むしろ、胸の奥にあった重荷が取り除かれたように、心が軽くなったのだ。
「彼らにはもともと罪がある。 魔胎の怨念が魂に絡みついており、切り離すことが難しい。 お前とは違うのだ」
ヴァルターは無表情に説明した。
イザベラはその光景を黙って見つめていた。
本来なら痛快な気分になると思っていたが、これまで彼らがしてきたことを思えば、苦しんで当然だと思っていた。
だが、額を打ち付けて血を流す人、爪を自分の肉に食い込ませる人、骨を抜き取られたかのように地面に崩れ落ちて震える人を見て、自分が想像していたほど嬉しくはなかった。
むしろ、胸の奥に湧いてきたのは、ただ、嫌悪感だけだった。




